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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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93.影の脅威

「アリスト・ロバーンデックについて?」

「そうっす。何か知ってることがあれば教えてほしいっす」


 ここは情報屋組合の総本部。

 場所は王都の郊外にあると言われているが、それを知る者は組合に所属する者のみである。

 リンテンスにアリストの調査を依頼されたエルは、情報を求めこの場所へやってきた。

 情報を得る最短ルートは、情報を持っていそうな人に聞くこと。

 同じ情報屋なら、自分が知らない情報も持っているかもしれない。

 対価は必要だが、同じ情報屋同士なら、情報こそが対価となり得る。

 彼女は優秀な情報屋だ。

 交換材料となる情報もたくさん持っている。

 だが……


「悪いが教えられないな」

「なぜっすか? ほしそうな情報ならこっちにもあるっすよ?」

「いくら積まれても駄目だ。悪いことは言わねぇからよ。この件に深く関わるな」

「それはどういう――」

「忠告はしたぜ。無視すんのも勝手だが、そのときはどうなっても文句は言うなよ」

「あ、ちょっ――行っちゃったっす」


 情報を聞こうとした男は、エルに忠告だけ言い残し去っていった。

 エルは悩み考える。


 何か面倒なことになってそうっすね~

 普段なら潔く手を引くところっすけど、今の依頼主はお兄さんっすから。

 エルも良い所を見せないとっすよね!


 エルは危険な香りを感じつつ、私情を優先することにした。

 この行動はプロとしては失格だ。

 エル自身もそれを理解しながら、続行することを選んだ。

 それほど彼女にとって、リンテンスへの気持ちを強く大きかったということだ。

 助けられた恩義より、心の内に宿った恋の炎が猛々しく燃えている。

 

 しかし……

 この判断は間違いだったと、後に後悔することになる。


 その後も他の情報屋に聞いてみたエルだったが、帰ってくる答えはほとんど同じ。

 皆、深入りするなと警告するばかりだった。

 いよいよきな臭くなってきたと感じ、エルも慎重に行動を開始する。

 最新の目撃情報屋、類似した情報をなどを集め、彼が今どこにいるのか、何をしているのかを探っていく。

 もちろん簡単に見つかることはない。

 エルは優れた情報屋だが、こればっかりは運も絡んでくる。

 今回の場合、彼女には運も味方した。


「見つけたっすよ」


 調査開始から間もなくして、有力な情報を掴むことに成功したエル。

 これは彼女にとっても予想外の収穫だった。

 

 長期戦の構えだったっすけどまさかこうも早く掴めるとはラッキーっすね。

 今のエルは運も味方につけてるって感じっす。


 などと喜び調査を続行。 

 次々に繋がっていく情報を頼りに、彼女はアリストの居場所を探り当てる。

 そして、とある日の夜――


(あれが……)


 王都から二つ離れた小さな町で、エルは遂にアリストを発見した。

 深夜で人通りはなく、明かりも少ない暗い路地を、マントの男が一人で歩いている。

 怪しい雰囲気を醸し出しながら、どこへ行くともわからない。

 エルの頭の中は二つの感情に分かれていた。

 一つは、この状況と危険から、すぐに立ち去ったほうが良いという本能的な警告。

 そしてもう一つは、アリストがどこへ向かっているのか、どこで潜んでいるのかが知りたいという好奇心。

 この好奇心の根元には、リンテンスの役に立ちたいという思いがある。

 

 彼女は後者の気持ちを選択した。

 そのままアリストを尾行する。


(曲がった!)


 小さなわき道の逸れたアリスト。

 気付かれないよう急いで尾行するが、彼が曲がった先は行き止まりだった。


(あれ? どこに――っ!)


 彼女の足元に何かが這い寄る。

 下を向いても何もない。

 あるのは黒く染まった影だけだった。

 そう、影だ。


「わっ! うっ……」


 影が盛り上がり、触手のように形を変え彼女を襲う。

 手足を拘束された口も塞がれてしまった彼女は、叫ぶことも逃げることもできなくなった。

 そこへトントンと、足音が一つ聞こえる。


「俺の周りを嗅ぎまわっているネズミがいる聞いたが、思ったよりも小さいネズミだったな」


 アリスト・ロバーンデック。

 影を操り彼女を拘束したのは彼の魔術だった。

 

 し、しまった……

 尾行してるのもバレてたっすか?

 いや違うっすね。

 たぶん最初から誘い込まれて……何やってるっすか。

 こんなの最初から気付けたことなのに。


 彼女は激しく後悔している。

 だが、そんなことは無意味だとも知っている。

 捕らわれてしまった時点で、彼女の運命は決した。 


「さて、誰の差し金か? まぁ大体予想はつくが……」

「――んぅ!」


 エルを睨むアリスト。

 次の瞬間、影の刃の一本がエルの腹に穴を開けた。

 強烈な痛みがエルを襲う。

 それでも逃げることはかなわず、口も塞がれてわめくことすらできない。

 

「丁度良い。お前は餌になる」


 そう言って、アリストはエルに何かを伝えた。

 耳元で囁くように。

 それから彼は影を解除する。

 解放されたエルは地面に転がり、ゴホゴホと血反吐を吐く。


「しっかり伝えろよ。まぁせめて、そこまでは生きててもらわないと困る」


 アリストは立ち去っていった。

 残されたエルは、重傷を負いながらも生きている。


「生きてる……エルは……お兄さん」


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