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海とまぼろし-IdentityCrisis Missing  作者: MERO


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17/31

17 ギフト

 私は実家に朝向かい、掃除をして空気を入れ替えた。


 そういえば、両親がなくなってすぐ、空き巣が入った。


 あれも、もしかしたら………。

 ひどく荒らされていたのは、両親の部屋で何かなくなったか幼い私には全くわからなかったのだ。


 リビングの最後のパズルの場所は壁にかけてある絵だった。

 まさかこの絵がパズルなんて思わなかった。


 裏の留め具を外し、額を外そうとしたが留め具はダミー、外すには工夫が必要そうだった。


 一度、絵を戻し、飲み物を飲んでため息をついた。


 この前、しげは軽々と父の残したパズルを解いてた。彼がいたら………。


 そんなことを考えていたら、お昼前にチャイムが鳴った。


「はい」

 私はインターフォンに出る。


「光ちゃん。休憩取れたから、夜じゃなくて、早くきたよ。開けてくれるかい?」

 マスターだった。


 マスターは車で来たので、1階のカースペースに入れてもらった。


 車の後ろを開いて、クロが入った籠を取り出して、「はい、クロ、家についたよ。またうちに遊びに来るんだよ」とクロに声をかけた。


 私は「ありがとうございます!クロ、おかえり」と言って受け取った。


 そしてマスターは次に縦長の箱を出してきた。

「はい、これ。ぬいぐるみのプレゼント、受け取ってくれるかな?」と言って箱を開けた。


「!?」

 私は見て驚いた。


 マスターはしーっというポーズを取り、「”ぬいぐるみ”プレゼントだよ。我が家よりこっちのほうがいいかと思って」


 私の目から涙が溢れた。

 それをみて、マスターが「名前つけてさ、可愛がってあげてよ、光ちゃん」


 そこに………巨大な”ぬいぐるみ”……が入っていた。


 私はその”ぬいぐるみ”を箱から出して、思い切り、抱きしめた。

「マスター………ありがとう」

 マスターはそんな私を頷いて、見守ってくれた。


 そして仕事があるからとマスターはお店に帰って行った。


 私はリビングにその”ぬいぐるみ”を連れて、戻った。

 その”ぬいぐるみ”は手元にノートとペンを持っていて、ノートに書き込んだ。

(遅くなってごめん。しげは死んだ。かなもいなくなった。)

(そして無事に、二人共、新しい人生を生きてる。)

(名前で呼ぶのはやめよう。まず、俺の新しい名前を決めよう。)


 そこに書き込む。

(ナリ、はどうかな。)

 ナリと呼ばれた”ぬいぐるみ”は頷いた。


「ナリ、よろしくね」

 私は声に出して、”ぬいぐるみ”に語りかけた。


 私が話すのをみて、ナリはノートに書いた。

(話すには危険すぎる。ノートで話そう。)


 私は頷いた。

(まず二人に謝りたい。)


 そうノートに書いて、マスターはクロを引き取りに来るタイミングでナリに会わせようと思っていたんだろうなと私はふと思った。


 ナリは(?)と書いた。

 それを受けて(どうしてこうなったのか、それは全て私に原因がある。)と次の行に私は書いた。


(ごめんね。)

 そう書いて、私は下を向いた。


 そうして、私はここに来るまでのことを整理するかのようにノートに書いて、それを通して私はナリと会話した。


 ナリとは、直接会話しない。

 全貌が見えない今の状況において、どこに監視があるかわからないこと、日常でこの嘘をわからなくするため、ナリは”ぬいぐるみ”として、実家でも人がいないように過ごすことに決めた。


 そしてノートの最後に、これからやることを書いた。


----

・パズルを解くこと。

・日々を今まで通りに過ごすこと。

・彼らの状況を把握すること。

----


 できるだろうか。

 生活しながら、私の大事な人達に、危害を加え、私を監視する彼らを逆に把握する。


 ナリを見て、私は決意をする。

 できるかどうか、じゃない。

 やると決める。


 ノートに書き出した準備するための道具を揃えに電気街に向かった。


 その夜、私は恒星くんの家に戻った。


「ひかりさん、おかえり」

 リビングで恒星くんに迎えられた。


「ただいま。………あの、確か、恒星くん、前に化Eduのコーヒーの味、知りたがっていたよね?」

 手に持っていたお土産袋を見せる。


 恒星くんは袋を見て、嬉しそうに言う。

「うわあ、覚えててくれたんですね」


 私は恒星くんに紙袋を手渡して、「うん………。これ、どうぞ。………いつもありがとう」


 キラキラした目で紙袋をみている。

「これって、カフェインなしでしたよね?気になってました。早速、飲んでみます?」


 私は心の中で渦巻く気持ちを抑えて、言った。

「………そうだね」


 立ち上るコーヒーの香り。

 ミルクを入れて、カフェラテにしていただく。


「香りが普通のコーヒー。全然、デカフェに見えない。すごいなぁ」

 そう言いながら、恒星くんは一口飲んだ。


 その時、二人の携帯が同時に鳴った。

 携帯を開くと、風花から連絡だった。


----

こんばんわ。


今回、私の結婚式で光と恒星くんに折り入ってお願いがありまして、来週の土日のどこかで皆で会いたいです。

都合がいい日時を教えてください☆

----


 私と恒星くん、西園寺先輩、風花のグループチャットに投稿したようで、目の前で恒星くんも同じチャットを目にしたようだ。


「来週か………」

 恒星くんは予定を確認している。

 ふっと私のほうを見て、「一緒に予定あわせて、返信しましょうか?」と聞いた。


 私は内心、ドロドロの嫌な気持ちになった。

 でも見せるわけにいかない。

 カップに入ったコーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせる。

「………うん。………それがいいよね」


「じゃあ、土曜日の午前中どうです?僕、午後から夜に予定がありまして」

 恒星くんからの提案に、私は頷いた。

 それを見た恒星くんは、携帯に文字を打ち込んだ。


 次の瞬間、私の携帯が鳴った。


----

風花さん、結婚式近付いてきましたね。

僕と光さんは土曜日の午前中、OKです。

海斗先輩はどうですか?

----


 私は携帯を見て、恒星くんの自然な振る舞いに私の考えが間違っているのではないかと思ってしまいそうになった。


 恒星くんは私の事情を知らないまま、友人として見捨てられないから・・ここに私を居させてくれているんじゃないかと。


 いや、この様子だけではわからないと思い直して、これからやろうとしている手順を考えた。


 私はこれから恒星くん・西園寺先輩の携帯とカバンに細工し、私といない時間の行動を確認する。


「どうしました?光さん」

 恒星くんが手元にある携帯をじっと見つめた私を見て聞いた。


「………気分変えるために、携帯変えようかと。恒星くんは何の携帯、機種を知りたくなって」

 私は事前に考えていたセリフを言う。


「そうなんですね。最近、最新機種に切り替えたんですけど、お店にまかせっきりで。なんだっけな………」といろいろ触りながら、そうつぶやくので、私はチャンスとばかりに、こう言った。


「確か設定で見れた気がするけど、ちょっと見せてもらってもいい?」と私は恒星くんに言った。


 彼は携帯を渡してくれた。

「どうぞ。設定はここです」


「ありがとう。あの、インストール可能なアプリ検索も少し見ていいかな?」とあわせて私は聞いた。


「いいですよー」と返事を聞いて、私は彼に見えないように慎重に操作して、アプリをインストールし、設定画面に戻り、設定を変更した。


「はい、ありがとう。………人気の最新だね。OSが今と違うから、切り替え、大変かも」と言った。


 ふふと恒星くんが笑った。

「僕、携帯の使い方、よく理解してないけど切り替えできたので、多分、大丈夫じゃないですか?お店の人に一緒に聞きに行きましょうか」と安心させてくれた。


 そこに携帯がまた鳴った。


----

土曜日、午前でOKです。

集合場所と時間は大野さん、よろしく。

----


西園寺先輩からの返信だった。


「決まったみたいですね」

 また恒星くんの携帯が鳴った。

 電話のようで、そのまま恒星くんは自室に向かって行った。


 私は洗面台の扉を開けて鍵を締めて、扉の後ろに背をつけてもたれかかった。自分の携帯から恒星くん内のアプリ起動を確認し、内容を見る。


 電話の相手は西園寺先輩。


 いつも話していたのは、先輩?

 私が先程、設定したアプリからわかるのは、システム内の情報、テキスト。


 話している内容までは調べることはできない。

 やっぱり………思った通り、盗聴器は別に入れないと詳しいことはわからない。

 そのままお風呂に入った。


 お風呂から出て、携帯を再度見ると、


----

おやすみ、恒星。

----


 先輩からのメッセージが恒星くんの携帯に入っていたことを確認した。


 電話は終わったんだろうか。


 私がリビングに戻って、部屋に行こうとしたら、恒星くんがやってきて、顔を覗き込んだ。

「………何かありました?」と声をかけられた。


 私は驚いたが、何を言おうか、少し考えて、「………うん、実家に飼っていた猫が戻ってきて。周りに手伝ってもらって、お世話しているんだけど、そろそろ、うん、年だから、ね」と良くも悪くも取れるような内容を話した。


恒星くんは、「そうだったんですね」と微笑んで頷いてくれた。


「………うん。週末はお世話に行こうと思ってる」と私は言うと、「それは良いと思います」と恒星くんは返してくれた。

 そしてお互い「おやすみなさい」と言って、部屋に戻った。

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