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何がいけなかったのだろうか
名前は言えた
友達になりたくない?
う~~ん
それにしてもあの瞳、綺麗だったぁ〜
「帰ってきてから、あの調子なんです。お嬢さま」
「へぇ~枕もう使い物にならないくらいつぶれている。
どうしたらあんな中身の出かたするの?あれはもう捨てるしかないな」
「ぶつぶつと何か言ってるし、その場から動こうともしないんです」
待ち伏せ自己紹介が華麗にスルーされて、自室に戻ってきたものの
騎士服も脱がず、風呂へと促しても全く聞いてない上の空で、枕を力の限り握りつぶし
ソファーに横になって寝たり起きたりを繰り返すエマ
侍女フィンが、夜ご飯を食べに来たジルクモンドに状況を説明する
心ここにあらずなエマに、力で無理やりジルがソファーから起こす
「エマ!フィンが困ってる!!風呂に入ってこい!!!」
「ん?ジル??いつからいたの?」
「ずっと前からいたわ!!お前、任務俺に押し付けた後何してきたんだよ」
「テオ様の屋敷前で待ち伏せして、友達になりたいって言ってきた・・」
「ぶっ・・」
ソファーで足を組んで座る、ジルが噴き出すように笑う
「で?なんだって言われた」
「何も、無視されて終わった」
「だろうな・・」
面白そうだと思ったが、予想以上に面白い展開になっていることにジルクモンドは笑う
「ねぇジルは気になる人がいたらどうするの・・・?」
「…」
「そら、飲みに誘ってその流れで宿に行って愛を囁くのよ」
と正直な言葉を飲み込む
気になる=体の相性を知る
っていう庶民的な考えを伯爵令嬢に教えるわけにはいかない
そんなこと教えたら、叔父上に殺されるからな
「手紙書くとか、花とかのプレゼントをするとか?」
「ふーん、なるほど・・」
「伯爵令嬢として会ったんだろ?1番初めに
その後に騎士として会いにいったら相手にされるわけ無いだろ」
「へ?なんで?」
「逆で考えてみろよ、貴族を名乗るやつが農民の格好で来たらどう思う?変なやつって疑うだろ?」
「そうかな?顔が一緒ならそんなに疑わないけど」
「あのね、世間ではお前みたいに脳天気なやつばかりじゃないし伯爵令嬢が隠れて騎士にやってるなんてことないの
はっきり言ってその存在が常識から外れてんの、無視されてよかったわ
いきなり受け入れてきたら、その侯爵令息おかしなやつだもんよ」
え?私常識から外れた存在なの?というびっくり顔をするエマ
当たり前だろ、それに気づいてないってヤバいからなと
呆れた視線とうなづきを返すジルグモンド
「ほら、早く風呂入ってこい!」
しぶしぶと浴室に向かうエマの背を見送った後、
「どんなやつなんだろ、テオバルト、ロッソ」
ジルクモンドは楽しそうに笑いつぶやく
風呂上りにフィンによって身支度を整えたエマは、めったに向かうことのない机にむかい
何度も書き直しながら、手紙を書き始めるのだった