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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
キリアン出張編
22/71

20

簡易的な箱で机にしたこじんまりと席や長テーブルの木の机で数人の男女が酒を飲んでいる

がやがやとしたにぎやかさは王都の酒場とさほど変わらない

しかし、町の住民らしき人も旅人や商人らしい人などたくさんの人がいるのは中継の町の特徴であろう

それゆえに、情報収集にはぴったりの場所に間違いはない

エマやジルはこういった雰囲気になじむのはお手のもんだが、根っからのお貴族様のテオバルトは違う

珍しい髪色は目立つし、その容姿も浮く、態度も目立つ

隠すために深く被ったフード、いつもの食事とは違うメニューに戸惑う

それに人づきあいも下手だった


「これ、うまいね。なんていう料理?」

「デルタ!今日鹿が入ったからそれを使ってんだ」

「へー、初めて食べるけどうまいね」

「鹿?鹿を食べる・・?」

「なんだ兄ちゃん、鹿食べたことないの?都会の人か?じゃぁこれも食べてみろ」

「どうも」

「うわぁー!!」


ジルクモンドがうまく町の人たちと打ち解けようとしているが、テオバルトが余計な一言を言うから

テオバルトに見えないところでぎゅっと腕をつままれる


「あらーお兄さんたち。男だけなんてつまらないだろう?

こっち来ないかい?それか一緒してもいいかしら?」


胸元がはだけた魅惑的な飲み屋の女性らしき人がエマの腕にからまってくる

もう一人の女性はボディライン丸わかりのぴちぴちにタイトなミニワンピでテオバルトにすり寄る

「いや・・結構です」

「お兄さん、めっちゃきれいな目をしてるね」

至近距離でぐいぐいと近づくその女を強めに離そうとするテオバルト

エマが腕を絡んできた女性を連れたまま、するりとその女の前に立つ

「ごめんね、そいつ女嫌いなんだわ、俺が相手ではダメ?美しい人・・」

エマは女性の手をとり優しく口づける

きゃあと手を引っ込めるテオバルトを誘惑した女性、腕にからんだままの女性も私もと手を出す

「もちろん・・では2人も少し俺に付き合ってもらいましょう」

エマはジルとテオバルトのほうを見てウインクをして女性2人を連れてカウンターのある席へと行った


「あんたさ、宿に帰りなよ。ほしい情報はくれてやるからさ」

「ごめんなさい」

「こんな情報収集とかやったことないんだろ?この分の働きは、叔父上に請求するから気にするなって」

「不甲斐ない、ほんとうに・・」

「目立たないように静かにしていてよ、俺はあっちにいってくるから」

「はい・・」


テオバルトは一人テーブルに取り残された

エマは女性相手に酒を飲んでいるようだし、ジルクモンドは商人らしき人たちのところに行った

2人が戻ってくるまで、気配を消すことに徹底していたテオバルト


これが数分前の出来事


「なあ、邪魔しないでって言ってたけどさぁ~ 一番役に立たないのテオじゃない?」

「確かに・・でもそこも含めて可愛いよ、テオ」


全く使い物にならなかったとうなだれたテオバルト

情報は大体得たから帰ろうと3人は宿へと戻っていった


とても小さな部屋の椅子にエマとテオバルトが座り、ジルクモンドは窓のサッシにもたれかかり立つ

「商人から聞いた話では、キリアンはここ最近外部からの出入りを制限してるらしい」

「やっぱり…物流が極端に少なくなっているのはキリアンが制限しているから?」

「領主への反発が高まって市民と領主の対立が起きているらしいよ、お姉さんの友達がキリアンにいるからそう聞いているって言ってた」

「え?内乱ってこと?事態は深刻じゃないか・・」


深く考え込むテオバルト、今後の行く道をどうしたらよいか・・


「ねぇ、テオバルト様。あーいう女性たちは好きじゃないのですか?」

「好きじゃない・・」

「ではどんな人がいいのですか?シャーロット様みたいな色っぽいご令嬢は?」

「好きじゃない」

「えー?じゃあどんな人?ん?彼女たちの共通点は・・?」胸??とぼいんのジェスチャーをするエマ

「よかったな、テオはお前みたいなやつがタイプかもしれん」 ジルクモンドは笑う


えー?そうなの?と嬉しそうにはにかむエマ

なんと緊張感のない連中だろうとテオバルトは思う


「今日はありがとうございました。あなたたちのおかげで助かりました」


お礼を言っただけなのに、2人はびっくりした顔をしている


「テオバルト様、ぎゅっとしてもいいですか?」

「ダメ!!」 テオバルトはエマからガードを作る

「じゃあ、俺が・・」ガードごとジルクモンドがテオバルトに抱き着く

「ジルずるい~」 エマはその横から2人に抱き着く


テオバルトは無意識だったが、2人に心を許した柔らかい表情でお礼を言っていた

その顔はとても可愛い年相応の青年だった


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