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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
令嬢見習い編
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午後の日差しが気持ちよく入る部屋で

シャーロットから指導を受けているエマは

ぷるぷると震えながら、ドレスの裾をつまんでお辞儀の練習をしていた


「違う!頭は下げない、足はこう!」


コルセットをつけるドレスはとても苦しく

その上で座ったりお辞儀をしたりするのは慣れていないと

不格好になってしまう


「え~無理です・・」


頭を上げてそのポーズをとろうとするもどうしても

姿勢が定まらずに不格好になるエマを直そうと腰や足の位置を直すシャーロッド


「無理じゃない!こうよ。よく見てて」


シャーロッドのお辞儀は大変美しい

流れるようにお辞儀をする姿勢が綺麗だ


「綺麗・・」

「当たり前です!なんで剣を振れる筋力と運動神経があるのにそうなってしまうの?」


腕組してエマの姿勢について考えだすシャーロッド


「次はダンスね」


シャーロッド付き執事のリッツは、休憩用のお茶を用意していた

そのテーブルについてしばし休憩をとることになった


「あぁ・・こんなに難しいとは。ちゃんと令嬢教育受けておくんだった」

「あなた、テオバルト様と結婚したら侯爵家に入るのよ?これくらいできないと馬鹿にされるわよ」

「けっ結婚??」


エマはお茶をこぼした

リッツがハンカチを差し出し、こぼれたお茶を拭いてくれる


「あら、そうでしょう?

テオバルト様が好きだから、そうなる未来を考えて頑張ってみようと思ったんじゃなくて?」

「まぁ、そうですけど。結婚とかは考えてなかったかな・・」


貴族令嬢なら結婚がすべてだ

結婚が本人の意思で出来るものじゃないのが普通で

家と家の繋がり、道具でしかない世の中でエマのような考えを持つものはいない

シャーロッドも、もちろん結婚に夢を見たことはない


「あなたは幸せね」


シャーロッドは、憂いを含んだような

エマの置かれている幸せな状況に嫉妬するような複雑な感情が

その一言に表現されていた


「さて、ダンスの練習するわよ」


シャーロッドが立ち上がった


「失礼いたします」


部屋に入ってきたのは、シェリフ。アッダ・アズールだった


「宝石の調整の件できたのですが・・」

「あら、シェリフ殿はダンスお得意ですか?」

「まぁ、人並みには出来ますが」

「あら、ちょうど良かった!では、そこのアマーリア様に教えて差し上げて?」


アズールはエマの手を取り、腰に手をまわす


ダンスとはこんなにも密着して踊るものなのかとエマは思う

男役で踊ることはあっても相手はいつも可愛い女の子で

自分が女側で踊るダンスはほぼ未経験だった


アズールはうまくリードをしてくれて

躓いたり、足を踏んだりすることもなく1曲踊ることができた


「ありがとうございました」


エマは深くお辞儀をするとアズールは微笑む


本来の目的である

宝石の調整を終えて帰ろうとすると、エマがアズールを引き留める


「あの、これからお時間はありますか?」


まさかエマのほうから声をかけてくるとは全く思っていなかった

アズールはエマに小さなメモを渡した


「ここでお会いしましょう」


メモには宿屋兼飲み屋の名前が書いてあった



エマはドレスを脱ぎ、平民の男性服へと着替えて

アズールのメモの場所へと向かった


1階が酒場になり、2階が宿となっている

小さな王都外れのところだった


「いらっしゃいませ、泊りかい?」


小さな背でたっぷりとした体格のいかにも宿屋の女将という女性が迎え出る


「いや、待ち合わせです」

「こちらへどうぞ」


エマは、促された席へと腰掛ける

エマのほかに1組が食事をしていた


「すみません、お待たせしました」


現れたアズールは今日はアズールの民族衣装ではなく、

貴族のような装いのジャケット姿だった


「あなたは何者ですか?王族?商人?なぜ私を知っているんですか?」


日が沈みかけてきた

でもまだ外は暑い、ジャケットは風を通さない

うっすらとにじんだ額の汗を手でぬぐうアズール


「それは、ここでは話せませんね」

「では、どこでならいいのですか?」

「私の部屋へどうぞ」


2階の部屋へと移動する

部屋はとても狭く、貴族やまして王族が寝泊まりするような部屋ではなかった


ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外すアズール

木製の椅子に座るように促されたエマは素直に座る


「あのさ・・警戒心とかないわけ?」

「ありますよ、こうして距離とってるし、いざとなったらあなたを殴って逃げます」


エマは自身の後ろの扉を指さす


「っはは」


アズールはベッドに座り、笑う


「あのね、ご令嬢。教えてあげるよ」


アズールはシャツがはだけてちらっと見える

褐色でたくましい胸が大変、色っぽい姿でエマに近づく


「男の部屋に一人で来てはいけないよ」


金の瞳が光る

腕を掴んで、ぎゅっと抱きしめると何をするとエマがもがく

エマをすっと抱き上げてベットに横たえる


「ほら、あなたなんて簡単に身動きとれなくなる」


アズールはエマから身を離した

手を添えて起こそうとするとエマは一人で起き上がる


「まあ今すぐ同どうこうするつもりはないから安心して」


エマはじっとアズールを見る


「からかわないでください」

「で?あなたが知りたいこととは?」

「なぜ王族のあなたが商人をやってるんですか?」

「第8王子だから、商人は生きていくために」

「なんで、私の名前を知っているのですか?」

「キリアンで一目ぼれしたから、調べた」

「なんであの時キスしたんですか」

「したかったから」


尋問のように直球で聞くエマ

わざわざそんなことを聞きたいために部屋まできたのか

ほんと読めない女だとアズールは思った


「それだけ?」

「まぁ、はい」

「俺、あんたが好きって言ってるんだけど」

「はい、ごめんなさい」

「即答で振るのか!」

「私も好きな人がいるので」

「ふーん」


アズールは酒をエマに勧める

エマはそれを飲む


「飲むのか!ほんと警戒心ない女だな」

「え?何かまずいですか?」


アズールはため息をつく


男の部屋にひとり

それも好きだという男が進める酒を飲む

つい先ほど押し倒されたことは忘れたのか?

警戒心のなさすぎるエマの行動に呆れるアズール


「あんた、ほんとにわかんなくて面白いな」


エマとアズールはそこから飲み明かし

色々と話をしていくなかで打ち解け

仲良くなっていった





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