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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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84.極寒の雪山

 王都北部には山脈がある。

 最も高い山は雲を軽々超え、空気の薄さで意識が遠のくほど。

 常に凍てつくほど寒く、雪化粧に覆われている。

 北を目指す際の目印として重宝しているが、過酷な環境故にほとんど誰も近づかない。

 ただ豊富な資源が眠っているらしく、時間をかけて採掘と調査が進められているらしい。

 なぜ急にそんな雪山の話をしているのかって?


「くしゅんっ!」


 ちょうど今、そこを登っているからだよ。

 俺とシトネ、それから師匠でね。

 ちなみに可愛らしいくしゃみをしたのはシトネだ。

 

「大丈夫か?」

「う~ん……大丈夫じゃないかも」

「シトネは寒いの苦手なんだな。狐って寒さに強いイメージがあるけど」

「先祖返りなだけで一緒じゃないんだよ~」


 ブルブル震えながら弱々しく言うシトネ。

 まだ登山開始から一時間も経過していない。

 それでも辺りは雪景色の白一色で、若干吹雪いてきている。

 吹き抜ける風と雪の冷たさが、こんなにもキツイとは思わなかった。

 

「だらしないな~ 僕のようにもっと堂々としていないと!」

「……そんなモフモフの格好で言われても説得力ありませんからね」


 師匠は権能で生み出した防寒機能付きモフモフの生物を全身に纏っている。

 見た目は太ったクマみたいだが、間違いなく温かそうだ。

 俺より寒さに弱い師匠が、平気な顔して歩いているのが何よりの証拠。

 何よりムカつくのは、それを自分だけ身に纏っていることだが……


「師匠、俺たちにもそれかしてくださいよ」

「ダメダメ! これは僕の命令しか聞かないから」


 絶対嘘だろ……

 見た目は毛玉みたいなのに、一応モンスターと戦えるらしい。

 信じられないというか、信じるのが馬鹿らしいというか。


「もういいですよ」


 これ以上言っても無駄だとあきらめる。

 さて、どうして俺たちがこの山をせっせと登っているのか。

 理由は師匠からのお願いだ。

 師匠が捜している聖域者エルマ・ヘルメイスは、各地を転々とする旅人。

 その先々で自らの工房を築き、武具や道具を作っているそうだ。

 この数日で師匠が調べ上げ、四つの候補まで絞った滞在場所の内一つが、このグレートバレー山脈だ。


「懐かしいかい?」

「……そうですね。あれから四年ですか」


 師匠の弟子になって一年後、俺はこの地でドラゴンと戦った。

 あの時は今登っている山とは別で、こんなに寒くもなかったけど。


「時の経つのは早いものだよ。気が付けばあっという間さ」

「何だか師匠が言うと説得力ありますね」

「そうだろう? 若く見られがちだがこれでも年長者だからね!」

「たぶんそういう態度の所為で若く見られるんですよ」


 キョトンとする師匠。

 どうやら無自覚らしい。

 

「しかし、本当にこんな場所にいるんですか?」

「いると思うんだよね~」

「根拠は師匠の勘ですよね」

「そうだよ?」


 何を今さら、と言わんばかりの表情を見せる師匠。

 確かに、それを知った上で着いてきたのは俺とシトネだ。

 探している聖域者について知ってるのは師匠だけだからな。

 勘でも何でも、師匠の感覚に従うしかない。

 とは言え……


「この寒さは厄介だな」


 徐々に増してきている。

 吹雪も強まってきて、視界も悪くなっているようだ。

 まだ中腹にも達してないというのに、この悪天候は負担が大きい。

 

「ぅう~ 指先の感覚なくなってきたよぉ」

「俺もだ」

「そんなに寒いなら二人でくっついて歩いたらどうだい?」

「「えっ」」

「ほらほら~ 人の体温って結構あったかいんだぞぉ?」


 わざとらしくニヤつく師匠に、若干の苛立ちを感じる。

 あきらかに面白がっている。

 この間の一件以来、時々からかってくるんだよな。

 

「ど、どうする?」

「え……と、どっちでも」

「わ、私もどっちでも良いよ」

「……じゃあ」


 じゃあって何だ?

 俺は無意識にシトネに手を伸ばしていた。

 寒さで判断能力も落ちているのだろうか。

 そういうことにしてほしい。

 シトネも照れながら、俺の手を握ろうと――


 ドゴンッ!


 というタイミングで、近くの大岩が砕けた。


「おっと、敵襲だね」


 なんというタイミングで!

 しかも現れたのは、雪山では御なじみと言われている大男のモンスターイエティ。

 見た目は大猿で、白い毛並みが特徴的な雪が降る寒い地域に生息する凶暴で賢いモンスターだ。


「かなり大物だね~」


 冷静な師匠とは裏腹に、俺とシトネは若干焦っていた。

 良い雰囲気を中断されたというのもあるが、寒さで身体の動きが鈍っている。

 急に動いて上手く戦えるかという不安。

 その不安を師匠は感じ取り、俺たちの前へ出る。


「いいよ。ここは僕に任せて」


 そう言って、何も持っていない腕を前にかざす。

 師匠が着ていたモフモフの一部がツルのように伸び、八本に枝分かれしてイエティに絡みつく。

 そのまま縛り上げて持ち上げ、破壊された大岩に叩きつけた。


「ほらね? ちゃんと戦えるだろ?」


 この時の師匠は、とても清々しいドヤ顔をしていた。

 

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