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87.魔剣の鍛冶師

「次は君たちの番だよ」


 師匠が俺とシトネに自己紹介するよう促す。

 俺は頷き口を開く。


「じゃあ俺から。リンテンス・エメロードです。さっきも伝えましたが、アルフォース師匠の弟子です」

「リンテンス、リンテンス……ああ! この間の学園襲撃で大活躍したっつうガキか」

「ガキ……というか学園の件は知ってるんですね」

「まぁな。一応情報は入るようにしてるんだよ」


 こんな秘境に隠れ住んでいて、どうやって情報を仕入れているのだろう。

 エルみたいな情報屋が専属でいるのか?

 だとしたら気の毒で仕方がないな。


「今失礼なこと考えただろ?」

「いえ別に」

「はっ、にしてもお前……」


 エルマさんは俺のことをじーっと見つめてくる。

 何も言わず無言でただ見つめてくるから、俺もどう反応して良いのか困る。


「な、何ですか?」

「まともそうな奴だな。本当にこのロクデナシの弟子か?」

「そうですよ。師匠と一緒にしないでください」

「そうだな。こいつと一緒にするとか失礼だったな」

「僕に対する礼はないのかな?」

「ないですね」

「ねぇな」


 返答が被ったところをで、俺とエルマさんは顔を見合う。


「お前とは気が合いそうだな」

「奇遇ですね。俺もそう思いましたよ」


 師匠に対して思っている不満はお互い多いようだ。

 その点に関しては共感できると心底思う。

 ただ……さっきの変態ぶりを知っているから、全部が合うとは言いたくない。


 そして俺に続き、問題のシトネの自己紹介になる。


「私は――」

「シトネちゃんでしょ?」

「え、あ、はいそうです!」


 シトネが名前を言うより早く、エルマさんがシトネを呼ぶ。

 驚きと緊張を見せるシトネに、エルマさんは優しく微笑みかけて言う。


「さっき話してるのを聞いたから覚えたわ。見た目と一緒で可愛らしい名前ね」

「あ、ありがとうございます」


 おや?

 思ったよりも落ち着いている。

 俺の予想だと、もっとこう変質者みたいに呼吸を荒げて、シトネに迫ろうとするかと思ったのに……

 一応カウンターを決める準備をしていたが無駄だったようだ。


「う~ん、本当に可愛いなぁ」


 と思っていたのだが、徐々に様子が変わっていく。


「耳と尻尾もそうだけど、何よりそれにマッチする顔が良い。体格も小っちゃくてフレームに収まるし、あぁもう……」


 エルマはうっとりとながら、嘗め回す様にシトネを眺める。

 さすがのシトネも視線に気づいて、怯えているように見えた。

 そして極めつけはこの一言。


「食べちゃいたい」


 シトネがブルっと震えた。

 恐怖で鳥肌が立っているのがわかる。


「り、リン君! この人やっぱり怖いよ!」


 しまいには恐怖で俺の腕に抱き着いてきた。

 ブルブル震え、鳥肌も立っている。

 悪魔と接敵した時より、今のほうが怯えている気がするのだが……


「安心して。さすがにあたしも、彼氏持ちの女を襲ったりしないわよ」

「か、彼氏?」


 状況的にどう考えても俺のことを言っている。

 シトネは俺を見上げ、カーっと顔を赤く染めた。

 俺も顔が熱くなる。

 エルと彼女が話していた場面を思い返して、急に恥ずかしさが増す。

 事実ではないし、否定したほうが良い気もするけど、この人相手には黙っていたほうが得策な気がして……とりあえず俺は無反応を貫いた。

 すると――


「彼氏じゃ……ない、です」


 シトネが消え入りそうな声でそう言った。

 恥ずかしそうに、申し訳なさそうに否定した。


「ん? 何だ違ったの? だったら食べても――」

「ダメに決まってるでしょ!」

「何だよケチだな~ 別に付き合ってないならお前のものでも……」


 エルマさんは俺たちを見つめる。


「まぁいいや。そんで何しに来たんだ? あたしは今ちょー絶忙しいんだぞ」

「忙しいって……そうは見えませんけど」

「見ればわかるだろ?」

「いや、だから見えませんって」


 今のところ見えているのは、この人が変態だということだけだから。


「相変わらず研究かい?」


 そう尋ねたのは師匠だった。

 エルマさんは一瞬不満そうな表情をしつつも答える。


「当たり前だよ。あたしの目的は今も昔も変わらない」

「目的? それって何ですか?」

「そりゃーもちろん! 最上最強最高の魔剣を作り出すことに決まってるだろ!」


 俺の問いに対して答えた彼女は、今までで一番良い表情を見せた。

 このとき俺、彼女の二つ名を思い出す。

 風来の女鍛冶師……またの名を、魔剣の鍛冶師。

 様々な武器や装備を生み出せる彼女が、唯一拘り続けていること。

 それこそが魔剣づくりだった。

 今までも生み出した魔剣は百を超え、そのどれもが強大な力を有し、各国や権力者たちが大金をはたいて買い占めようと躍起になっている。

 それらすべての魔剣を、彼女は失敗作と呼んでいた。


「当面の目標は、まず六魔剣を超えることだな」

「六魔剣って何ですか?」


 シトネの質問に俺が答える。


「数千年以上前、最初に作られた六本の魔剣だよ。今の技術じゃ到底たどり着けない代物らしくて、最高の魔剣って呼ばれてるんだ」

「ちなみにそのうち一本ずつは、僕とリンテンスがもっているよ」

「そうなの?」

「まぁね」


 俺の術式とは相性が悪いから、めったに使わないけど。

 そして師匠が唐突に話を戻す。


「話が逸れたけど、今日は君にお願いがあってきたんだよ」

「何だ?」

「悪魔との戦いに、君も参加してほしいのさ」

「お断りだね」


 即答だった。

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