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幻の伯爵令嬢は初恋の君に恋をする  作者: 間宮沙紀
出逢い編
15/71

14

会場へ戻り、目立たずに立っているとジルクモンドが帰ってきてエマの隣に並ぶ

さっきの痴漢男を隊長に引き渡してきたとエマに説明する


「なんかざわついてきたな…」

「あっ…!!!」


ざわざわとする会場

みんなの視線の先には、ピンクゴールドの髪を後ろで一本に束ねたすらりとした紺色の服の美人な男と

その男と腕を組み一緒に歩く赤いドレスのスタイルのいい女


エマとジルもみんなの視線の先の人物を目で追いかけていた


「なぁ、あれが、テオバルト・ロッソ?」

「ええぇーー!!、さっきのばっくり美人!!!

まさか・・・?テオ様の婚約者ってあの人?」

「は?ばっくり美人??」


テオバルトは無表情

隣のシャーロットはにこりとした顔で

周りの視線をうまく流している

挨拶されても、2人とも最低限にしている感じがある


「うわぁ〜!!儚げ美人が清楚すると…かっっこいいっ!

その隣にばっくり美人って似合う〜!!!」

「だからなんだよ、ばっくり美人って…あ、なるほどね」

「はぁ~目が幸せ・・」


シャーロットの後ろ姿を見て、背中がばっくりと開いたドレスを指すことを理解したジルクモンド

なぜこんなにもエマははしゃいでいるのか

何がしたくて夜会に服まで借りてここにいるのか

エマの意図がさっぱりと読めないでいる


一気に会場の中の華やかさが増したような雰囲気があり

王太子も登場し、権力を得たい女たちは集中してそこに群がっている


「ハイエナの群れにしか見えない…」

「同感…大変だな、殿下も」


決して王太子からは見えないところから

エマとジルは憐れみの目で王太子を見つめていた


一方で形式的な挨拶をすませたテオバルトとシャーロットは

テオバルトのエスコートで会場角の椅子に横並びに座った


「初めてあなたのほうからお誘いして来た夜会にも関わらず、誰をお探しなの?」


扇子で口元を隠し静かな口調でシャーロットはチラリとテオバルトに視線を向ける


「いや、誰も探してなどいない」


そう言いつつも誰かを探しているのは、城についてからの

態度から明確だった。シャーロットはテオバルトの視線の先が1人を追っているのに気づいた

白い近衛の制服を身につけ、肩までかかる小麦色の髪をハーフアップにしている、背が高いカッコいい女騎士


「まぁ、妬けますこと」


その人がさっき外であった近衛騎士であることに気づいた

シャーロットはふふふと不敵に笑う




会場内は穏やかで心地よい音楽からムードのあるダンスの曲に切り替わる

最初に踊るダンスは婚約者がいる人は婚約者と踊る

既婚者はパートナーと踊るのが一般的だ

しかし、テオバルトもシャーロットも席を立とうとしないまま最初の1曲は終了した

その後の夜会は特に何もなく、王太子のお眼鏡にかなう令嬢もいなかったのだろう、夜会は静かに幕が下りた


任務終了後に城から屋敷まで歩いて帰ることにしたエマとジル

「で?今日は一体何がしたかったんだ??」

「テオ様と婚約者との仲を知りたかったんだけど・・

まさかあんな美人だなんて!!」


これは・・悔しいというよりも、羨ましいとかそういう類の感情か?

美人に弱いからなぁ~エマは


「それと、むやみやたらに暴力は禁止だからな。

もし、こっちから手をだしたら色々面倒なことになるんだから」

「わかってるよ・・

あ、そういえば、シャーロット様現場にいたんだよね。多分テオ様じゃない男の人と一緒だった」

「は?まじかよ!!浮気か????」

「いや、浮気かどうかはわかんないけどさ・・」


月が雲に隠れて、夜会終わりの静けさが、夜の風の冷たさが

涼しく感じられる

テオバルトと婚約者を一目見れれば、それでいいと思っていた

そのチャンスもしっかりと得た今

また新たな気持ちがエマに生まれはじめるのだった

婚約者シャーロットがどんな人なのか気になる…

仲悪くはないけど、テオバルトと愛し合っているようには見えなかった





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