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1・お前は僕たちのパーティーにふさわしくない

「お前は僕たち《光の勇者たち》にふさわしくない!」



 俺──ノアは冒険者パーティー《光の勇者たち》リーダーのアークに、追放を言い渡されていた。


「は?」


 予想だにしなかったことを言われ、つい聞き返してしまう。


「待ってくれ。お前はいきなりなにを……」

「ふんっ、()()()()だと? お前、自分の立ち位置をまだ理解していないのか?」


 アークが吐き捨てるように言う。


 彼に賛同するように、他のパーティーメンバーも俺に軽蔑の眼差しを向けていた。


「……そう判断した理由を聞こう」


 バカバカしくなってくる感情を堪えながら、俺は冷静にそう問う。


「理由? そんなの分かりきったことだ」

「分からないから聞いているんだんだが」


「ちっ……! アーク様はあんたが『実力不足』と言いたいのよ! アーク様にそんな当たり前のことを言わせないでちょうだい!」


 パーティーメンバーの女魔法使いが、そう声を荒らげる。


 彼女は冒険者らしからぬ露出の多い服装に身を纏っている。そのこと自体を咎めるつもりはないが、彼女は生粋の男好きで、所謂ビッチと呼ばれる人種だ。


「僕たち《光の勇者たち》はA級冒険者パーティーだ。そして現最強とも称されるパーティーでもある」


 アークが気持ちよさそうにすらすらと続ける。


「しかしこんなもので満足してはいけない。僕たちはもっともっと上を目指していかなければならないんだ。そんな《光の勇者たち》にお荷物同然のお前は必要ではない。だから……今日をもって、お前にパーティー追放を言い渡す!!」


 強い口調で言い放つアーク。

 それに対して、他のパーティーメンバーも口を挟まなかった。



 ──俺に剣の才はなかった。


 しかし()()才能があったため、ここまでなんとか冒険者として渡り歩いていた。

 昔はこことは違うパーティーに所属していたが、理由があって脱退してしまっていた。


 そして俺が次に選んだのが、ここ《光の勇者たち》。

 俺が入った頃の《光の勇者たち》はまだ出来立てほやほやのパーティーで、まだ誰にも名前を知られていなかった。


 だが、その頃からリーダーのアークは野望を抱いていた。



『どうせやるなら一番だ。僕たちで最強を目指そう!』



 ……と。


 当時の俺から見てもアークは大した男ではなかったが、何故だか彼は人一倍自信があった。

 そんな自信満々の彼に騙されて、他のパーティーメンバーも付いてきた。


 とはいえ、実力がなくても自信というのは大切だ。

 瞬く間に、F級パーティーだった《光の勇者たち》は、世界でも一桁しかいないA級パーティーに駆け上がった。

 冒険者パーティーの等級(とうきゅう)が上がる度に、どんどんアークの態度も肥大していった。


 しかしどうでもよくなっていた俺は、それでもいいと思っていた。


 そして今日も依頼を達成して、みんなで街に帰還しようとかとした時、突如アークたちに呼びされて、こんなことになっているというわけだ。



「俺が実力不足……か。たとえそうだとしても、今まで一緒にやってきた仲間にそんなことを言うとは、随分薄情だと思うんだが?」


 腕を組んでそう口にする。


 そんな俺の不遜な態度が気に入らなかったのか、アークは顔を怒りでさらに真っ赤にした。


「なにを言っている! 今までお荷物のお前を、このパーティーに置いてやったんだぞ?」

「そうよ! 薄情どころか、アーク様は慈悲深いじゃない!」

「自分の実力不足を棚に上げ、アークにそんなことを言うとは……ノア。お前はとことん愚かだったんだな」


 アークを含め、他のパーティーメンバーが一気に俺を責め立てる。


「まあ……側から見れば、そう見えていたかもしれないが……」


 俺は過去の出来事をきっかけに、二度と()()を出さないことにした。


 だが、このパーティーから死人が出るのも寝覚めが悪い。

 アークは愚かな男ではあったが、同時に弱かった。俺はこいつらみたいに、弱い人間を切り捨てられるほど薄情ではない。


 ゆえにバレないように、戦闘中に俺は彼らに支援魔法をかけていた。


 そのおかげで、彼らは本来のものとはかけ離れている力を手に入れることが出来たのだが……俺がいなくなって、どうするつもりだろうか?

 どう贔屓目線で見ても、俺の支援魔法がなくなった彼らは三流。

 A級パーティーどころかB級……いや、C級の実力があるのかも怪しいくらいだ。


「それとも、なにか言い返したいことがあるのか? 『自分の力はこんなもんじゃない』とでも、言い張るのか?」


 と俺を見下しながら、アークはそう問いかける。


 自分の力。

 そうだ、ここで俺がいつもしてやっていることを再現してやればいい。

 力を示せば、彼らだって……。



『来ないで! 化け物! そんなおぞましい力で、みんなを殺さないで!』



 ……その時。

 ふと過去のトラウマが甦った。


 立ちくらみがして倒れそうになったが、なんとか踏みとどまる。


「どうした? うんとかすんとか言ったらどう……」

「いや、お前の言うことは間違いない。俺の力はこんなもんだ。《光の勇者たち》にふさわしくないかもしれないな」


 と俺は答える。


 たとえ力を示したとしても、アークたちは信じてくれないだろう。

 どうせ奇術かなにかの類だと思われ、さらに罵倒されるだけに違いない。

 そこまでしてこのパーティーに留まるほど、義理も未練もなかった。


「ふふふっ、悪いね。ノア君」


 パーティーの男治癒士がメガネをくいっと上げて、そう口を動かす。

 口では「悪いね」とは言っているが、全く謝罪の気持ちは感じられなかった。


「まだ、あの三流冒険者パーティー《極光(オーロラフォース)》が最強だって言っているバカな連中もいるんだ。早いとこ、民衆の間違った認識を正すためにも、もっともっと難しい依頼をこなして実績を積んでいかないといけない。そのために、君みたいな足手まといは不要なんだ」

「そうだな。お前らの言っていることが正しいよ」


 正直……こいつらの実力で《極光(オーロラフォース)》を三流だと言っているのは、とんだ笑い種だ。

 しかし反論するのも疲れるので、俺は彼の意見に追従する。


「納得したな? だったら、さっさと僕たちの前からいなくなれ!」


 アークはそう声を大にする。


「分かったよ。今まで世話になったな」

「ああ、そうそう。君が持っている武器は、元々パーティーの金で買ってやったものだ。パーティーを抜けるんだし、当然返してもらうことになるが……いいな? 

 あとは有り金と冒険者ライセンスもだ。お前は冒険者として三流だ。これを機会に、冒険者から足を洗うんだな」

「……好きにしろ」


 そう吐き捨てる。


 意味が分からない論法ではあったが、これ以上こいつと口論するのも億劫だ。ライセンスまで取られるのは違和感があったが、あとで再発行すればいいだけである。


 俺は頭を押さえながら、武器と所持金の入った袋、そして冒険者ライセンスを地面に放り捨てた。


「じゃあな、達者でやれよ」

「はっ! お前にそんなことを言われる必要はない!」

「《光の勇者たち》がどんどん出世していく様を、指を咥えて眺めておいてね〜」

「ハハハ! お荷物がいなくって、せいせいするぜ!」


 嘲りの声を聞きながら、俺は彼らに背を向けた。

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[気になる点] 何で支援魔法をかけられた本人に分からない様にしてるの? 自分の実力を見誤るのは当然じゃん?
[一言] 意味がわからん
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