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カツカツとよく磨かれた床に規則正しい靴音がよく響く
その規則正しい音から音の主がイライラしている様子が窺えた
「なんでこんな時もじっとしていられないの?
前々から今日は令嬢らしくするようにと言ったでしょう?聞いているのエマ??」
長いドレスの裾を後ろを振り向きながら翻すも
そこにいるはずの小さき令嬢の姿はもうそこにはない
「奥様、お嬢さまはあちらに・・」
侍女が申し訳なさそうに、廊下の端を指をさす
「アマーリア~~~~~!!!!!!」
母の怒りを含んだ叫びを聞いて、淡い黄色のドレスに裸足で廊下を駆けるエマ
「お母さまの声だって迷惑だよ・・」
今日は王妃様のお茶会に母とともに来ていた
普段からおしとやかさとは無縁なエマが王太子も同席し、さらには他の令嬢たちも
呼ばれているのその席で令嬢らしく務めるように母から注意されていたが、じっとしていることができるはずもなく、早々にお茶会を退出したところだった
「へぇ~さすがお城だ。こんな森みたいな中庭があるなんてすごい」
エマは外からの木漏れ日が木々の間からまぶしいほどこぼれる
中庭にきていた
「あ、猫ちゃん」
猫が木の上でガシガシと頭をかいた後、じっと日光浴をしている様子だった
エマは迷うことなく、その猫を捕まえようと木に足をかけて登りだし
もう少しで触れそう、そのときまで木を登ると
「ウニャー~~」
身軽に触られないぞといわんばかりに、さっと猫は木から着地した
「わっ!!」
高いところの枝が揺れたことで手を伸ばしていた体制からバランスを崩してエマは木から落ちてしまった
「あ~痛っ!」
「大丈夫ですか?」
地面に背をつき空をみるようにして寝ころんだ姿勢のエマの前に飛び込んできたのは
天使と見間違えるほどの美少女だった
「大丈夫ですか?起きれますか?」
透き通るような白い肌にピンクブロンドのサラサラな髪
大きな紫色の目に長いまつ毛
パーツひとつ一つが美しく人形みたい
美少女がエマの手をぎゅっと握り地面についた背を起こす間、エマは息をするのを忘れていた
「あの・・?血がでていますが?これよかったらお使いください」
「え???は、はい・・」
え?血?ハンカチ??
こんなきれいなハンカチを使えって??
というか天使?!!!!
「いや、すみません!!大丈夫です!すみません」
エマは勢いよく起きて立ち上がり、真っ赤な顔をして差し出されたハンカチをつかんだ
「よかった。動けないようなら人を呼んでこようと思いましたが、大丈夫みたいですね」
美少女がふわっと微笑んだ、その顔はキラキラと眩しい
「どうぞ、そのハンカチをお使いください」
足の擦り傷から少し血が滲んていたところを指さし
「では、私はこれで」
普通なら侍女の一人でもついていておかしくない
おそらく貴族かそれ以上の身分であろうこの世のものとは思えない美少女は
ハンカチをエマに渡し、一人でその場を立ち去っていった
「え?天使?妖精?」
エマはぼーっと赤い顔をしたままその場でハンカチを握りしめていた




