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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
完結編
65/71

60

テオバルトとシャーロットの婚約破棄後に

王族主催の多規模の夜会があった

父であるジョージ・クロスフォードが出席するということで

エマはお留守番を言いつけられている

テオバルトの婚約破棄によって色々な噂が流れていること

そのせいでエマが危害を加えられることのないようにとの

配慮だったが、エマは全く納得していなかったのだ

 


「お嬢様、本気ですか?」

「当たり前よ!本気の本気」

「旦那様に行かないようにと言われてますでしょ?」

「だって、じっと一人で家にいるなんて出来ないもん」


騎士服を着て城に忍び込もうとしているエマを止めようとするフィン


一度決めたら、それをやるまでやらないと気が済まない

頑固なこの令嬢を止めることはできないことはフィンもわかっていた


「わかりました。絶対危険なことと無理はしないでくださいよ

私は中まではお供できませんから」

「わかった!」


エマはフィンが手引きした使用人入り口から城に侵入した

テオバルトも父も母も出席するその夜会会場を目指し

エマは走った


会場内へは騎士服では入れない

入れるのは近衛騎士だけ

会場付近まできて、中が見えるところまできて

身をひそめようと、きょろきょろすると丁度いい場所を見つけた

振り返ると一人の背の低い令嬢とぶつかってしまった


「きゃっ!」

「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


エマは手を差し伸べようとすると

その令嬢は顔を赤くする


「え、エマ様っ・・・!!!」

「え?私のこと知ってるの?」


エマの手を取り、乱れたドレスの裾を直し

礼の挨拶をする令嬢


「先日は医務室まで運んでいただき、ありがとうございました」

「ああ!!あの時の!あれ?ここにいるってことは貴族?

でもあの時、王宮侍女の制服着てなかった?」

「ミズリー辺境伯の長女でエミリア・ミズリーと申します

城にて行儀見習いの侍女として働いてます」


地方貴族の娘が城で働くということは珍しくもない

エマが事情を説明して

王宮侍女である彼女からテオバルトやシャーロットのことについて

聞きたいと思っていると

シャーロットを含めた数名の令嬢たちが会場から出て

エマたちの近くまで迫っていた


「まずい!どこか隠れる場は・・」


エミリアがエマの袖を引っ張る


「それでしたら、こちらへ」


エミリアが綺麗に狩り揃えられた木の陰へと誘導してくれた


「ありがとう」

「いいえ、私エマ様のファンですから・・お役に立てて光栄です」


エミリアは頬を赤く染める


「ねぇ・・テオバルト・ロッソ様とシャーロット・ランスター様のこと知ってる?」

「ええ。婚約破棄されたとか・・」

「シャーロット様が悪く言われてるってホント?」

「以前からの派手な男関係を理由に振られたっていう話ですね

でも、テオバルト様も婚約者がいながら、宰相閣下の幻の令嬢に手を出していたって

綺麗な顔をしているけど、次の宰相の座を得るために令嬢に近づいているんじゃないかって

権力欲のかたまり腹黒って一部の人たちから大バッシング受けているみたいですよね」


エマは眉間にしわを寄せる


「あの令嬢たちの会話聞こえる場所ってある?」


シャーロットは数人の令嬢に囲まれていた

その雰囲気は決して好意的な感じではなかった


「こちらへどうぞ」


エミリアはシャーロットたちから見えないであろう位置へ的確に誘導してくれた


真っ赤なドレスを着ているシャーロットは

淡い色合いのドレスのエマが見知らぬ令嬢数名に囲まれていた


「よくそのような装いで参加できますのね、まるで娼婦だわ」

「で?要件とはなんですの?こんなところまで呼び出して・・」


扇子で口元を隠し、心の底から煩わしいというのを

隠すことなくシャーロットが本題を話すように令嬢に促す


「婚約破棄された令嬢が偉そうに・・」


もう1人の令嬢がぼそりとつぶやく

その言葉に扇子をぱちんと鳴らし閉じるシャーロット


「あなたが私の婚約者と一緒にいたことは分かっているのよ!」

「誰のことですの?ああ、あの金髪で女好きの?

成金をいいことに何かとお金をちらつかせるその男のことですの?

それとも・・似合わない髪型をした口元にほくろがある亜麻色の髪の方かしら?」


わざと煽るような口ぶりをしているのだろうか

くすっと意地悪く笑うシャーロットは令嬢たちの怒りに震える姿を

楽しそうに見つめる


「この淫乱女っ!!」


真ん中にいた女性がシャーロットに罵声を浴びさせても

しれっとして言葉を続けるシャーロット


「男をつなぎとめておけないのは、貴方達に魅力がないからではなくて?

わたくしから誘ったのではありませんわ、あちらから声をかけられただけのこと

わたくしを責める前に、今一度鏡を確認なさるべきでは・・?」



シャーロットは会場へと戻ろうとその場から離脱する

怒りに震えた令嬢は、給仕からグラスを受け取ると

その中身が入ったグラスをシャーロットめがけて投げる

エマはとっさにその場からシャーロットの前に走って飛び出していた


「シャーロット様!!」

「エマ様っ!?」


エミリアはエマの行動に驚き名を呼ぶ

後ろを向いていたシャーロットが振り向くと

騎士姿のエマの背中が見えた


「アマーリア様?」


グラスはエマにぶつかって割れて下に落ちる

入っていた酒がエマの制服を濡らす


「な、なにをなさるのです!」


突然飛び出してきたエマにびっくりしたのと

グラスを投げた令嬢に避難の声を上げるシャーロット


「その騎士もあなたの虜の一人なんでしょう!

いいわね、誰からも愛されるお姫様は騎士までもっているなんてね」


怒りが収まらない令嬢はエマの頭からさらに追加の酒を流す

エマはシャーロットの前に立ち、酒をかけられるのをそのまま受け入れている


「ちょっと!!何してるのよ!アマーリア様やめて!!」

「エマ様!!!!!!」


エミリアも駆けつけて

異様なその場はどよどよと周りの人達が注目をし始めていた


「私はシャーロット様の友人です

これ以上、シャーロット様を侮辱するような発言と行動は許せません

確かにシャーロット様は、あなた達を煽る発言をなさいました

でも、暴力はいけません」


酒で濡れたまま、令嬢たちの行為を淡々と非難するエマ

どんどんと注目を浴びて人が増えてきた

これ以上目立つのはまずいと考えたのだろう

令嬢たちは苦い顔をしたたまま

その場を後にした


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