【プロローグ】2
セシルは人間界に住む人間である。ただ、他の人間にはない能力を持っている。それは『魔術を作成する』という能力だ。
作成する魔術は様々なリクエストがくる。彼は研究室に籠り、次から次へと魔術を開発していた。時折、失敗することもあるが、現状、魔術を作成できるのは彼だけなので、お咎めなしになっている。
さて、このセシルが今回作ったのは『使い魔の召喚』というものだった。自分の魔術を手助けする使い魔を召還することができれば、魔族との抗争を有利に進めることができる。そう考えた政府の方針を考慮してのことだった。
では、物語を進めよう。セシルは確かに『使い魔の召喚』を行う魔法陣を作った。そして、その魔法陣に魔力を注ぎ、魔術を実行した。セシルは、なんとなく使い魔とは、妖精とか、精霊とか、そういったものを想像していた。いや、彼の想像力が乏しかったのかもしれない。そう、前述した通り、そこには魔人が立っていたのだ。
「……え?」
口を開き、茫然とするセシル。目の前に立っている魔人は周囲を確認すると、セシルを見下ろした。
周囲が一気にざわつく。果たしてこれは成功なのか、失敗なのか。なんとも判断できず、結局、数分後には解散となった。解散となった為、部屋にはセシルと魔人が残された。
「……えっと、はじめまして?」
セシルが放てる、精一杯の言葉だった。