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オレンジ色の淡い色のグラデーションの
エマのスレンダーな体系に合わせた
下に行くにつれて裾が広がるマーメードタイプで
いつもより少し大人っぱいデザインのドレスを着て
これから行くパーティーの最終支度をするエマ
「へーずいぶん令嬢スタイルも様になってきたな」
「あら、このドレスも素敵ねエマ。似合っているわよ」
ジルクモンドが母と一緒に見に来た
「ありがとう」
「今日はアズールと行くんだろ?」
「そう」
「その方は、エマとどういう関係なの?」
母リリーはジルクモンドに聞く
「お友達だってよ」
「大丈夫なの?社交界で噂になったりしない?その方がエマの好きな人じゃないんでしょう?」
「アズールはエマが好きみたいだよ」
「え??何それ三角関係ってこと??やるぅ~!」
母とジルが盛り上がっている
「ジル!ちょっとあなたも行ってきなさい!」
「えー」
「ほら早く支度して来て」
母は完全に面白がっている
この場に父がいなくてよかったとエマは心から思った
王都貴族風のジャケットにネクタイ姿
白を基調にした金と紺をさし色にしてセンスがいいしその装いが大変似合っている
アズールが迎えにきた
「今日も大変俺綺麗です。アマーリア・クロスフォード嬢」
アズールはエマの手の甲に軽く口づけをした後
母リリーにも挨拶をする
「お母さま?とてもお綺麗ですね。シェリフ・アッダと申します」
アズールは母リリーの手にもキスをした
「とても素敵な人じゃないの!!」
リリーは、エマの肩をバシバシと叩く
本当に父がこの場にいないということを心からよかったと思うエマだった
「いってきます」
「楽しんできてね!」
ジルクモンドは後から行くということで母に手を振り見送られ
エマはアズールの腕に手をまわし、エスコートされながら会場へと向かった
会場は広めなホールで開かれている
主催は特になく、貴族の定例顔合わせ会であり
もうすでに何組かは会場入りしていた
アズールのエスコートで歩いていると次々と視線が刺さる
「幻のご令嬢じゃない?宰相の娘さんよね?あの方」
「あら、お連れの方誰かしら?婚約者はいなかったはずよね?」
「素敵ね、お似合いだわ」
「幻のご令嬢が出席してる?」
「あれが?クロスフォード嬢?」
「え?綺麗な人だね、隣の男誰?」
「すごっ!!幻の令嬢初めて見た!!」
会場の雰囲気にあてられたエマは、バルコニーで隠れるようにして休んでいた
飲み物をアズールが持ってきてくれたのを受け取る
「大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫」
アズールが外の空気を吸っているエマの肩とトントンと叩く
「ほら、来たよ。君の想い人」
アズールに見てと言われた方向を見ると
テオバルトとシャーロッドの姿があった
「俺たちも戻るか」
腕を組むようにエスコートして、会場へと戻った
エマはいつもの元気いっぱいなエマではなく
しおらしく2人の前にアズールとともに挨拶した
「ごきげんよう、テオバルト・ロッソ侯爵令息にシャーロッド・ランスター伯爵令嬢」
「ごきげんよう、いらしていたのですね、アマーリア様」
テオバルトの腕につかまっているシャーロットが挨拶を返す
エマがテオバルトを見るとなぜか視線をそらされる
「シャリフ・アッダ・アズールです。今日はアマーリア様とご一緒させていただいてます」
テオバルトはやはり目を合わせない
そのことに、もやもやとした気持ちになるエマ
なんで目をそらすの?
私何か変だった??
エマはアズールから離れて、庭にでた
会場内の音楽や人の声がわずかに聞こえる
庭には立派な噴水があり、その噴水のふちに腰掛ける
水音が心地よい、少し水しぶきがかかるが気にしなかった
珍獣を見るかのような視線にひそひそ声
それに、令嬢を取り繕うのにエマは疲れていた
「隣いいですか?」
テオバルトがエマの隣に座った
誰もいない
2人だけなのに、しばし無言になった
テオバルトが口を開く
「怒ってますか?」
「私が?いいえ怒ってません」
エマは首を横にふる、怒ってなどいなかった
でもなんともいえないぐちゃぐちゃな感情が渦巻いていた
「あの人が好きなんですか?」
エマは顔をあげてテオバルトを見る
その顔は悲しさを表していた
「なんでそんなこと言うんですか?私が好きなのはテオバルト様なのに」
今にも泣きだしそうなその顔にテオバルトはうろたえる
「すみません、そんな顔をさせたいわけじゃなかったんですが・・」
「私はやっぱり貴族社会でうまく立ち回ることは苦手です、シャーロット様のようには出来ない
だけど、テオバルト様の世界に私もいたいって思ったから。シャーロッド様が羨ましい・・
知らない誰かに言われたって・・・うれしくないし私はテオバルト様に綺麗って言ってもらいたい!」
一気に話し出すエマは感情がぐちゃぐちゃであり
そんな自分を爆発させてテオバルトにぶつけるように話しをしたことを恥じていた
それを見られたくないのに、聞いてもらいたいなんて矛盾した気持ち
恥ずかしさと後悔を隠すように、手で顔を隠すエマ
「ごめんなさい、すみません」
エマの手を取るテオバルト
「私は、アマーリア様の隣に自分以外の男がいるのが嫌でしたよ」
「え?」
エマは立ち上がっていた、噴水に腰掛けるテオバルトに向き合う
エマの両手はテオバルトはそっと優しく握っている
「同じです、アマーリア様と一緒でぐちゃぐちゃな気持ちです…この気持ちは何と言うのでしょうね」
テオバルトは目を伏せる、長いまつ毛が美しい
「今日の貴女はとても綺麗です」
テオバルトは、顔をあげて
まっすぐにエマを見た
エマは心臓がドキドキと早鐘を打つように鳴り響き
耳の後ろまでその鼓動がうるさかった
一番欲しかった言葉、アズールに言われても
貴族らに言われてもこんなにドキドキすることはない
テオバルトに見つめられ、綺麗と言われることがこんなにも
嬉しいものなのかと、自然と笑顔になった
そのエマの顔は、とても美しかった




