番外編 エマとテオの夜
本日の宿へとエマを担いで戻ってきたジルクモンドはベッドにたどり着くと
どさっと眠っているエマを下ろす
「くっそ、重い!!」
眠っている人間は重いものだ
3階の部屋であり、ここまで階段と人間を背負ってきたジルクモンドはエマを下ろしたベッドのふちに
腰を下ろして前髪をかきあげた
閉めたばかりの扉がぱっと開く
少し汗をかいたジルクモンドが前髪を上げると
全身黒づくめの衣装に目元しか見えない、口元まで黒い布で覆ったいかにも怪しい男が
軽々とテオバルトをお姫様抱っこをして現れた
「え?誰??」
「そこを開けてください」
ジルクモンドがさっと立ち上がりよけると
先ほどのジルクモンドがエマを下ろしたとは全く違い、そっと優しくテオバルトをベッドに横にする
「いや、あっちの部屋行けばいいんでないの?」
一人用のベッドに大人二人は狭いし、元々テオバルトの部屋予定はあっちで
ここはジルクモンドとエマの部屋の予定だった
「あっちはダメです、3階とはいえ人が入ってこれる。今日はこちらでお願います」
「てか、あんた誰よ?そんなテオバルト様より小柄なのになんでそんな簡単に運んでいるのよ」
「影です、今日は非常事態です。ではこれで」
「いやいやいや、もう俺運べないって、どうすんのこれ」
一瞬で影はもうその場にはいなかった
「人間なのあれ?」
年頃の男女二人が狭いベッド
いいのか?これ
どっちもぐっすり寝ているけどさ
テオバルト様はなんかうなされてないか?顔色も悪いし
エマは、酒くさっ
「まぁ、大丈夫だろう」
ジルクモンドはあきらめた
考えるのももう一度エマを運ぶのも、テオバルトを動かすことも
「・・寝よう」
ジルクモンドは2人を残して元々テオバルトの部屋だったところへいった
テオバルトは目を覚ました
狭いベッドで起き上がろうとすると、エマの存在に気づいてびくっとした
「な?なんで?」
すーすと寝息を立て眠っているエマを揺らす
「起きてください!!」
ゆすっても声をかけても起きない
テオバルトは影を呼ぶも、姿を現すことなくそのまま眠れという
寝れるわけないだろうと抗議しても全く来ないため、ベッドから出ようとすると手くびを掴まれる
「わっ!!」
ぐっと引っ張られたため体制を崩し、左手をエマの頭に手をついて覆いかぶさる
顔が至近距離にある。エマは目を開けていた
「好きです、テオバルト様」
息がかかるくらい顔が近い、ものすごく酒くさい
手首を離したと思ったら、首に手が回りエマが抱き着いてきた
「ちょっと、離してくださいっ」
エマはテオバルトを離さない、今度は押し倒され
エマがテオバルトのに覆いかぶさる体制になる
茶色の目が紫色の目をあやしい光を放ち捕らえる
息が耳にかかる、額をなぞるように触るか触らないかで
動く手つき
身の危険を感じて身体をこわばらせるテオバルト
すると、胸の上にこてんと倒れるエマ
「ぐー」
「寝てる・・」
エマは再び眠りについた
エマはテオバルトの服をぎゅっと握り離れてくれない
非力なテオバルトはエマを離すことも抱えて運ぶことも出来ない
テオバルトはあきらめた
眠れるわけないと思っていた
誘拐された時のこと思い出すと体が震える
隣にはのんきに寝ている酔っ払い
狭いそのベットでは離れようとしても人のぬくもりが伝わる
冷えを感じてもそのエマのぬくもりが安心感を与えてくれた
自然と眠気がテオバルトに近づいてきている
こうして2人は一緒のベッドで眠り朝を迎えるのであった




