【セシルの仕事】4
「彼の処遇は、政府が決定したもので間違いないですね」
シルバは自分の考えをクライヴにぶつけていた。クライヴは少しだけ真面目な顔をしながら、答える。
「……では、クライヴはそのことを知っていて、セシルを閉じ込めているのか?」
「正確には違いますが、現状を述べるならそうです。ただ、セシル君にといって、これは悪い話ではないんです」
「何が悪い話ではないのだ?自由を失って、消費されるだけではないか」
難しい顔をするクライヴは顎に手を当てる。
「彼の能力が発動したのは四歳の時、今から二十年前ですね。その時、政府は彼を研究対象として扱うことを考えました。彼の体や魔力回路を検査して、それを応用できれば、魔術を作成できる人間が増えることになりますからね。
ですが、それに待ったをかけたのが、魔術棟のトップ、ギルバート様です。魔術を作成できる稀有な存在。彼を消耗させ、彼の能力を失うより、彼の能力を限界まで使って魔術を作り続けさせる。これが、魔術棟の答えなんです」
「……どこが、悪い話ではないのだ?」
「現在でも、彼を研究対象にしようとしている部署があります。私は、彼らにセシル君を引き渡すのを拒否しています。もし、彼が研究対象になれば、体も心も使い物にならなくなるでしょう。研究、というのはそういうことです」
「現状の方が、幸せ……か」
「そうなりますね」
クライヴは小さな魔石をシルバに渡した。
「これが、魔術棟でのパスです。場所によってはロックされていますが、生活に必要な場所へはアクセスできます。まずは、人間界と魔術棟について知ってください」
声が小さくなる。
「セシル君を、お願いします」
シルバはマントを翻しながら歩きだす。
「まかせろ、クライヴ」
クライヴは笑っていた。