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老害追放――新しい国に老害は不要だと放逐された老人たちの建国記。ときどき、若返った国の崩壊の記録。荒れ地の果てに新国家を作ります――  作者: KOH


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52.運河のある村

 村の再設計が決定し、折角だから村人達の意見も取り入れようという事になった。


 それを聞いて活発な活動を始めたのはクリスタで、エーリカ、エルマーと共に、あちこちの測量を始めた。

 それだけであれば、子供の遊びの延長で終るのだが。

 クリスタ達が測量をした結果をリコとヨーゼフが確認し、測量を継続するようにと言ったため、クリスタのグループに人手が追加される運びとなった。


 今までもヨーゼフやマーヤが作った簡易的な地図はあった。


 しかし、クリスタの作った地図は、エーリカの協力のもと、土地の高さを表現したものになっていたのだ。

 それは周囲の土地との相対的な関係を示した物で、等高線ほどは洗練されていないが、運河を作る際に必要な情報は読み取れる代物だった。


 その地図を皆に見えるように地面に書写し、、アントンは皆に注目するよう、手を叩いた。


「さて。今日の集まりの目的が分らない者はいるかね?」


 注目を集め、静かにそう切り出し、ほんの少し待つ。

 誰も声を出さないことを確認したアントンは、満足そうに頷くと、ほぼ畑で埋まった草を手で示した。


「では、まずは運河と用水路をどう通すのかについて積極的に意見を出して貰いたい……と言っても、まあ無理じゃよな?」


 小さく頷く村人達に、今はいいが、いずれは声を挙げられるようになって欲しいと告げたアントンは、案があるからそれに対する意見が欲しいと、地図の周囲にポツポツと丸を幾つか書き入れる。


「まず、最終形じゃが、遠い将来の計画として、南北の林を切り拓いて村を作る予定じゃ。出来れば川と反対側の、東の岩山方面にも土と水を運んで住める土地を増やしたい。が、それは随分と先の話じゃし、具体的な数も場所も未定じゃが、まあ、この村の周囲に書いた丸が他の村だと思ってくれ」


 アントンはそう言いながら、丸と丸、それと村を線でつなぐ。


「この線は運河と道じゃ。運河と道は可能な限り並べて通す。運河の用途はふたつ。農業用水としての利用と水運じゃ」

「あの」

「ディーターか、どうぞ?」


 と、ディーターが手をあげて発言の許可を求めた。


「村の間に水路があるってことでしょうか?」

「うむ。そうじゃな」

「この地図だと、こことここ」


 と川沿いに並ぶふたつの丸を指しながらディーターは続けた。


「このふたつは川沿いに並んでます。この間の運河は必要ないのでは?」

「良い指摘じゃ。川だから大量に流れておるが、荒れ地の中の水は貴重じゃ。そして川沿いの中でも開拓された土地ともなれば、力尽くで奪おうとする者がくるやもしれん」


 仮想敵の名前を出さず、アントンはそう告げて、ディーター以外の者たちの顔に納得の色が浮かぶまで少しだけ待つ。

 そして


「この土地には精霊の加護がある。じゃから実際にはこんな事は起きんじゃろうが」


 と、皆の不安を和らげるように前置きして続ける。


「将来、川向こうから大軍が攻めてきた時を考えてみると良い。川に船を浮かべて移動すれば、それは的じゃろ? 下手すれば奪われて橋にされるかも知れん」


 村人達が理解した、と判断したアントンは続けた。


「川に頼りすぎれば、それが生命線になりかねんのじゃ。運河を作るのは、生命線を増やすためなんじゃよ」

「なるほど……まあ、実際にそこまで人が増えるのは随分と先でしょうけれど理解出来ました」

「では続けるぞ。皆も良いか?」


 村人達が頷くのを確認し、アントンは今いる草原の地図に細く割った薪を乗せる。


 南北で言うと草原の中央に、東西に延びる一本。

 そして、丘から見て岩山に近い()側に南北に延びる一本。


「村の外は開拓が進んでからの話になるが、まずは薪を置いたあたりに堀を作る。で、川から水を引き、それを南北に流す。運河の出発地点じゃな。用水路としての利用もあるため、今の畑を少し潰すことになるじゃろう」


 川から引いた水が、運河にぶつかって左右に流れる。流した水は必要な場所で農業用水などにも利用する。

 川に近い運河は全て同じような構造にするため、運河部分の流れは川より弱いし、うまく堰を作れば、川下()から川上()方向に水を流すことも出来る。


 ついでに荒れ地にも溜池を作り、周辺の緑化を推進する。

 国を作るなどの話をしても新しい村人達は混乱するだけなので、周辺の開拓計画という体裁でアントンは、それを見越した土地の使い方について意見を求める。


「その……運河は他の開拓地にも繋がるんですよね?」


 そう尋ねたのは畜産担当のスヴェンだった。


「ん? そうじゃな。そのための運河じゃしな」

「この草原を南北に縦断する運河が出来たら、運河の東西が完全に分断されませんか?」

「それは、まあそうなるじゃろうな」

「橋はどの辺りに作るのでしょうか?」

「……ああ、考えとらんかった」


 等と答えるアントンだったが、実際の所、道を作る場所に着いても見当は付けている。


 川沿に近い用水路の水車予定地付近から、畑の間を通るように道を描き込み、その延長上に橋を書き入れたアントンは


「こんな感じでどうじゃろうか?」


 と皆の意見を求める。


「畑の間を通すんですか?」


 とディーターが尋ねると、数人の村人も同じ部分が気になっていたようで頷き合っていた。

 アントンが、何か問題があるのなら、遠慮せず言って欲しい。と水を向けると代表してディーターが


「気にしすぎかも知れませんが、畑の間に馬車が通るような広い道があると事故が心配です」

「なるほど。大した問題ではなさそうじゃが、敢えて、危険を冒す必要もなかろう……道は少しずらすとしよう」


 水車予定地は比較的()にあるため、畑を迂回するのは難しくない。

 アントンが、道を描き直して、これでどうだろうか、と尋ねると、今度は村人達が納得したように頷く。

 そしてディーターがぽつりと漏らす。


「しかし……ここまで村の住民に話を聞いてくださるとは思っていませんでした」

「他にも気付いた事があったら遠慮無く言ってくれた方が助かるんじゃよ。作ってからでは直すのに時間と物資が必要になるじゃろ? 今なら、地面に描いた絵を直すだけで済むのじゃから、やらない理由はあるまい?」


 アントンはそう言って笑った。

金曜、土曜と病院通いでした。

昨年から薬不足って話は聞いていましたが、今回、いつもの薬がなくて、ジェネリックに切り替わりました(逆かも知れません。普段からあまり気にしてなかったので)。

調剤薬局の薬不足なんて無関係な場所の他人事だと思っていましたが、これ、代替品もなくなったりしたら困りますね。。。

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