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海とまぼろし-IdentityCrisis Missing  作者: MERO


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20/31

20 最後のプレゼント

 恒星くんとはランチのお店で別れて、実家に向かった。


 まず、着いてから、この1週間に起こった出来事をノートに書いてナリに共有する。

 そして、これからやることをもう一度、ノートで確認する。


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・先輩と自分に関係する情報を集める。

・引っ越しし、自宅を引き払う。(結婚?)

----


 結婚?と書いて、結婚?の?を消して、矢印に変えて付け加えた。

(結婚→計画に盛り込む)


 この先の計画に、必要な対応。

 リビングのテーブルを見ると、絵の額は外れた状態になっていた。

 ナリが外してくれたようだ。


----

・パズルを解く、に上から二重線を引いて、完了とする。

----


 中身を見たのだろうか。

 私は裏側に貼り付けられた薄い手紙の中を見た。


 さらに鍵が入っていた。

 なんだろう?この鍵?

 KH561と書かれている。


 この番号見た記憶がある。

 一緒に入っているメッセージには「6歳、光、お誕生日おめでとう!」と書かれている。

 6歳の誕生日プレゼント?。


 平べったい小さな鍵。

 その昔、鍵を無くしてしまって、それ以降、鍵をつけずに乗っていた自転車………


 そうだ。私は誕生日に自転車をもらって、危ないと注意されるのに、乗り回して心配させていた。

 あれは6歳だったんだろうか。

 確かに、その子供の時に乗っていた自転車の鍵にそっくり。


 私は1人、一階のガレージにおいてあった子供用の自転車のところに向かった。


 自転車の鍵はかかっていない。

 そう、私は鍵をなくしてから、鍵をかけられるにも関わらず、鍵自体をつけなかったから、当然の状況。


 私は鍵を使って、鍵がかかるか確認した。

 そうしたら、鍵の錠が削られて、何かが飛び出してきた。


 こんなところに、隠れてた。

 最後のUSB。


 何だかこれは特に大事に隠されているように感じた。


 中身は一人で見よう。

 そう決意して、私はそのまま自分の部屋に籠もって、パソコンを開いた。

 USBを指すと、前回と同じようにいろんな設定が自動で変わっていく。


 そしてまたメッセージが出力された。


----

光。唯一無二の私達の子供。これは私達からの最後のプレゼント。忘れないで。

----


 このメッセージはただ読むだけのテキスト。

 その先に何も選択肢は用意されていない。


 私は思い切って、メッセージをクローズボタンで閉じた。

 そうすると、プログラムが走り、テキストが開いて、意味不明な大量の文字が書き込まれる。

 そのテキストはデスクトップに出来上がり、もう一つ、メッセージが表示される。


----

これは遺伝子情報の羅列。言われた通りの遺伝子情報の中に、1つだけバグを設定した。

それはこの情報がコピーされたものではないことを表し、そして今後のコピーを禁止する配列。

つまり、光の遺伝子はコピーできない。

つまり子供は生まれない。

この先、また悪用されることはない。

----


別のテキストが表示される。


----

光、ご飯食べてる?元気に過ごしてる?

お母さん、お母さんらしいことできなくてごめんね。

お母さんは光がお腹に入るずっと前に、この研究が成功したとして、どういう結果を辿るのか考えてた。

これが国家の為になるんだろうか。

もし光が大きくなって、次に悩むことはなんだろうと考えた。

クローンが生まれて普通に生活できるほど、この国は成熟していない。

この技術は隣の大国の情報を盗んだもの、このままだと戦争の火種になる。

それは避けたかった。

光、最後のプレゼント受け取ってほしい。

強く、光は自由に生きて。

私のたった一人の子供。

光は、お父さん、お母さんのひかりだよ。

愛してる。

----


 …お母さん、お父さん。

 私は最後の情報をみて、言葉を失った。


 火種にならないよう、操作した。

 そして遺伝子操作されたクローンが子供を産んだら、きっとその子も研究対象になって、今の自分と同じような状況になるのは目に見えた。


 母は私が産まれる前から、研究してる時から心配していて、細工をした。


 きっと研究として、これは失敗。

 私はクローンもどきのクローン。


 こんな失敗作の私が原因で両親は亡くなり、しげと佳奈は狙われた。

 そして自分はなぜのうのうと、人の屍の上に生きているんだろうとその事実にゾッとした。

 運良く、二人が気づいて対処できたから、私の正気は保たれている。

 海の向こうの佳奈とナリとなったしげは連絡を取っている。私は二人にこの事実を告げようか考えた。


 子を成すことができない。

 自分の身体の欠陥を私は無意識に感じていたのか。

 それとも遺伝子によるものなのかわからないけれども、性行為に対する反応に繋がっているように感じた。


 必要がないから、身体自体が求めていない。そして苦痛に感じる。


 この事を誰に相談できるだろうか。

 もし二人に話して、過去のしげとの付き合いにまで話が及んでしまったら・・人間ではないと断定された気持ちになった。

 そう思うと、二人には言えない。


 気分はどん底なのに、涙は不思議と出ない。


 しげと佳奈がそれぞれの人生を私のせいで捨てた。忘れてはならない。


 私は二人の人生も含めて、これからどうするのか、考えないといけない。


 泣いている場合じゃない。

 考えるんだ。

 なぜ、危険を冒して、こんなトリックを使って私に両親はこの情報を伝えたのか。


 このままだと、私という個人を悪用される。

 両親は当初は研究・発展のため、作り出そうとし、途中で状況が変わり、悪用されないようにエラーを組み込んだ。

 エラーを組み込んだから生まれたんだろうか?

 そもそもどんな研究で、どこの過程のどの部分で何を実施して私は生まれた?


 遺伝子の配列情報は手に入れたが、それに至るまでの研究・全体像が見えない。


 私は自分のことを知らなすぎる。

 そんな私を必要とする組織がある。

 でも、悪用されるということは有用な検体ということ。


 両親は私に、自由に生きろと言った。

 ………自分自身を利用すればいい。


 自転車の鍵を、握りしめた。


 自分の部屋から出て、リビングに戻る。


 そして私は携帯のアプリで恒星くんの居場所を確認する。


 隣の県の民家を指していた。

 恒星くんの携帯内をチェックすると、


----

浩二です。到着は何時ぐらいになりそう?

----


 知らないメルアド、名前の人から連絡がきていた。

 今日は西園寺先輩との用事じゃなかったみたい。

 どこかで先輩に接触して、携帯と荷物にセットしないといけない。


 クロが寄ってきた。


 マスターがクロを病院に連れて行ってくれて、だいぶ高齢だから、かわいがってあげてねと先生に言われたと言っていた。


 ごめんね、ほとんど世話できなくて。

 ナリに任せっぱなし。


 私のひざに乗って、鳴く。

 私はクロの喉あたりをさすってあげた。


 クロは気持ちよさそうに背伸びした。

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