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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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77.冒険者のお仕事

 依頼の仕分けに一時間を使い、一〇五件溜まっていた依頼を三十八件に減らすことが出来た。

 出来たというか、放置していて申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが。

 一先ず受けるものを決め、さっそく出発することに。


「今日は時間も押してるし、受けれて二件だな」

「それも近場じゃないと無理だよね」

「ああ。この中で近いのはー……」


 セイルキメラの討伐。

 グレータークロコダイルの討伐。


「この二件かな」

「どっちも強そうな名前だね」

「強いよ。あと個体数も少ないし、素材は貴重だから高く売れる」

「そうなんだ? じゃあ頑張らないとね!」

「おう」


 シトネにとっては修行相手にも良いだろう。

 来たるべき戦いに備えて、彼女にも強くなっていてもらわないと困る。

 もしも俺が間に合わない時、自分の身は自分で守れるように。


「よし。じゃあ行こうか」

「うん! リン君!」


 その呼び名は、やっぱり少し恥ずかしいな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 依頼一件目。

 セイルキメラの討伐。

 指定されたエリアは、王都を出て西にある巨大な森の奥。

 様々な薬草の採取で重宝しているエリアに、危険なモンスターが生息しているという情報を得てギルドが調査。

 極めて凶暴なモンスターであるセイルキメラの成体が発見された。

 該当モンスターが討伐されるまで、指定されたエリアは立ち入り禁止とする。


「シトネはセイルキメラを知っているか?」

「本で読んだくらいだよ。そもそもキメラが初めて」

「そうか。そうだよな」

「リン君は初めてじゃなさそうだね」

「まぁな。五年も冒険者やってると、いろんな依頼を受けるんだよ」


 師匠に言われて始めた冒険者の仕事だけど、これが案外面白かった。

 いろんな場所にいけたり、見たことのない景色を見れたり、知らないモンスターと戦える経験も大きかっただろう。

 いつでもやめて言いと師匠に言われていながら、五年も続けられたのは、大変さの中に楽しさがあったからだと思う。

 そういう思い出を浮かべて、内心では一人ワクワクしている自分がいる。


「ふぅ~ん。でもキメラって個体数も少ないんだよね? そんなのがどうしてここにいるのかな?」

「あー、それはたぶん、王都の周囲が昔からモンスターの多いエリアだからだと思う」

「えっ、そうだったの!?」


 シトネは大げさな反応を見せた。

 知らなかったのかと、俺のほうが驚く。


「王都は元々、モンスターを討伐、研究するための施設だったんだよ。そこを増強、増築している内に街になっていったんだ」


 元々、王都は別の場所にあった。

 そこが人口の増加と経年劣化で脆くなり、他国との戦争の被害も受けていたことで、別の場所へ移動することになったんだ。

 当時、どこも危険がいっぱいだったわけだが、この地はモンスターこそ多いもの、徹底的に管理された街と設備のお陰で、逆に安全なエリアになりつつあった。

 協議の末、この地に王城を建て直し、王都の街とする計画が進められ現在に至る。


「へぇ~ そうだったんだね」

「割と有名な話なんだけどな」

「うぅ……だって私、ずっと村から出てなかったから……それに興味もなかったし」

「それ二つ目が本音だろ」


 シトネは誤魔化す様に笑いながら小さく頷く。

 魔術学校への入学を目指すなら、その辺りも知っておいた方が良かっただろうに。

 筆記試験で王都の歴史が出なくてよかったなと思うよ。


「さて、そろそろエリアに入る」

「そうだね! 気を引き締めるよ」


 森の雰囲気が変わっていく。

 葉の緑が濃くなり、木々や草の量が増えている。

 視界が悪く、何かが動く音が頻回に聞こえて、警戒を怠るような余裕もない。

 森の恐ろしさは、この閉ざされた視界と様々な生物がいるという点だ。

 キメラだけが危険なわけじゃない。

 その辺りにいる虫だって、中には猛毒を持つものもいる。


「リン君! あれって」

「爪痕だな」


 道中、大きな岩を抉るような爪痕が残されていた。

 間違いなくキメラのものだろう。

 キメラに限った話ではないが、モンスターは自分の縄張りを主張する際、こうした痕跡を残すことがある。


「要するにここはもう、キメラの縄張りだよってことだね」

「そうなるな」


 いつ襲われてもおかしくない。

 俺とシトネは最善の注意を払い、他に痕跡がないか探る。

 その後に足跡、尻尾をすった跡などを見つけ、慎重に辿っていく。

 そうしてたどり着いたのは、一つの大きな洞穴だった。


「ぅ……臭い」


 シトネが鼻を塞ぐ。

 洞穴から吹き抜ける獣臭が鼻にツーンとくる。

 キメラ特有の複数の悪臭が混ざり合った匂いだ。


「ここが巣穴で間違いなさそうだな」

「どうする? 出てくるまで待つ?」

「いいや。どうせ中にはキメラしかいないだろうし――」


 先制攻撃を仕掛けるのが一番手っ取り早い。

 俺は右腕を前にかざし、大きく手のひらを開く。


「色源雷術――赤雷!」


 赤い稲妻を放つ。

 稲妻はかけぬけ、洞穴の奥で何かに当たる。

 そして、ドゴーンという破壊音の直後、洞穴の上部分がひび割れる。


「下がれ!」


 俺とシトネが後退する。

 跳び出してきたセイルキメラが、ギロっとこちらを睨んでいた。


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