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70.最強の魔術師

 魔術学校での戦闘が終わり、静かな夜を過ごす。

 アルフォースは一人学校の闘技場で佇み、空を見上げていた。


「さて、ようやくここまで来たね」


 この五日前――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 大陸の北部には砂漠がある。

 元々は大国があったそうだが、半世紀ほど前にモンスターとの戦闘で半壊。

 今では何も残っていない。

 いいや、古くからある遺跡だけが、ぽつりと残っていた。


 その遺跡は砂漠のど真ん中にある。

 とても目立つが、普通は誰も訪れない。

 周囲には強力なモンスターがいて危険だし、そもそも訪れる理由がない。

 そんな場所にいるとすれば、よほどの命知らずか、どこかの世界からきた悪魔だけだろう。


「やぁやぁこんばんは。君が六柱の一人、中将フルレティだね?」

「そういう貴方は、当代最高の魔術師アルフォース・ギフトレンですね?」

「そうだとも! さすがは悪魔一勤勉な男。僕のことは調査済みってところかな」

「ええ。ですが、まさかそちらから来るとは思っていませんでしたよ」


 遺跡の中で話す二人。

 中将フルレティは、魔界の三大支配者に使える幹部の一人。

 悪魔随一の頭脳を持ち、計算高く思慮深い。

 その見た目は、人間の成人男性と変わらない。

 ある意味、人間にもっとも近い悪魔と呼べなくはないだろう。

 もちろん、人間とは比べ物にならない魔力を有しているのだが――


「一応確認しておきますが、どうしてここへ?」

「なに、僕の眼は特別製だからね。君の隠れている場所くらい簡単に見つけられるのさ」

「それは知っています。私が聞いたのは、何の目的でここへ訪れたのかということですよ」

「そんなの決まっているじゃないか」


 アルフォースは不敵に笑い、杖を構える。


「君を殺すためだよ」

「そうですか」


 フルレティがパチンと指をならす。

 その瞬間、地面がひび割れ、遺跡がバラバラにはじけ飛ぶ。


「おーっと、危ないことするな~ それに何だい? この数のモンスターは」


 遺跡から出たアルフォースが目にしたのは、砂漠を覆いつくすほどのモンスターの群れだった。

 大小さまざまなモンスターがひしめき合い、アルフォースを見ている。


「貴方と戦うことは想定済みです。貴方の持つ権能を相手にするなら、これくらいの戦力は必要でしょう?」

「なるほど。さすが仕事熱心な悪魔だ。リンテンスが知ったら見習えと言われそうだ」

「リンテンス? ああ、貴方の弟子でしたね」

「へぇ~ そこまで知っているのか」

「当然です。彼もまた、排除対象ですので」


 フルレティが夜空に手をかざす。

 彼の持つ能力によって、雲一つない空から大量の雹が降り注ぐ。

 高速で降り注ぐ雹には、魔術的防御を貫通する効果が付与されていた。


「やれやれ」


 アルフォースは権能でオレンジ色の蛇を生み出し、頭上で蜷局を巻き雹の雨を防ぐ。


「それは困るな~ 尚更ここで殺さないといけないようだ」

「私としても、一番の障害である貴方はここで死んで頂きたい」

「そうかそうか! じゃあ一つ、命の奪い合いをしよう」


 さらにアルフォースは権能を発動。

 無数に、無形質に、空想を具現化した幻獣たちを呼び出す。

 伝説に登場しそうな巨人から、可愛らしくも恐ろしいウサギの怪物まで。

 形容しがたい見た目をした化け物もいて、どちらが悪魔かわからない。


 モンスターの群れと幻獣の群れ。

 二つの異形がぶつかり合う。


「ねぇねぇ、一つ聞いて良いかな?」

「何ですか?」

「君がこっちへ来たってことは、三人の支配者の復活が近いってことでいいのかい?」

「さぁどうでしょうね」

「嘘が下手だな~ 君がいる時点でそうとしか考えられないだろう」

「だと思うなら無駄な質問をしないてください」


 異形たちがぶつかり合う最中、二人も交戦する。

 雹の雨と魔術の嵐。

 互いに一歩も引かず、異形たちも押し合って拮抗している。


「おやおや、これじゃ決着がつかないかな?」

「いいえ、いずれ決着はつきます。貴方は所詮人間だ。先に体力の底が見えるのは貴方でしょう?」

「う~ん……確かに! じゃあこういうのはどうかな?」


 アルフォースは杖をぐるっと回し、紫色の光の玉を生み出す。

 光の玉は彼の前で形を変え、人型に近づく。


「僕の権能はね? 空想を現実にするんだよ。空想であれば何だって生み出せる。君たちの崇める支配者ってさぁ、僕のイメージだと」


 人型から更なる変化。

 歪に折れ、ごつごつととがり、腕は二つから四つに増え、背中からはまがまがしい翼が生える。


「こんな感じじゃないかな?」


 幻獣召喚――魔王。


「これは――」


 フルレティは一瞬で察する。

 形はどうあれ、アルフォースが生み出したそれの力を。

 瞬時に防御態勢を整えようとした。

 しかし――


「っ!?」


 その時にはもう、幻の魔王が彼の肉体を抉っていた。


「しまったな。質問の答えを聞く前だったのに」


 フルレティの肉体が消滅していく。

 たった一撃で身体の七割以上を抉られれば、悪魔といえど耐えられない。

 モンスターたちも幻獣に噛み殺され、徐々に数を減らしていった。

 声の出せないフルレティは、最後までアルフォースを睨んでいる。


「そうだ! 最後に一つだけ訂正させておくれ」


 何をだ?

 と、フルレティの視線が語る。


「僕は最高の魔術師じゃない。最高最強の魔術師だ。次に巡り合うことがあれば、その一文も付け加えておいておくれ」


 これは戦いの終わりであり、一つの戦いの始まり。

 世界はここから、激動のように変化していく。

これにて第二部は完となります!

面白かった! もっと続きが読みたいという方は、☆☆☆☆☆⇒★★★★★してくれると嬉しいです。

明日から第三部が開始となりますが、更新は昼の一回のみとなる予定です。

他の作品も投稿予定ですので、よければぜひ読んでください。


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうどっちが悪魔かわからんな。師匠強すぎ笑
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