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「お母さまは…なぜお父様と結婚したの?」
テーブルの上に採れたてのさやえんどうを広げ
スジをとりながらエマは目の前の母を見る
「はじめは迷惑でしかなかったんだけど、いつの間にか好きになって
絶対貴族となんて無理!!って思ってたのに
ジョージを愛してるって思ったから結婚したの」
スジを取ったものを一つの籠に集めて
釜を用意して湯を沸騰させる母
馴れ初めや恋愛結婚だったことは小さい頃から聞かされていたため知っていたが
自分から話題にしたのは初めてだった
「私、伯爵令嬢だけど…それを隠してきたでしょう?
常識外れた存在ってジルに言われるし、テオバルト様にも令嬢なら他に方法あるでしょ?って言われたけど、それ以外の方法なんてわからない…」
「エマはどうしたいの?」
「出来ることならもっと一緒にいたて、テオバルト様を知りたい」
「エマはエマらしく自分のしたいようにすればいいのよ
貴族令嬢としての教養を学びたいなら、学べるし
騎士としてこのまま、進む道もある
結婚に囚われずに生きることにしたっていい
まだ若いんだから色々な可能性があるじゃない?
この世でそんな選べるなんて贅沢できる人がどれだけいると思う?
それに感謝して自分でしたいことをなさい
人生は人にとやかく言われるものじゃないわ
自分で選んで決めるものよ」
効率よく作業を続けたまま母、リリーは言う
ありのままを受け入れない男はダメ
自分の常識を人にも強要する男もダメ
そんな男ならやめたほうがいいと笑いながら
「テオバルト様には婚約者がいるんだって…」
「あれだろ?魅惑の伯爵令嬢シャーロット・ランスター」
さっと現れて、テーブルに座るジルクモンド
「ランスター家のお嬢様?確かあなたたちと同じくらいの年齢ね、侯爵家と伯爵家…政略結婚かしら?」
「シャーロット嬢は恋の噂の絶えない美女、それと美しき次期宰相候補のロッソ令息かぁ〜並んだ2人見てみたいよな」
「婚約者って…結婚に一番近い相手だよね・・」
「年頃の貴族に婚約者がいないほうが、少ないじゃない
エマにも毎日たくさんの申し込み来てるわよ、ジョージが全て破棄してるけど」
「え??そうなの?」
エマとジルクモンドの声が重なる
はっと何が気づいたのか、突然立ち上がったエマ
「そうか!夜会!!夜会があるじゃないか!!」
先程までの鬱々とした顔つきではなく
キラキラとした瞳で何か企む顔をしているエマを
リリーとジルグモンドは顔を見合わせる
「そうか、夜会!!ふふふ」
「よろしくね、ジル…」
「え?イヤだよ。あの企み顔に付き合うの」
「ジル!走り込みに行こう!!」
「えーーー!!俺今帰ってきたばっかりなのに…」
エマはジルを引っ張っていった
リリーは2人の様子を微笑んで見ている
「まだまだ子供ね…」
普通は伯爵夫人が半外で野菜をいじるなんてこはしないだろう、令嬢がそれを手伝うことも
でもそれがクロスフォード家の温かく賑やかな日常
女主人リリーはそれを何よりも愛している
リリーは広げてある作業をメイドたちを呼んで張り切って始めるのであった




