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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二部

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63.受け入れろ

 白い世界に七色の雷が交錯する。

 互いに同じ術式を扱い、同じ色の雷撃をぶつけ合う。

 否、同じでは決してない。

 起源から生み出されたそれは、俺が目指すべき頂にたどり着いた自分自身。

 一撃一撃が重く、速く、鋭く迫る。


「ぐっ……」


 視界を覆うほどの赤雷を、間一髪のところで躱し、藍雷の槍を投擲する。

 槍は届く前に赤雷で弾かれ、続く攻撃を受ける。


 修行開始から相当な時間が経過しただろう。

 時計なんてないから、正確な時間はわからない。

 一秒でも早く終わらせて、師匠のところへ行きたいという気持ちはあれど、そんなことを考える余裕は当の昔になくなっていた。


 強い……強すぎる。

 わかっていたことか?

 いや、ここまでとは予想できなかった。

 全てにおいて完璧で、隙の一つもない術式の発動。

 まるで雷そのものと対峙しているような感覚にさえ襲われる。


 これが未来の俺?


「はははっ」


 そう思うと、思わず笑ってしまう。

 呆れた笑いだ。

 同時に喜ばしくもある。

 遠い未来とはいえ、いずれ自分がこんな風に強くなっていたのだと思うと、無性に誇らしい。

 そして、何もかも足りない今の自分に腹が立つ。


 力の差は歴然。

 それでも戦えているのは、俺が人間で、相手が作り物だからだ。

 思考、駆け引き、直感といったものは、人間である俺にしかない。

 ギリギリの攻防にも慣れ始め、多少の余裕が出来たことで、勘頼りだった戦いにも思考が入り込む余地が生まれる。

 そうして俺は思考を回らせる。


「どうする?」


 どうすればあいつに勝てるんだ。

 圧倒的な実力差を前に、俺はどう戦えばいい?

 多少の余裕が生まれても、実力差がひっくり返るわけじゃない。

 一瞬でも気を抜けば殺されるという感覚は、始まった時から消えていないんだ。

 そもそもだ。

 勝てるビジョンが全く浮かばない。

 始まってからずっと、これに勝てるイメージをしたくても、敗北の予感が過るだけだ。


「黄雷――竜!」

 

 生成された竜が黒い影に迫る。

 ドラゴンすら抑え込んだ攻撃だが、黒い影に触れた途端、はじけて消えてしまう。


「ちっ、この程度じゃ陽動にもならないな」


 大技を繰り出しても、大した隙は生まれない。

 当然ながら魔力の消耗は感じられず、こちらの体力が一方的に削られている。

 このまま戦っても、殺されるのは時間の問題だ。


 勝つ方法を探れ。

 突破口はどこにある?

 師匠は、俺なら勝てると言ってくれたんだ。

 それなら不可能なはずもない。

 絶対に勝てない試練を、師匠が与えるはずないんだ。


 と、己を鼓舞しながら戦い続ける。

 攻撃は届かず、重い一撃を受け続け、ボロボロになっていく手足。

 

 勝てるのか――


 脳裏に浮かぶ弱気な言葉を、何度振り払って戦ったかわからない。

 師匠のこと、シトネやグレンたちのことを思い出して、勝たなければならないと奮い立たせる。

 それでも……肉体の限界が先に来る。


「しまっ――」


 ギリギリの攻防に出来た綻び。

 着地地点を見誤り、ツルっとドン臭く足を滑らせる。

 普段なら絶対にしないミスを、極限まで追い込まれしてしまった。

 一瞬の隙をついて、最大威力の赤雷が迫る。


 回避不可能。

 防御も間に合わない。

 俺は心の中で敗北を……赤雷を受け入れてしまう。


「ぐはっ……?」


 赤雷をまともに受けた俺は、全身が丸焦げになったと思った。

 しかし、生きていることに驚く。

 明らかに即死レベルの攻撃をモロに食らったはずだった。

 痛みはあるし、ダメージは入っている。

 だけど……


「生きてる?」


 疑問が浮かび、脳がサラッとクリアになる。

 思い出したのは師匠とのやりとり。


 そういえば、師匠は俺に勝てと言った。

 戦って勝て……でも、倒せとは一言も言っていない。

 戦うということを、倒すという風に曲解していたのは俺自身だ。


 ここで一つの仮説が思い浮かぶ。

 もしも成功すれば、俺は生き残ることが出来るだろう。

 しかし、万が一間違っていた場合、その時点で勝敗が決してしまう。

 危険で分の悪い賭けだ。

 それでも、この方法以外に、勝利を掴む手は思いつかない。

 何より相手は――


「俺自身だろう?」


 俺は両腕を広げた。

 何もしない。

 ただ、相手の雷撃を受け入れる準備をする。

 放たれる赤雷は、俺を貫通して抜けていく。

 一歩、一歩とゆっくり近づき、黒い影に歩み寄る。

 

 そして――


 俺は黒い影をギュッと抱き寄せた。


「良かった。思った通りだ」


 痛みはない。

 攻撃もしてこない。

 どうやら、俺の予想は当たっていたらしい。

 

 相手は俺の起源から生まれた存在。

 言い換えれば、俺自身の分身体でもある。

 俺自身の攻撃なら、受け入れてしまえば傷つかない。

 自分の力なのだから、俺が自分の一部だと思えば、なんてことはなかった。

 赤雷を受けた時も、諦めから心は受け入れていた。

 今度は全身で、未来の自分自身を受け入れる。


 流れ込んでくる。

 黒い影から、俺の力の全てが濁流のように。


「ありがとう」


 そんな俺から出た言葉は、意外にも感謝の一言だった。

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少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここ数話BLEACHや烈火の炎を合わせたような内容で、ワクワク間がとまりません!楽しく続き読ませてもらいます!
[気になる点] NARUTOでもみた
[良い点] ブリーチみたいでかっこいいですね
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