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66.憑依装着

 召喚された幻獣が役目を終えて消えていく。

 それは物語の一頁のようにあっという間の出来事だった。

 

「ぅ……ぐ……」

「おや? 驚いたね。その状態でも死なないなんて」


 厳重に四肢をもぎ取られ、ダルマのようになったグレゴア。

 全身から血を流し、地面へ落下する。

 それでも命を繋いでいるのは、彼が悪魔の中でもタフな身体を持っていたからだろう。


「化け物が……」

「はっはっはっ! 君にそう言われたくはないな~」


 グレゴアはギロっとアルフォースを睨む。

 しかし、もはや戦う力は残されていなかった。

 生きていると言っても時間の問題で、放っておけばいずれ終わりが来る。


「まぁ良い。君もそこで見ていると良いよ」


 アルフォースはそう言って、空を見上げる。

 視線の先に見える稲妻を、恋人を見つめるような視線で眺めながら言う。


「僕の弟子がどこまで成長したのかをね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ありえない」


 無数の砲撃が雨のように降り注ぐ。

 隙間なく、逃げ場なく、止むことのない嵐のように。

 そんな攻撃を一筋の雷撃がかき消し、多重の結界障壁を突き破る。


「こんなことが……」


 エクトールの額から汗が流れている。

 彼の心情を考察するなら、おそらくこう思っているのだろう。


 ありえない。

 ただの人間で、聖域者でもない魔術師に、自分がここまで追い込まれているなんて。

 そんなことがあっていいはずがない。


「――赤」

「ぐっ……」

 

 赤雷がエクトールの左腕を掠める。

 結界障壁では防御しきれないから、エクトールも回避するしかない。

 対する俺は、戦闘開始直後からほとんど動いていない。

 ほぼ同じ位置から攻撃を繰り返し、放たれた攻撃は赤雷でかき消していた。


「どうした? 悪魔っていうのはこの程度なのか?」

「……いいでしょう。その減らず口を叩けなくしてあげます」


 エクトールが術式を大量に展開させる。

 すべて砲撃の術式だが、何かを企んでいるのがわかる。

 放たれる砲撃の雨を、赤雷で相殺。

 砲撃と赤雷の衝突で爆発が起こり、視界が一時的に遮断される。


 気配が――

 

 その一瞬をついてエクトールは転移の術式を発動。

 俺の背後に回り込み、ゼロ距離から砲撃を撃ち出そうと手を伸ばす。


「もらった!」

「――青」


 青い稲妻がわずかに走り、エクトールの眼前から俺が消える。


「なっ――」

「遅いぞ」


 不意をついたエクトールの頭上に回り込み、背中を蹴り落とす。

 吹き飛んだエクトールは地面に叩きつけられた。

 土煙が舞う地面を、俺は上空から眺めている。

 

「いくら転移で一瞬に移動しても、その直後の行動が遅ければ意味ないぞ」

「……そうですか。参考になりましたよ」


 土煙が消え、エクトールが膝をついている。

 むっくりと起き上がり、飛翔魔術で上空に戻ってきた。

 そして、彼は俺に問いかける。


「貴方は誰ですか?」

「は? 俺のことを知っているんじゃなかったのか?」

「ええ、知っていますよ。ですが、私が知っている貴方と、今の貴方は明らかに別人だ。一体何があったのかと、疑問で頭が一杯ですよ」

「ああ、まぁそれはそうだろうな」


 憑依装着。

 師匠の修行で獲得したスキル。

 未来の自分を投影、自身の身体に憑依させることで、一時的にその力を引き出す。

 今の俺は、未来の自分自身を体現している。

 その影響か、瞳の色が七色に変化していて、魔力量も跳ね上がっている。

 さらに完成された色源雷術は、悪魔の力すら凌駕しているようだ。

 ちなみに飛翔魔術なしで空を飛んでいるのも、色源雷術の応用で、飛んでいるというより立っているというほうが正しい。


「ふっ」

「何を笑っているのです?」

「いや、何だか楽しくなってきてさ」

「楽しい……ですか。なるほど、どうやら認識を改める必要があるようですね」


 そう言ってエクトールは小さくため息を漏らす。

 先ほどまでの感情的な態度が落ち着き、冷静さを取り戻している様子だ。


「貴方は強い。ですがやはり、悪魔である我々には届かない」

「へぇ、今の戦いを経てそう言い切れるのか?」

「はい。我々悪魔は、こちらの世界では力を制限されていますからね」


 エクトールは左腕の腕輪に手をかける。


「この腕輪は、我々の制限を一時的に外すことが出来ます。本当は使うつもりはなかったのですが、貴方を倒すには、全力でなくては足りないらしい」


 その腕輪を握りつぶした。


「見せてあげましょう。私の真の力を! そして恐怖するが良い!」


 腕輪を破壊した途端、膨れ上がる魔力。

 彼の周りを突風が吹き荒れ、漏れ出した魔力場がバリバリと稲妻のように走る。

 なるほど確かに、本気ではなかったのだと理解した。


「いいね。第二ラウンドといこうか」

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少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一時的にってことは、制限時間あるのかな? まあ、いつかこれくらい強くなれるんだろうが、いつになるのかな [一言] 誤記報告です 誤:第二ランド 正:第二ラウンド
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