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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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80.どうせ一緒にいるから

 セイルキメラ、グレータークロコダイル。

 二体の強力なモンスターを討伐し、俺とシトネは帰路につく。

 倒したモンスターの死体は、ギルドから提供される保管用魔道具に収納し、そのまま持ち帰る。


「便利だね、このボール」

「でも収納できるのは一体だけだし、半日しかもたないけどね」

「そうなの? じゃあもっとたくさん倒した時はどうするの?」

「貴重な素材だけ取るか、ギルドに後から依頼して回収してもらったりかな」


 ウルフとかゴブリンみたいに数の多いモンスターは、倒しても適当な部位だけ持ち帰ることがほとんどだ。

 大した金額にならないし、倒した証明にさえなれば良い。

 そもそもこの魔道具、ギルドから貰うために結構な金額がいるからな。


「今回の二体はどっちも貴重だし、部位によっては高値が付く。あと放置しておくとよくないことに繋がる可能性もある」

「よくないことって?」

「他のモンスターが死体を食べたり、取り込んで凶暴化したり」

「そんなこともあるんだ!」

「モンスターの中には、他の種族を食らって力をつけた種類もいるってことだよ」


 そしてそういう種類のモンスターほど、狡猾で恐ろしい。

 冒険者の仕事をしていると、モンスターの罠にはまって無残な最期を迎える者も少なくないと聞く。

 実際に俺も、似たような現場に出くわしたことがあるから、おとぎ話みたいな話でもない。

 今でも思う。

 あの時もっと力があれば、助けられた命もあるのに……


「リン君?」

「何でもない。あとは戻るだけだな」

「うん! 今夜はアルフォース様も帰って来るんだよね?」

「一応はそうなってるな」


 師匠のことだから、やっぱり帰れなかったとか普通にあり得る。

 今は本当に忙しそうにしているし、文句も言えないのが複雑な気分だよ。


 それから俺とシトネはまっすぐギルド会館へ戻った。

 建物に着くころにはすっかり夕日も沈み、帰還した冒険者でにぎわっている。


「わぁ~ すっごい人だね!」

「朝はもっと多いぞ」

「そうなの!? これより多いと困っちゃいそうだよぉ」


 ギルド会館の中には飲食店が併設されている。

 情報交換の場として用意されたテーブルと椅子には、この時間になると酒を飲み楽しんでいる者たちでごった返す。

 こういう風景こそ、冒険者らしいと思えなくもない。

 依頼から無事に帰還して、生き残ったことを喜びながら、仲間と一緒に飲み食いする。

 一人で活動していた俺には縁遠い話だ。


「帰ろっか!」

「そうだな」


 ただ、今の俺はそれを虚しいとは思わない。

 一緒に帰る人がいて、共に競い合う仲間もいる。

 充実していないなんて、思うはずないだろ?


「あ、そうだ。うーん……いないか」

「どうしたの?」

「いや、エルがいたら挨拶だけしておこうかと思ったんだけど」

「……」


 発言してから気付く。

 さっきまで機嫌がよかったシトネが、あからさまに不機嫌になっている。

 エルのことは迂闊に話すべきじゃなかった。

 シトネが徐に俺へ手を伸ばしている。

 またつねられるのかと思って身構えた俺だったが、彼女はちょこっとだけ服をつまんで引っ張るだけだった。

 

「ねぇ、リン君」

「な、何だ?」

「私にはくれないの? あの腕輪」

「えっ、腕輪?」


 ああ、エルに渡した緊急事態用の魔道具か。

 

「エルちゃんにはあげたのに、私は貰ってない」

「それはまぁ、シトネは強いし。エルは情報屋で戦えるわけじゃないから、何かあったら困るだろ?」

「……そうだけどさぁ」


 むくっと膨れるシトネは続けて言う。


「私だって、また悪魔に襲われるかもしれないよ?」

「それは大丈夫だろ? 俺が傍にいて守れば良い」

「……へっ?」


 キョトンとするシトネに、俺は言い切る。


「どうせこの先もずっと一緒にいるんだし、あんなのなくてもシトネが呼べばすぐに駆け付けるよ」

「……リン君」


 あれ?

 今なんか俺……凄いこと言った気がするけど……


「そっかぁ~ じゃあ仕方がないねぇ~」


 急に表情がとろけだすシトネを見て、余計なことは気にしないことに決めた。


「ま、まぁほしいなら後で渡すけど?」

「ううん! リン君が一緒にいるからいらないよ!」

「そ、そうか」

 

 上機嫌になったシトネにホッとしながら、俺は夜空を見上げてため息を漏らす。

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