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【心の変化】7

 シルバがギルバートへ実験の件を聞きに出ていくと、セシルは一人でため息を吐いた。そして唇を指でなぞる。

 魔力欠乏症になり、シルバが魔力を補充してくれてから幾日過ぎた。それ以降、魔力欠乏症になるたび、キスを繰り返した。思い出しながら、セシルは赤面する。


(……落ち着け、落ち着け。あれは治療、治療……)


 しかし、そう思えば思うほど、それを意識してしまう。そしてセシルは一つだけ気づいていた。


「……嫌、じゃないんだよな」


 そう。普通、治療のためといっても、嫌な奴とキスなど出来やしない。それが、シルバならできる。それどころか、最近は魔力欠乏症になってもキスで治るなら、と魔術を多めに扱うことも増えた。


「も、もしかして……」


 思い出す。自分のためにギルバートへ無茶を言い、魔術棟から連れ出してくれたこと。家で温かい料理をふるまってくれること。自分と一緒にいることを気持ちいいと言ってくれたこと。主人はセシルでいい、と言ってくれたこと。怖いことがあると、背中をさすってくれること。そして、今でも手をつないでくれること。新しい世界には、いつも隣にシルバがいた。怖くても、シルバがいるから立っていられる。いつの間にか、セシルはシルバがいないと不安になるまでになった。これに名前をつけるならば……。


「……はは、これじゃ、恋する乙女だよ」


 シルバが戻るまでしばらくある。セシルは少しの間だけ、と思い、地面に座り赤くなった顔を手で覆いつくした。

 と、ドアがノックされた。そして静かな声が響く。女性の声だ。セシルが「はい」と返事をすると、小柄な女性が入ってきた。


「……わかりました」


 セシルは女性にそう言うと、机の上に一つの札を置き女性へと着いていった。

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