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王宮のサロンにて上位貴族の令嬢たちが、王妃主催のお茶会が開催されていた
あたたかい日差しが入る大きな窓、窓を覆う
総レースのカーテン
テーブルや部屋内に飾られた花は王妃様の好きな
白とブルーで統一されている
華やかなドレスに身を包んだ令嬢と王妃
夜会とはまた違った女の園での着飾りは
みなとても気を遣っている
エマもシャーロットとともに参加し、他にも数人
年頃の令嬢たちが集まっていた
円卓で王妃を囲んで会話をしていると
ひとりの令嬢がエマに話しかける
「アマーリア様の先日連れていた男性はどなたですの?」
「あの方はこの宝石を買った縁で、公式な場に不慣れな私に
付き合ってくださったシェリフ様ですわ」
エマがこの前シャーロットとともに買ったネックレスを令嬢に見せる
「え?あの最近話題の商人の?やっぱり素敵ね・・」
「私も一緒でしたのよ、これもシェリフ商会の品ですわ」
シャーロッドは耳飾りを見せるように触れる
貴族の噂というのは広まるのが早い
今まで貴族の集まりに決して姿を現さなかった
幻の伯爵令嬢と呼ばれるエマが男性を連れて来ていたことは
もっぱらの噂の的であり、どういった関係かまで話が広がっていることは
シャーロットの耳にも入っていた
シャーロットは自分も一緒だったため
エマだけがアズールと親しいわけではないと主張した
そんな感じで大きな何があるわけではなく
サロンは無事に終了し、シャーロットと一緒に
部屋を出たエマ
「あ~疲れた」
「まだ早いわよ・・」
「え?」
ピカピカに磨がかれた床にコツコツと靴音が響く
向こう側から黒の騎士服を着た若い男性が2人こちらに向かって歩いてきた
エマはさっと廊下の端により、頭を軽く下げ道を譲る
黒服・・軍の人だ・・
エマは、その黒い騎士服から軍人だと思い、ちらっと見ただけだが
隣のシャーロットは顔を上げて冷たい表情をしていた
騎士たちが通りすぎる
「後で話がある」
黒い髪の騎士が通りすがりにそう言って去っていった
「え?」
「兄よ、私に言ったのね・・」
「お兄さん?」
「そう」
「あっちの執務塔までいってみたら?道は分かるわよね?」
「あ、うん」
「私は帰るわ、これから良くないことありそうだから」
「はい」
シャーロットはエマと分かれて、馬車が待つ方向へと向かった
エマは声をかけられなかった
兄弟間の問題だろうけど、シャーロットの雰囲気が
いつもと違う
別な道を行くように言われたことから
これ以上は踏み込まないでと
ついてこないでと言われたも同然だろう
友達と思うのは自分だけなのかと、エマは寂しさを感じていた
執務塔へと迷うことなくついたエマはこっそりと
テオバルトのことを見ることにした
執務室へはそもそも用事がない限り簡単には入れない
部屋の中も見ることは出来ないのだが
偶然テオバルトとリントが部屋からでてきた
テオバルトの働いている姿を見るのはこれが初めてだった
いつもの顔ではない仕事の顔、それが少しでも見れただけでエマは嬉しかった
馬車乗り場へと着いたシャーロットは
兄がいることに気づいて、ため息をつく
「何用ですの?お兄様」
「お前が遊びまくってるから、婚約者に愛想つかれたんだろ?」
「いいえ、婚約者とは順調です。そんな話なら待ち伏せなんてしないでくださる?」
馬車に乗り込もうとすると、シャーロットの前に兄は出る
シャーロットと同じ黒い髪、冷たい目が黒い騎士服でより印象を重くする
「お前の使い道は有力貴族に嫁ぐしかないんだから、父を怒らせるなよ。できそこない」
それだけ言って兄は去っていった
「何なのよ、あのファザコン・・」
イライラを隠すことなく去っていく
兄を睨みつけるシャーロットだった
「お!シャーロット様!」
どこからともなくラフな格好をしたジルクモンドが
空気を読まない登場をし、シャーロットに声をかける
「今話しかけないで」
「すみません」
「なんであなたがここにいるのよ?」
「用事があったからです」
「そう」
それだけ言ってシャーロットは馬車に乗り込んだ
なぜか後ろから、ジルクモンドも乗りこんでくる
「何してんのよ!あんた!!」
「お屋敷に行くんでしょ?俺もそっちに用事あるから乗せてってよ」
「はあ?クロスフォード家の馬車使えばいいでしょ?」
「いや、今出るならついでに乗せていってよ」
シャーロットは仕方なくジルクモンドも一緒に乗せた
屋敷までは数分の距離だ
ジルクモンドもシャーロットもお互いに無言だった
屋敷に馬車が止まる
「ありがとうございました」
ジルクモンドはお礼を言う
シャーロットは腕を組みため息をつく
「さっきの、見てたんでしょう?兄とのやり取り
それで心配でもしたってこと?」
「なんのこと?俺あっちだから、じゃあね」
ジルクモンドは手を挙げて消えていった
「一体なんなのよ・・意味わかんない・・
本当になんでもないただの通りすがりだってこと?」
シャーロットは屋敷の中へと戻っていった




