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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
キリアン出張編
40/71

37

領主席は見晴らしの良い高台に設置され、騎士たちの活躍が見えるところにいる

そこで領主はウキウキしながら騎士たちを見ていた


「いいねぇ・・今年の盛り上がりは最高だね」

「あなたのせいでしょうが・・」


執事のコンラットは腕組をして立ったまま様子を見ている領主にため息をつく


「あれさ、先頭集団にいるの先輩の愛娘じゃない?」

「領主、あの女の子知り合いですか?」


ハリセントは側にいたコンラットに話していたが、違う人物から返事が返ってきた

領主が振り向くと、後ろに整った顔立ちの褐色の肌に

祭り用なのか全身白い服をきた

金髪金目の筋肉質な青年が立っていた

頭には、おしゃれに白の布を巻いている


「これは、シェリフ・アッダ・アズ―ル殿下」


領主は胸に手を当て、頭を下げて礼のポーズをとり、一歩引いて席を青年に譲る


「いやいや、辞めてくださいよ。殿下はいらないって言ってるでしょう」


ポンと領主の隣に並び肩を叩くアズール


「それで、あの先頭の女の子は知り合いですか?」

「知り合いではないですが、もしかしたら知っているかもですね」

「へーいいね、あの子とても面白い・・」


コンラットは2人の会話が誰をさしているのか分からなかった

あの騎士の中に女の子がいると二人は通じ合って話しているが

山のような壁をよじ登って上いるメンバーの中に女の子いる??

そもそもこの距離があるところからよく見えるな

コンラットはその騎士たちを改めて見てみたが

やっぱりわからなかった


「それで領主、巫女はご覧になりました?」

「まだ見てないんですよね」

「お探しの方・・いましたよ。その中に」

「え??アイリスが?」


アズールはにこりと微笑む


「それでは、そっちに向かわなきゃ」


領主ハリセントは急いで巫女がいる神社へと向かって走っていった

シェリフ・アッダ・アズールはその場に残り、エマを見つめて

楽しそうにしているのだった




巫女たちは騎士が来るのを日陰になっている場所で待つ

テオバルトの美しさにみんながざわざわしてる

巫女席と一般観客席からは距離がある

一般席からの歓声と巫女たちからの視線にテオバルトは疲れてきていた

扇子で顔を隠し気味にして伏し目がちになる

憂いのあるその表情もまた見るものを魅了する罪な美しさだった


黒い長い髪を結わずに赤で統一された花冠を被った

赤いドレスを着た、童顔の女性がテオバルトに声をかける


「あなた、旦那様の何なの?」

「・・・旦那様って誰ですか?」

「ハリセント・イルムラよ」

「何でもありません」

「あなた・・とっても美しいけど男よね?ついに男まで・・」


顔を青くしたかと思うとイライラを全面に出した顔をする

テオバルトは冷静に表情がよく変わる人だなと

扇子で口元を隠したままその百面相を眺めていた


「あなたには負けるかもしれないけど、負けないわっ!私の旦那様ですもの」

「え????奥方様?」

「そうよ!!ハリセント・イルムラは私の旦那様よ!!」


がたっと椅子から立ち上がるアイリス

それを冷静に表情を変えることなく座ったままのテオバルト

そこに汗をかきながら全力で走ってきたハリセント


「アイリス!!!」


アイリスは反射的に体をかがめて他の巫女たちの後ろに隠れた


「なんで隠れるんですか?」


テオバルトが後ろにいるアイリスに問う


「みつかりたくないからに決まってるでしょ」


巫女席に来た領主を観客席からどよどよとした空気が流れる

まだ領主がここに来る時間ではない

それも必死な様子で妻を探す領主をみんなが何事かと見ていた


テオバルトの前に領主が来る

その隠れ切っていなかった赤いドレスと

長い黒い髪をみつけたハリセントは手を伸ばす


「ごめん。アイリス、出てきてくれないか?」


少し間をおいてアイリスがハリセントの手を取る


「まだ許してないんだから・・」


ハリセントがアイリスを引き寄せて腕の中にすっぽりと収めて

ぎゅっと抱きしめる


「ごめん、ほんとにごめん」


その様子を見ておぉ~と歓声が上がる


「許してないわよ、でもあなたを愛してる」


アイリスのほうからハリセントの顔をホールドし

背伸びをしてハリセントにキスをする


より大きな歓声と拍手が周りから起こる


目の前で夫婦がいちゃいちゃするのを見せつけられ

暑い中にドレスを着てじっとしなければならないテオバルトは

いつもの涼しい無表情でその行く末を見守っていた

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