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9 また会う日まで

 今日は4月2週目の土曜日。

 佳奈とのお別れの日。


 佳奈のアメリカ渡航の送別に風花、しげ、西園寺先輩、恒星くん、そして私が集合した。

 出国前に、飛行機が見えるスカイデッキで佳奈に挨拶をした。


「佳奈、おめでとう!頑張ってね!結婚式には呼ぶから、来てね」と風花が言った。


「風花もおめでと!楽しみに待ってるね」


「古川さん、いってらっしゃい。これは皆からの餞別だよ」と言って、髪袋を渡す。


 佳奈はなになに?といって、「ヘアケア剤。向こうは空気が乾燥してると思うから、どうかなって」


「さすが海斗せんぱーい。ありがとうございます!」

 オーバーに佳奈は言い、先輩は皆で決めたものだから、全然‥とそっと答えた。


 そして佳奈はしげと恒星くんの所に向かい、「あれ?いつもの元気は?何、二人はどんよりした空気なのよ?」と声をかけた。


 しげと恒星はお互いをみて、一緒にされたくなさそうな顔をした。

「なんか、寂しくなるなと思って」としげは言い、その後、恒星くんが「旅立ち、おめでとうございます。大学から変わらず付き合いがあって、いつか皆それぞれの道に進むんだと解ってましたけど、その、いつかが来ると感慨深いものですね」と言った。


 それを受けて、しげが「一言だと、寂しい、だろ?」と突っ込んだが、「第1におめでとう、ですよ。そして、しげさんの寂しいよりも複雑な感情です」と恒星くんは言った。


 そのやり取りを見て笑いながら、佳奈は「しげと仲間たちのやり取り見たり、聞いたり、突っ込んだり、に関われなくなると思うと……」と言って、「寂しい?」としげが返し、「んー、しげも皆も頑張れ」


「それはどういうこと?というか、何で俺と皆で分かれてる?」とむっつりしながらしげが佳奈に問う。


「それは、そうなるよね?」

 佳奈は頷きながら答えて、それに被して風花が「うんうん、なるなる」と突っ込んだ。


 しげは二人に冷たい目線を出しながら、「あっそう」と返した。


 そこに西園寺先輩は、「まぁまぁ、しげは、マスコットキャラクターみたいなもんだから。良い立ち位置だよ」と優しく言った。

 しげはうやうやしくお礼を伝えた。

「あー、フォローありがとう。サイオンジさまさま」


 そこに、恒星くんは、「ご当地キャラには日本にいないと会えないので、ぜひ会いにきてください、佳奈さん」と突っ込み。


 皆、爆笑。


「さて、時間だから行こうかな?まぁ、メールも電話もできるし、何も問題ないよ?ねぇ、光」

 佳奈は私に目配せした。


 私は頷き、「そうだね」と言った。


「今日はわざわざありがとうございました。元気で!また来るときには連絡します」と佳奈は言い、搭乗口まで皆で送った。


 そして皆、近くの椅子に座ったりして、少し休んでいる中、風花が立ち上がり、「ねぇ、ご飯食べて帰らない?」と声をかけてくれた。


 私は「うん」と答え、西園寺先輩と恒星くん、しげをみた。


 三人はお互いをみて、「あれ?しげからいつもの、ないの?」と先輩が言う。

 いつもの、とは多分、私を誘う件のこと。

 しげは椅子に腰掛けて、立っている先輩を下から見上げて、「さっきあれだけ言われて、言う気なくすわ。海斗こそ、いつも俺で遊んでるだろ?俺はおもちゃじゃないんだけど…」しげの言葉に、先輩は笑って、「そんなつもりないんだけどなー。俺は仲良いと‥あー最近、あんまり交流なかったからか……」と話しながら考えたようで、しげと恒星くんに言った。

「じゃあ、今日はしげと恒星と親睦を深めよう。どう?3人で飲もうか」

 それにしげは「はぁ?」と、恒星くんは「えっ?俺も?」という顔した。その二人に海斗先輩は声をかけた。

「行くよ。大野さん、狭山、また今度な」

 そして私達を置いて離れていった。


「なんか嵐が去ったみたいな」と風花が苦笑しながら、「私達もお店探そうか」

 提案してくれた。


 空港を離れて、東京駅付近でイタリアンをみつけてお店に入った。


「すぐに入れてよかったね」と風花が言い、「うん。少し時間が早かったからかな?」と私は返した。

 なるほどという顔をして、「そうかもしれない。まずメニュー選ぼう♪迷うなぁ」

 結局、二人とも選べず、4品のコースにした。


 料理を食べながら、「結婚準備はどう?」と私は聞いた。

 風花はもうすぐ大学時代のクラスメイトと結婚する。


 風花は私とは大学のテニスサークルで出会い、学部が同じだったので、よく話すようになった。いつも明るくて、理想は求めず、現実的な選択をする。薬剤師になると決めていた彼女は、働く先となる薬局等では出会いはないといい、大学在学中に結婚相手を見つけると決めていた。

だからか西園寺先輩に対してもはっきりと住む世界を自覚し、夢見ることなく友達として接して、自分に合う人を探してた。


 そして大学3年で別の学部だけど、一年の選択強化が同じだったクラスメイトとたまたまランチをして、将来について意気投合し、付き合い、結婚に至ったというわけ。


「順調。計画どおりに進んでるよ。ドレス選ぶの楽しかった〜。何回も結婚式する人の気持ちわかる〜」


「そうなんだ?」


「もうあのドレス着るためなら、ダイエットできるし、高額エステ払っちゃう!」と力説し、「光もドレス選ぶときは声かけてね!」と言った。


 最後のちょっとしたデザートとコーヒーがきた。

 そこまでにこやかに話してた風花だったが、ちょっと固い顔をして、「しげさ、友人としては楽しい人だと思うよ。でも、恋人としては……。光はさ、そこらへんどうなの?」と聞いてきた。

 風花はしっかりしてるから、へらへらしてあんまり考えてなさそうなしげには厳しい。

 私は回答に困ってしまう。

 風花はいつも細やかな気配りで周りをフォローする。私が就職できたのも、先輩に猛プッシュしたのは風花のおかげだったりする。

 真梨恵はちゃっかり入社試験していないのに入れたことも、そういうことできる人はいいよね、と言いながら、自分はしっかりやる。そしてどう進めればいいかよく理解していなかった私の就職も同じゼミということも踏まえて、先輩に情報をきいて、推薦の有無と選考方法について、自分の入社のようにきいてくれた。


 風花は多分、しげを相手にせずに、毅然とした態度で断ってほしいんだと思う。

 私は今のままが良いと思ってるわけじゃないけど、もうしげと会えなくなるなんて考えられない。

 でも嘘は付きたくない。


 黙っていたら、「真理恵がいたときはね、あの子の性格からして、しげを除くなんていうことをしなかったと思ってる。でも今、真理恵はいない。もう、さ、はっきり言ってもいい気がするけどね」と風花は言った。


「風花、しげとはね、恋人に戻ることは考えてない。友人として‥」

 絞り出して気持ちを伝える。


 それを聞いて、「………友人か。それなら問題ないのかもしれないけど」

 風花は息を吐いて、「まぁ、しげに伝えたところで変わらなってことね。……それで、他に気になる人はいないの?」

 

 私は今の気持ちをそのまま伝えた。

 気になる人はしげ。他にいるわけない。

「今は……いないかな」


「恒星くんとかどうなの?」


「えっ??」


「いや、恒星くん、光と同じぐらい?大学院行く前に彼女と別れてから話聞かないからどうかなって」

 風花はどうしても知り合いとくっつけたいのかな?

 私はしげの時より困った。

 恒星くんのことは何とも思ってないけど、そのまま言うのは失礼なような気もする。


「うーーん、風花からすると、理想的な恋人なの?」と質問で返した。

 少し喜んだ様子で風花は説明してくれた。

「そうだね、海斗先輩と恒星くんは理想的。まぁ、海斗先輩は婚約して、じき結婚するみたいだから勧められないけど。恒星くんは彼氏いなかったら、いいなと思ったかも」


 ん?私は疑問を口にした。


「西園寺先輩、婚約したの?」

 風花はうんうんと頷いて、「あれ?話してなかった?婚約したというか、正式に決まったというべきか。ほら大学時代から決まった人がいるっていう話あったじゃない?許嫁?」


 あの話、真実だったんだ。

 会社では全く話題になってなかったから、きっと風花は先輩から直接、聞いたんだろうな。

「多分、私は最後なんじゃないかな。同じ会社だし。噂されたくないから」と先輩の気持ちを想像して話した。

「そうかもねー。私はちょうど結婚するから、その連絡のやり取りで海斗先輩から聞いただけだし。まぁ、ついにその時期になったかていう感じだよね」


 だから恒星くん、ね。


 この話題、風花は忘れていそうなので、そのままスルーした。

 そして、風花とは食事終わり、電車で途中まで一緒に帰宅した。

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