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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
令嬢見習い編
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街中で騎士服を着て、2人の女騎士を両脇に連れて

エマが並んであるいているところを

馬車上から見つけたテオバルトは、その様子をぼーっと眺めていた


一緒に馬車に同乗しているのは、キリアンから派遣された

リント・エッセンマーカーだった

テオバルトは、少しだけ柔らかく表情を崩している

いつも無表情の機会みたいな人間が、そんな表情になる視線の先には

何があるんだろうとリントが興味を持って外を見ていると

テオバルトが自分のほうをを向いていた

何も悪いことはしていないのに、ドキリと心臓が跳ねるリント・エッセンマーカー


「テオバルト様、何かありましたか?」

「なんでもありません」


先ほどの表情とは一変して、空気が張りつめるような

無表情に少しぴりっとしたスパイスが追加されたような空気をリントは感じていた

自分が知らないうちにテオバルトが気を触れるような何かを

してしまったのではないかと思ったが

どうも違うようだった


馬車を降りて、貴族の屋敷に用事を済ませると

遠くに灰色の制服を着た女性騎士たちが大き目な荷物を抱えて歩いているのが見える

そこには褐色の肌の派手な男前も一緒にいて、彼女らの荷物を持ってあげていた

その様子をテオバルトは見ていた

あの仕事の鬼が立ち止まってじっとみるほどの何かがあったのか

リントにはわからなかったが、それから馬車に乗り

執務室へ戻ってからもテオバルトはどことなくイライラしているような

空気を放っていた



テオバルトは自身の机に視線を落としている

書類を手にしているが、頭では全く違うことを考えていた

エマがアズールと一緒にいて楽しそうに笑っているその光景を目にしてから

テオバルトはシャーロッドの言っていた言葉を思い出す


”ライバルにとられますわよ”


そしてジルクモンドの言葉も思い出す


”好きなんでしょ?ちゅーしてたのに?”


紙をくしゃっと握りつぶす

リントら同僚はその様子を「あーあ」と思ったが

口に出すことはせず、そのテオバルトらしくない行動を

興味深く静かにみていた


テオバルトは気づいてしまった。自分の気持ちに

馬車でエマにキスをしたのは、慰めるためじゃない

自分がエマのファーストキスの相手という記憶になって欲しかったから

あのエマの笑顔を向ける相手は自分であってほしい

エマが並んで歩いて、他の男に照れる姿なんてみたくなかった

これは・・嫉妬??


テオバルトはクスクスと笑いだす

笑いは止まらずに机に顔を伏せた


その光景を執務室のみんなはどよどよして見ていた


テオバルトが壊れた

笑っている


テオバルトはシャーロッドに手紙を書いた


”至急話したいことがあるため、時間が欲しい”


笑い壊れた後に、未だかつて見たことない優しい顔をしたテオバルトは

その場にいたみんなの視線を独り占め状態だった

顔を赤くしている者も多数

胸を押さえている者も惚けている者もいる

そんな、執務室みんなの動揺を1ミリも気にすることなく

テオバルトは、エマへの気持ちを認識していった


「好きってこういう事なのか・・?」





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