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馬車が城の馬車専用口に到着した
一緒についてきたフィンが先に降りて、エマの手を取り
日傘をさして慎重に馬車の階段を下りる
迎えにでている門番の視線が痛い気がする
「お嬢さま、事前に宰相室へのアポは取っていますので
このまま向かいますが、大丈夫ですか?」
フィンが日傘を取り払い、転びかけた体を支える
最後の一段を慣れない靴で躓いて転びそうになる
門番が手を出そうとするが、貴族令嬢に触れるのは失礼にあたるので
さっと手を引いたのだろう
「ごめんなさい、大丈夫です、ありがとうございます」
扇子で口元を隠してお礼を言うと門番は顔を赤くしてうつむいた
日傘をさしなおし、宰相室へと2人は歩き出す
「え?ねぇ、フィン。このローブ暑いし靴も歩きにくいし脱いではダメ?」
「ダメです!今日は伯爵令嬢アマーリア・クロスフォードとしてきているんですから
そのイメージを守ってくださいね!!」
「勝手に噂が誇大になってるんじゃない?私儚げ病弱美人じゃないし」
「さっきは完璧でしたのに、あれは・・演技ではなく素でしたか・・」
慣れない靴でよろめいたことでふらつきのある病弱感
口元を隠すことで際立つ深窓の令嬢感に化粧映えする目元の演出
さりげないお礼を普通に門番にまで言うで優しい人!!
さっきの門番が顔を赤らめていたことで、より一層幻の伯爵令嬢は噂になるだろうなと
フィンはそれを天然でやるエマを見て深いため息をついた
執務室の扉の前には騎士が立ち
フィンが要件を伝えると中から中年男性が出てきた
「申し訳ありません、閣下のご令嬢にわざわざ来ていただくなんて」
「いえ、このたびは、父がご迷惑をおかけしていまい、大変申し訳ありません
私などでお役に立つのであれば、いつでもまいりますわ。これは、みなさま方でお召し上がりくださいませ」
手土産を渡し、書類を受け取って帰ろうとすると
疲れただろうからお茶を飲んでいけと個室へと通された
「早く帰りたいんだけど」
「仕方ありませんわ、お嬢さまは病弱設定、ここで急いで帰ったら怪しまれます」
「ローブが暑くて扇子で少し顔をあおいだだけで、なんでこうなるの?」
「汗が冷や汗にみえたんでしょうね」
小さな声でフィンとこそこそ話していると
静かに人が入ってきて、きれいなお茶の入ったカップが机に置かれる
「え???」
目の前の人物にくぎ付けになった
肩甲骨まであるストロベリーブロンドのさらさらな髪を後ろで一本に緩く編んで下し長いまつ毛の奥の切れ長の紫色の瞳
背が高く、かっちりとした肩幅はあるものの華奢な体
父と同じような長め羽織の宰相服だが、紺色が髪色との対比の色でとても綺麗な男の人
息をするのを忘れ、エマは言葉通り固まった
数分の満たないその時間、穴が開くくらいその目の前のお茶を運んできた人物を見つめていた
「お、男?あなた誰・・・・?」