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7.スパルタ修行開始

 浮遊する複数の島。

 木が一本だけ生えている島もあれば、池があったり草原となっていたり。

 世界各地にある島々を具現化して、空のキャンバスを彩っているようだ。

 これを一人の魔術師が具現化しているなんて、体験している俺でも信じがたい。


「なっ……なんて膨大な魔力なんだ」


 魔力量には自信があったけど、俺なんか足元にも及ばない。

 大自然を相手にしているような壮大さと、包み込むような包容力を感じる。

 ごくりと息を飲み、師匠をじっと見つめて思う。

 これだけの魔力を正確にコントロールしていて、本人はいっさい疲労を感じさせない。

 余裕そうに微笑んでいる。


「さてと、ステージは整ったことだし、始めようか?」

「何をするんです?」

「戦うんだよ。僕と君が」

「……え?」

「あれ? 聞こえなかったかな~ これから僕と本気で戦ってもらうから」

「い……いやいやいや! ちょっと待ってください!」


 俺と師匠が本気で戦う?

 そんなの絶対無理だ。

 これだけの力を見せつけられて、戦いになるレベルじゃないぞ。


「冗談ではないよ。手っ取り早く君の実力を見るには、戦うのが一番なんだ」

「戦うと言っても……今の俺が使えるのは……」

「雷属性一種だろう? わかっているから来なさい。まぁもって一秒耐えられたら上々かな?」


 そう言われて、ムッとする。

 いくら何でも舐めすぎだと思った。

 その苛立ちが表情に出てしまったらしく、師匠はニヤリと笑う。


「うん、良い顔になったね」

「……戦えばいいんですね?」

「ああ、じゃあ始めるよ? よーい……」


 こうなったら全力で戦ってやるぞ。

 もしかしたら、この戦いで何か掴めるかもしれない。

 世界最高の魔術師、その実力を体感できるなら、願ったり叶ったりじゃないか。


「――ドン!」


 と、粋がって挑んだものの……


「……」

「いやー、驚いたね~ まさか三秒も耐えるなんて」


 草原に大の字で横たわる俺は、まっすぐ空を見ている。

 その横に師匠がいて、朗らかに笑いながら腰を下ろした。


 嘘だろ?

 あり得ない。

 俺は一体……何をされたんだ?

 まったく認識できなかった。

 俺は魔法を使えたのか、師匠も使ったのかすらわからない。

 見えたのは一瞬だけ。

 とてつもなく速くて、重くて、鋭くて、白い何か。

 その何かが視界を覆って、俺の全てをかき消してしまった。


「どうだった?」

「……何もわかりませんでした」

「そうかそうか。まっ、最初だから仕方がないけど、君はやっぱり優秀だ」


 どこが?

 疑問に思ったことの答えを、師匠はすぐに口に出す。


「一秒以上耐えたこともそうだが、何より君は意識がある。さっきのを受けて意識を保っていられるのは、相当な魔術センスを持つ者だけさ」

「そう……なんですか?」

「うん。今のは最終確認でもあったんだ。僕の見立てに間違いはないのか。まぁ基本的に僕が間違えるとかありえないんだけどね。文句なしに合格だよ」


 師匠は立ち上がり、俺に手を伸ばした。

 その手を握ると、ぐっと力強く引っ張り上げらえる。


「君のセンスがあれば、これまで誰も到達できなかった術師の極致へ行けるかもしれない」

「本当ですか?」

「僕は間違えない。君が信じてくれるなら、その通りになると約束しよう」

「信じます! 師匠」

「う~ん、いいねその師匠って響き。ずっと弟子が欲しかったんだ~」


 師匠と俺は向かい合う。

 俺が見上げて、師匠が見下ろす。

 こうして、俺の修行の日々はスタートした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さーて、今日は痛い修行内容だぞ~」

「痛い?」


 不穏なワードが師匠の口から飛び出す。

 場所は師匠の作り出した空間。

 浮遊する島の一つで、距離をとって向かい合っている。


「君はこれから雷属性の魔術を極めなくてはならない。それ以外の選択肢は残されていない」

「はい」

「新しい術式を生み出すって作業をしてもらうけど、その前に大前提として力に慣れるという工程が大事なんだ」

「慣れるですか? つまりどんどん使えと?」

「いいや」


 師匠は大げさに首を横に振る。

 続けて師匠は、惜しみないほど満面の笑みで、とんでもないことを口にする。


「今から君には、僕の雷撃を受け続けてもらうから」

「……は、はい?」

「もぉ~ 君はそうやって肝心なことを聞き返すね。言っておくけど聞き間違いじゃないよ」

「い、いや……だとしたら無茶ですよ。師匠の雷撃なんて受けたら最悪し――」

「だーい丈夫! 君は落雷にも耐えられたようだし、魔力による強化はオーケーだからさ」


 そ、そういう問題ではない気が……


「じゃあいっくぞ~」


 師匠の身体から雷撃がビリビリ起こっている。

 この時点で察した。

 冗談ではなく、師匠は本気なのだと。


「レッツびりびり~」

「ぎゃああああああああああああああああああ」


 俺はこの日、生まれて初めて発狂した。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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