【共同生活】4
シルバも風呂に入り、二人で歯を磨き、ベッドへ向かう。時刻はもうゼロ時になっていた。
「ベッドはどちらがいい?我のおすすめは窓とは反対側だ」
「なんで?」
「窓から敵が侵入してきた場合、我がお前を守りやすい」
「物騒だな……そんなに魔術棟の外って危険なの?」
そう言いながら、セシルは窓側のベッドに座る。そして自分の横をポンポンと叩いた。
「……なんだ?」
シルバが困った表情をした。
「一緒に寝よう!」
「……なぜ?狭いであろう」
「いやあ、夢だったんだ。誰かと寝るの」
セシルは「ほれほれ」と言いながら、シルバが来るのを待っている。シルバは呆れながら窓側のベッドに座った。
「誰かと寝るのが夢とは……親と寝たことぐらいあるだろう?」
「僕は四歳のときに、魔術棟に入ったからね。親と寝た記憶ないんだ」
電気を消し、布団をかぶりながら話す。
「……そうか」
シルバは天井を見上げた。誰かと寝た記憶。シルバには少しではあるがあった。父と母との間で寝た記憶。しかし、セシルは四歳のときに両親から離れたという。四歳。物心がつくかどうかの年齢だ。あったとしても覚えてないだろう。
「……ベッド、大きいのにした方がよいな」
「そうだね。シルバの翼と尻尾が収まるようなやつ」
ぼんやりと天井を眺めながら、セシルは独り言のように言った。
「……僕、さびしかったのかな?」
「そうなのか?」
「うん。一人で魔術棟に籠ってさ。まあ、クライヴさんもいたし、決して独りぼっちというわけではなかったけど……それでも、やっぱり寂しかったんだと思う。シルバがさ、こうやって隣にいてくれると、やっぱり嬉しいや」
「そうか」
そう言いながら、シルバも考える。魔王城に一人で住んでいた。しかし、地方には信頼のおける部下がおり、時折、顔をみせてくれる。とはいえ、今セシルの隣にいて安心しているのも確かだ。
(そうか……我も寂しかったのか)
セシルは静かに口を開いた。
「きっとさ、これも何かの縁だよね」
「そうかもしれぬな」
「じゃあ、これからは二人で色んなことしようね……と言っても魔術棟から出ることなんて……できないかも……しれないけど……」
その言葉を最後に、セシルは寝息を立て始めた。シルバはセシルの頭を撫でた。
「これからは我がいる。安心しろ」
この言葉が、セシルに届いたのかわからない。それでも、シルバは異様な状況で主従になった主人に微笑んだ。




