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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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73.長期休暇

「明日から一か月の長期休暇に入る。慣れない学校生活で疲れも溜まっているだろう。皆、存分に休暇を楽しんでくれ」


 教室に集まった俺たちに向けて、担任の先生が清々しい笑顔でそう告げた。

 魔術学校では毎年、新学期から約三か月後に長期休暇を設けている。

 期間は一か月で、その間は簡単な課題が出されるのみで、他は何をしていても良い。

 遠く離れた地から来ている者にとっては、久々に故郷でゆっくりできるありがたい期間だ。


「休みって言われてもな~」

「僕は忙しいよ。この時期は特にね」

「そうなのか?」

「ああ。一応は貴族だから、食事会とか色々出席しないといけなくてね」

「なるほど」


 俺には必要なくなった行事だな。

 

「じゃあ休み中はあんまり自由もないのか?」

「ああ。残念ながらね」

「そうか。暇なら訓練相手を頼もうと思っていたんだけど」

「すまない。僕もぜひお願いしたいところだが、こればっかりはうるさくてね。次にちゃんと会えるのは、もしかすると休み明けになるかもしれないよ。セリカも含めて」

「そっか。無理するなよ」

「君のほうこそ」


 学校の校舎前でグレンとセリカと別れ、俺とシトネは屋敷への帰路へつく。


「シトネはどうするんだ? 休み中」

「どうって?」

「みんなみたいに故郷へ戻ったりとかだよ」

「あぁ~ 私はするつもりないかな。ほら、前にも話した通りだし」


 シトネは先祖返りだ。

 その影響で、村の大人たちからは偏見の目で見られていた。

 彼女の両親も含めて……

 後になって、良くないことを聞いてしまったと反省する。


「だからさ。もしリンテンス君が嫌じゃなかったら、休みの間も屋敷にいさせてほしいなって」

「嫌なわけないよ。俺もシトネがいないと寂しいから」

「本当?」

「ああ」

「えっへへ~ ありがとう、リンテンス君」


 シトネが嬉しそうに笑って、俺も笑い返す。

 しかし、とはいっても休みの間、俺には大してやることがない。

 あれだけの戦いがあった後で、やることがないなんて贅沢だとは思う。

 それでも仕方がない。

 師匠はずっと忙しくしていて、ほとんど屋敷へは戻っていない。

 何か手伝えることがないか聞いても――


「まだ大丈夫だよ。君はもうしばらく、学生らしく日々の生活を楽しみたまえ。青春は過ぎてしまうと取り戻せないぞ」


 とか意味深な発言だけ残して、関わらせてはくれなかった。

 師匠のことだから、何か企んでいるのだろうけど、お陰様で俺はずっと暇だ。

 悪魔の侵攻は止まっている。

 続いていた英雄扱いも、一月前くらいから落ち着いて、普段通りの日常がゆったりと過ぎていた。

 平和なことに文句を言う。

 やはり贅沢だと思いつつ、何かないかと探している。


 そんなことを考えていると、目の前は自分の屋敷だった。

 結局何も思いつかなくて、はぁと大きなため息を漏らして玄関を開ける。

 すると――


「ん?」

「何か落ちたね」

「ああ」


 玄関のポストから、一通の封筒がヒラリと床に落ちた。

 ゆっくり拾い上げて送り主を確認する。

 封筒の表面には、ギルド会館王都支部と書かれていた。


「ギルドからか」

「ギルドって冒険者の?」

「ああ」

「そっか。リンテンス君って冒険者としても活動してたんだよね」


 その通りだが、最近は全く顔を出していない。

 自分でも忘れかけていたことを、一通の封筒で思い出せられた。

 気になった俺は、さっそく中身を見てみることに。


「えーっと。リンリン様、この度は突然のご連絡失礼します……リンリン様?」

「え、あぁ……」


 シトネが目を丸くして俺を見つめる。

 そっちも忘れていたな。

 というか、忘れたままでいたかったよ。


「リンリンってリンテンス君のこと?」

「ああ。正体がバレないようにって、師匠が勝手に登録した偽名」

「そういうこと! ビックリした~ リンテンス君らしくない名前だから」

「俺もそう思うよ」


 ため息をつく。

 師匠のネーミングセンスには困ったものだ。

 加えてあの衣装……また思い出したくないことを思い出した。


「続きはなんて書いてあるの?」

「ん? ああ、えっと……」


 手紙の内容を簡単にまとめる。

 長々と丁寧な文章が並んでいたが、端的に言えば、俺宛の依頼が大量に溜まっている。

 そろそろ受注するか破棄するか決めてほしい。

 という感じのことが書かれていた。


「現状で百を超えました……そんなに溜まってるのか」

「凄いね! リンテンス君はギルドでも大人気なんだ!」


 それにしても溜まり過ぎでは?

 確かに半年以上放置してるけどさ。

 というかギルド側で断ってくれても良いと思うんだけど。


「やれやれだな」

「どうするの?」

「どうせ暇だし、久しぶりにギルドへ顔を出すよ。エメロード家からの援助もなくなったし、そろそろ資金調達も必要だからな」

「私も一緒に行ってもいいかな?」

「え、手伝ってくれるのか?」

「うん! 迷惑じゃなければだけど」

「もちろん良いよ。むしろありがたい」


 ということで、休み期間中にやることは決まった。

 シトネも一緒なら、昔より楽しくなりそうだ。

 

 そして後になってから気付く。

 ギルドに行くということは、あの格好を披露しなければいけないという事実に……

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少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


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