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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
キリアン出張編
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28

女装姿のテオバルトの腕に手をまわし、隣に座りデレデレとするエマ

「テオバルト様、好きっ!!ローデルさん天才」


ベールを上げて顔を出すと、化粧をしたテオバルトは本当に美しいお嬢さんにしか見えない

エマは先ほどからテオバルトにくっついて離れない

うっとうしさを感じつつも無理に払いのけることはしないテオバルトだった


「どういうことなんですか?これはジルクモンド」

「まぁ、そんな顔するなよ。美人が台無しだって・・」

「ジルクモンド!!」

「俺らは、今日からこの家の子だ」

「はぁ?」

「星の巫女祭りに参加する!!」

「そちらのお嬢さんもちょっとこっちに来てみな」


エマは渋々テオバルトの側を離れ、ローデルが呼ぶほうへと向かった


「で?星の巫女祭りとは?この格好の意味は?」

「キリアンのNO1美女を決めるお祭り。これの優勝狙います」


ポスターをテオバルトの前に出すジルクモンド

その募集要項に巫女は10代~40代女性とそれに伴った男性ペアと書いてある


「ローデルさん、さすがだわ。いくらテオバルト様が美人でも

ここまでの出来にするなんて・・これは優勝間違いない・・」

「私は出ませんよ」

「いやいや、テオバルト様は出るって言うと思うけどなぁ~」

「出ません」

「今回の出張はキリアンの情勢を見るためですよね」

「そうですね」

「どうやって調べるつもり?行政館で捕まって、伝手もないんでしょう」

「・・」

「俺は会いましたよ、リント・エッセンマーカーに。

そしたら領主にあなたを合わせる気はないって言われました」

「は?うそでしょう?」

「ほら、謝罪文」


ジルクモンドは巻いて紐で止められた1枚の紙をテオバルトに差し出す


「先日は大変失礼いたしました、このたびの不祥事はすべて

私リントエッセンマーカーが責任を持ち、処分を受けます

あなた様を領主に近づけないために我々は全力を持って闘います・・ってこれ全然謝罪文じゃないじゃないですか!!!謝罪どころか宣戦布告書です!!!」

「つまり、星の巫女祭りってのが今回の騒動のメインってわけよ。

これは参加するしかないでしょうお仕事のため・・それが最善の方法だと思うけどなぁ」

「意味がわからない・・これ巫女は女性で募集してるじゃないですか」

「巫女になれば、領主に一番近いところで会えるんだけどなぁ、誰もその恰好のテオバルト様を男性とは思わないですよ。完璧」


ジルクモンドは親指でぐっとを意味するようにサインをし、楽しそうに色々と吹き込んでいた

テオバルトは怪訝そうな顔をして全く納得いってない様子だった

その時、エマがキリアン伝統衣装を着てローデルと一緒に出てきた


「みてぇ~これ可愛い!」


頭にはシャラシャラと音が鳴る宝石がつけられた飾りがついている四角い帽子を被り

タンクトップの裾は短めでおへそが出ている

ひらひらとした赤いマントのような長い布が後ろから数枚の布で床すれすれについている

たっぷりとしたズボンはサルエル型で帽子と同じようなシャラシャラと揺れる宝石が縫い付けてある

横には大きなスリットが入っていていて太ももがちらりと見える

歩くたびに揺れて音がなり、濃いめにした化粧がいつものエマではなく綺麗な女性がそこにいた


テオバルトは無言でその姿を見つめる

ジルクモンドは「おー可愛い」と褒めていた


「叔父上に見せてあげたいわ・・すげー喜ぶだろうに」


あっ、そうだと自身のかばんからごそごそと取り出したジルクモンドはパシャりとエマのその姿を映す


「何それ?」

「これ預かってきたんだった、ほらエマの姿がここに映るだろう?」

「うわっナニコレ?すごい」


きゃぴきゃぴとするエマとジルクモンドにテオバルトはため息をつく


「巫女は、そちらのアマーリア様が適任ではないですか?」


ジルクモンドは頭を横に振る


「ダメダメ!エマがこんな格好でみんなの前に出たなんて知られたら、叔父上になんていわれるか

あなたもどうなるかわかんないよ?いいの?それで」


テオバルトはぞわっとした

そうだった、このお嬢さまはあの宰相閣下の溺愛する娘

男装をするようにとまで言っているのにこんな露出の多い服で祭りで出たなんて知られたら・・

あのなんだかわからない姿を写している水晶玉にたいなやつで

証拠も残るじゃないか…そんなこと知られたら…

王すらも恐れるその冷淡ぶりな鬼の宰相姿がテオバルトの脳裏に浮かぶ


「ジルクモンド、何か隠してますね?私の任務に協力する風にして何か・・

おもろがっているだけじゃないような気もするんですが」


ぎくりとわかりやすく顔に出すジルクモンド

女装姿のままのテオバルトと綺麗な格好をして、はしゃいでいるエマは

ジルの持っていた水晶のようなカメラでテオバルトとジルを写す


「ねぇ、ジル!テオバルト様と一緒に映して!!」

「お、おう」


着替えをしたローデルは疲れたとお茶を飲んで3人がワイワイしている

しばらくその撮影会は続いていた






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