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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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88.脅し合い

 師匠のお願いは、たった一言で返された。


「う~ん、一応もう一回くらい聞いても良いかな?」

「お断りだと言ったんだよ。何度聞いてもあたしの答えは変わらないね」


 師匠とエルマさんは視線を合わせ、無言のまま見つめ合う。

 睨んでいるわけではない。

 師匠もエルマさんも冷静で、落ち着いていた。


「もう少し考えてはくれないかな?」

「嫌だね。どうせ考えたって結果は同じだ。あんな面倒な連中の相手なんてするつもりはない」

「だから、この間も出てこなかったよね?」

「ああ。あたしじゃ戦っても勝ち目は薄かったからな」


 勝ち目の低い戦いには参加しない。

 師匠が以前、エルマさんのことをそう話していたことを思い出す。

 どうやら事実だったらしいことに、少なからずガッカリしている自分がいた。


「大体、アベルのおっさんとシュトレンの爺さんが負けたんだろ? あの二人より戦闘力で劣るあたしが、何の役に立つのさ」

「それも知ってるんですか?」

「当たり前だろ」


 当たり前?

 同じ聖域者が命をかけて戦っているのに、それを知っていて隠れていたのか。

 いいや、わかっていたことだ。

 師匠からもそういう人だとは聞いていたから。

 だとしても、あの戦いを生き延びた俺たちには、怒る権利があると思う。


「へぇ~ あたしに喧嘩を売ろうってか?」

「……別にそんなつもりはありませんよ」

「はっ! 顔と言葉が一致してないわよ? ガキんちょ」


 わかりやすい煽りに感情が高ぶった俺は、思わず手を出しそうになる。

 そんな俺を静止したのは師匠だった。

 師匠は俺の前に腕を出し、小さな声で言う。


「落ち着きなさい」

「すみません」


 冷静さを取り戻した俺はすぐに謝った。

 もちろん彼女にではなく、止めてくれた師匠に対してだ。


「エルマも、あまり彼を虐めないでおくれ」

「はっ! 悪かったわね。アルフォースの弟子だからついって感じ」

「また僕の所為にしないでほしいな。とにかく冷静に話し合おう。僕らは別に戦いに来たわけじゃなしい、そもそも敵じゃない。僕らの敵は悪魔だよ」

「……はい」


 その通りだから反省する。

 あとここは師匠に任せたほうが良さそうだ。

 俺は目配せで、師匠に後は頼みますと伝えた。

 師匠は目をパチッと瞬きさせる。

 任せなさいと言っている。


「エルマ、君はもしかして、悪魔の件は自分と無関係だと思っていないかい?」

「は? 何だよそれ」

「君も無関係じゃないってことさ」

「……どういう意味だ?」

「悪魔の狙いは、この世界への進出と支配。そのためには両界を塞ぐ蓋を排除しなければならない。そしてその蓋を無意識に維持しているのは、僕たち聖域者だ」


 この時点でエルマさんは察したのだろう。

 話を聞いていた彼女の目つきが変わる。


「わかるかい? 彼らの狙いは僕たち聖域者だ。主君たちの妨げとなる僕たちを、最初に殺すため動いているのさ」

「……なるほどな。ならあの二人はまんまとおびき出されたってことか」

「その通りだよ。君は運が良かっただけだ。もしも今回来ていた悪魔が第三の柱なら、君の居場所なんて筒抜けだったはずだよ」


 第三の柱?

 師匠が戦ったていう幹部と同じ悪魔の一人か。

 今の口ぶりからして、探索に長けた能力を持っているらしい。

 

 師匠は続けて彼女に言う。


「僕が殺されれば、確実に次は君の番だよ? 悪魔たちが総力を挙げて君を探し、殺しに来る。いつまでも逃げられない」

「アルフォース、それはあたしを脅しているのか?」

「うん」


 師匠は堂々と答える。


「君だって脅迫文を送ってきただろう? あれの御返しさ」

「ちっ、相変わらず性格悪いな」

「お互い様さ」

 

 二人は呆れたように笑う。

 それからエルマさんが大きくため息をついた。


「仕方ないな。でもあたしが戦っても勝てないと思うぞ?」

「別に戦ってほしいわけじゃないよ。僕らは君に協力してほしいだけさ」

「その協力って言うのは?」

「簡単に言うとサポートをしてほしい。戦うのは僕と、リンテンスが請け負うから」


 師匠の視線に合わせて、エルマさんがこっちを見る。

 俺がこくりと頷くと、エルマさんは小声で「なるほどな」と呟いた。


「で? サポートって?」

「魔剣を作ってほしい。悪魔を斬れるだけの魔剣を」

「へぇ、そいつは面白そうだね」


 魔剣の話になった途端、彼女の表情が良くなった。

 本当に魔剣づくりにしか興味がないらしい。


「つってもお前たち二人は持ってるだろ?」

「僕らじゃないよ。ほしいのは僕ら以外……僕やリンテンス以外にも、悪魔と戦える可能性を持つものがいる。たとえばここにいるシトネちゃんとかね」


 突然、師匠がそんなことを言い出した。

 俺も不意を突かれて驚いたけど、一番驚いていたのは本人だろう。


「え、えぇ!? 私ですか!?」


 飛び上がりそうなほど声をあげるシトネ。

 その反応になるのも無理はない。

 いきなり何を言い出すのかと、師匠に言いたくなった。


「真面目に言ってるのか?」

「僕はいつだって真面目だよ。だから手始めに、彼女の魔剣をうってくれないかな?」

「いいぜ! そういうことなら飛びっきりのを作ってやる」


 当のシトネを放置して、二人で盛り上がっている。

 しばらくの間、シトネはわけもわからずアタフタしていた。


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