20 最後のプレゼント
恒星くんとはランチのお店で別れて、実家に向かった。
まず、着いてから、この1週間に起こった出来事をノートに書いてナリに共有する。
そして、これからやることをもう一度、ノートで確認する。
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・先輩と自分に関係する情報を集める。
・引っ越しし、自宅を引き払う。(結婚?)
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結婚?と書いて、結婚?の?を消して、矢印に変えて付け加えた。
(結婚→計画に盛り込む)
この先の計画に、必要な対応。
リビングのテーブルを見ると、絵の額は外れた状態になっていた。
ナリが外してくれたようだ。
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・パズルを解く、に上から二重線を引いて、完了とする。
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中身を見たのだろうか。
私は裏側に貼り付けられた薄い手紙の中を見た。
さらに鍵が入っていた。
なんだろう?この鍵?
KH561と書かれている。
この番号見た記憶がある。
一緒に入っているメッセージには「6歳、光、お誕生日おめでとう!」と書かれている。
6歳の誕生日プレゼント?。
平べったい小さな鍵。
その昔、鍵を無くしてしまって、それ以降、鍵をつけずに乗っていた自転車………
そうだ。私は誕生日に自転車をもらって、危ないと注意されるのに、乗り回して心配させていた。
あれは6歳だったんだろうか。
確かに、その子供の時に乗っていた自転車の鍵にそっくり。
私は1人、一階のガレージにおいてあった子供用の自転車のところに向かった。
自転車の鍵はかかっていない。
そう、私は鍵をなくしてから、鍵をかけられるにも関わらず、鍵自体をつけなかったから、当然の状況。
私は鍵を使って、鍵がかかるか確認した。
そうしたら、鍵の錠が削られて、何かが飛び出してきた。
こんなところに、隠れてた。
最後のUSB。
何だかこれは特に大事に隠されているように感じた。
中身は一人で見よう。
そう決意して、私はそのまま自分の部屋に籠もって、パソコンを開いた。
USBを指すと、前回と同じようにいろんな設定が自動で変わっていく。
そしてまたメッセージが出力された。
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光。唯一無二の私達の子供。これは私達からの最後のプレゼント。忘れないで。
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このメッセージはただ読むだけのテキスト。
その先に何も選択肢は用意されていない。
私は思い切って、メッセージをクローズボタンで閉じた。
そうすると、プログラムが走り、テキストが開いて、意味不明な大量の文字が書き込まれる。
そのテキストはデスクトップに出来上がり、もう一つ、メッセージが表示される。
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これは遺伝子情報の羅列。言われた通りの遺伝子情報の中に、1つだけバグを設定した。
それはこの情報がコピーされたものではないことを表し、そして今後のコピーを禁止する配列。
つまり、光の遺伝子はコピーできない。
つまり子供は生まれない。
この先、また悪用されることはない。
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別のテキストが表示される。
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光、ご飯食べてる?元気に過ごしてる?
お母さん、お母さんらしいことできなくてごめんね。
お母さんは光がお腹に入るずっと前に、この研究が成功したとして、どういう結果を辿るのか考えてた。
これが国家の為になるんだろうか。
もし光が大きくなって、次に悩むことはなんだろうと考えた。
クローンが生まれて普通に生活できるほど、この国は成熟していない。
この技術は隣の大国の情報を盗んだもの、このままだと戦争の火種になる。
それは避けたかった。
光、最後のプレゼント受け取ってほしい。
強く、光は自由に生きて。
私のたった一人の子供。
光は、お父さん、お母さんのひかりだよ。
愛してる。
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…お母さん、お父さん。
私は最後の情報をみて、言葉を失った。
火種にならないよう、操作した。
そして遺伝子操作されたクローンが子供を産んだら、きっとその子も研究対象になって、今の自分と同じような状況になるのは目に見えた。
母は私が産まれる前から、研究してる時から心配していて、細工をした。
きっと研究として、これは失敗。
私はクローンもどきのクローン。
こんな失敗作の私が原因で両親は亡くなり、しげと佳奈は狙われた。
そして自分はなぜのうのうと、人の屍の上に生きているんだろうとその事実にゾッとした。
運良く、二人が気づいて対処できたから、私の正気は保たれている。
海の向こうの佳奈とナリとなったしげは連絡を取っている。私は二人にこの事実を告げようか考えた。
子を成すことができない。
自分の身体の欠陥を私は無意識に感じていたのか。
それとも遺伝子によるものなのかわからないけれども、性行為に対する反応に繋がっているように感じた。
必要がないから、身体自体が求めていない。そして苦痛に感じる。
この事を誰に相談できるだろうか。
もし二人に話して、過去のしげとの付き合いにまで話が及んでしまったら・・人間ではないと断定された気持ちになった。
そう思うと、二人には言えない。
気分はどん底なのに、涙は不思議と出ない。
しげと佳奈がそれぞれの人生を私のせいで捨てた。忘れてはならない。
私は二人の人生も含めて、これからどうするのか、考えないといけない。
泣いている場合じゃない。
考えるんだ。
なぜ、危険を冒して、こんなトリックを使って私に両親はこの情報を伝えたのか。
このままだと、私という個人を悪用される。
両親は当初は研究・発展のため、作り出そうとし、途中で状況が変わり、悪用されないようにエラーを組み込んだ。
エラーを組み込んだから生まれたんだろうか?
そもそもどんな研究で、どこの過程のどの部分で何を実施して私は生まれた?
遺伝子の配列情報は手に入れたが、それに至るまでの研究・全体像が見えない。
私は自分のことを知らなすぎる。
そんな私を必要とする組織がある。
でも、悪用されるということは有用な検体ということ。
両親は私に、自由に生きろと言った。
………自分自身を利用すればいい。
自転車の鍵を、握りしめた。
自分の部屋から出て、リビングに戻る。
そして私は携帯のアプリで恒星くんの居場所を確認する。
隣の県の民家を指していた。
恒星くんの携帯内をチェックすると、
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浩二です。到着は何時ぐらいになりそう?
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知らないメルアド、名前の人から連絡がきていた。
今日は西園寺先輩との用事じゃなかったみたい。
どこかで先輩に接触して、携帯と荷物にセットしないといけない。
クロが寄ってきた。
マスターがクロを病院に連れて行ってくれて、だいぶ高齢だから、かわいがってあげてねと先生に言われたと言っていた。
ごめんね、ほとんど世話できなくて。
ナリに任せっぱなし。
私のひざに乗って、鳴く。
私はクロの喉あたりをさすってあげた。
クロは気持ちよさそうに背伸びした。




