【セシルの仕事】6
「我が名はシルヴェスタ!魔王にして、セシルの使い魔だ!貴様が魔術棟の管理人か?」
「ああ、セシル君のとこの使い魔くんね。よろしくね、シルバ君」
シルバは半壊した部屋に降り立つ。そこには驚く様子もない少年が立っていた。
白い。病的な白さを持つ少年だった。立派な服装をしてはいるものの、着せられている感が強い。彼が、この魔術棟を管理するギルバートだと、だれが分かるだろうか。しかし、シルバにはわかる。彼の魔力は尋常ではない。二十年前、セシルが才能を開花させた際には生きていたというから、それなりの年齢のはず。しかし、目の前には少年。
(人間界について、知らないことが多いようだな)
そう考えていると、ギルバートはシルバに向き直った。
「で、何か用事かな?」
突然の訪問にも、驚きもせず対応する不気味さはあったが、シルバはハッキリとした声で話す。
「ずばり、セシルの労働環境を改善してもらおうか!」
「労働環境?」
ギルバートは小首をかしげた。
「そうだ。まずは未払いの給料!二十年分たまっているであろう。それの支払いを要求する。それから、魔術棟以外での生活を許可せよ。家を持たぬとなれば自主性が失われてダメ人間になってしまう。実際、洗濯すら面倒がる人間になっているのだ。それから、忘れてもらってはこまるが、残業代、深夜残業代と休日出勤手当の支給。これも要求しよう。本来であれば有給も要求すべきところであるが、セシルはワーカーホリックのようだからな!容赦してやろう。どうだ、人間界の魔王よ。難しい話ではなかろう?」
ギルバートは固まった。それもそうだ。いきなり壁を壊してやってきた魔王が、人間の労働環境を改善しようとしているのだ。ギルバートは固まったあと、今度は大爆笑し始めた。
「……アハハハハ!そうだね、大切だよね、労働環境」
「うむ。労働環境が整わなければブラック企業と言われ、新たな人材も入ってこぬ」
偉そうに言うシルバに、ギルバートは涙をぬぐう。もちろん、笑って出てきた涙だ。
「わかった。君が面白いから、要求を呑もう。給与は銀行に振り込むし、家も勝手に探していいよ」
「うむ、なるべく早急にだ」
「分かってるよ。財務部に掛け合うさ。ボクが号令すれば、優先度は一番上だ。安心してよ……それよりさ」
「なんだ?」
「君、面白いから、たまにでも遊びに来てよ。ボク、仕事するの早くて暇してるんだ。今のセシル君と一緒で、ここに住んでるからさ。あ、セシル君も連れてきてよ。ボク、彼のこと気に入ってるんだ」
「良いであろう」
そう言うと、シルバは翼を開き、宙に浮いた。
「意外に話の分かるやつでよかった。また会おう、魔術棟の管理人!」
「ギルバート!そう呼んでよね、次会うときは!」




