番外編 愛されたい元令嬢は恋を知る 1
平民街の薄暗い路地に一角に
男2人が女一人を壁に追い詰めるようにしている
「は~い!!そこまで」
王都騎士の灰色の制服を着た
短髪の深い茶色の頭がその現場を押さえる
「痛え!!」
男は騎士に手首を捻りあげられ苦痛に顔を歪める
「違う!!!俺じゃねーそっちの女だって!」
「え??なんだって?」
ひゅんとジルクモンドの頭を風が切る
女が回し蹴りをして、短剣をジルクモンドの頭をかすめる
男たちは女からの攻撃を受け、恐れた結果現場からいなくなっていた
ジルクモンドはその女からの攻撃を避けると壁に背をつける
女は黒い髪をボブのように短く切りそろえ
釣り目の緑の瞳を際立だせるように濃い目にラインを引き
簡素な服に身をつつむ、その女は
小さな体でジルクモンドを壁に楽しそうに追い詰める
「久しぶりね・・髪切った?」
「シャーロット嬢??」
壁に追い詰めただけでジルクモンドは自由だった
目の前の女が本当にあのシャーロットなのかと
疑いの目を向けるジルクモンド
そのくらい雰囲気や容姿が異なっていた
「あら?私を捕まえなくていいの?騎士様」
シャーロットが悪戯な表情を浮かべ
ぐいっとジルクモンドに寄る
「窃盗犯・・まさか女性の方だとは思わなかったよ」
ジルクモンドは窃盗犯を追ってここにきていたのだ
先ほどの男が犯人かと思ったが、シャーロットを追いかけてきただけで無実だったのだ。
実際に捕まえるべきは
この目の前にいる元令嬢だという事実に悩むジルクモンド
「ほら、捕まえたほうがいいんじゃないの?」
胸元にすった財布などをちらつかせるシャーロット
「なんで?こんなことしてるの?」
「生きるためよ」
シャーロットは家出して姿を消した
それにしても犯罪に手を染めるってどういった経緯があったのか、ジルクモンドは知りたいと思った
「ちょっとお時間ありますでしょうか?」
「ない」
「ノア!!!!さっさと行くよ!」
「はぁ~い」
シャーロットは仲間らしき声がした方向へと走っていく
ジルクモンドは止めない
「捕まえないの?」
「・・うん」
「ふーん」
シャーロットはジルクモンドのところに戻ってきた
「体を売ろうかなって思う時もあった・・だけど出来なかった」
シャーロットは背伸びをして
ジルクモンドの襟元を鷲掴みにし、荒々しいキスをした
「あんたの顔がちらつくからよ」
唇を離し、挑戦的な目つきでジルクモンドを見る
胸ポケットに紙を入れる
「そこに来て」
そう言い残してシャーロットは身軽に走って消えていった
「え???どういうこと?」
ジルクモンドはその場に呆然と立ち尽くしていた




