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57.夢の世界で

 決意を胸に、俺は立ち上がる。

 いや、身体はもう立っているけど、心がという意味で。


「よーし! それじゃさっそく始めようか」

「始めるって、何をです?」

「もちろん修行だよ。それも初めての……ね。特別なことをする」


 師匠が特別なんて言い方をすると、なぜだか無性に不安が過る。

 続けて師匠は俺に言う。


「君には一番可能性があると言ったね? でも、今の君じゃ確実に負ける」

「えっ……負けるって」


 さっきと話が違うような?


「当然だろう? 相手は聖域者ですら勝てなかった悪魔だよ? 神の加護も権能も持たない魔術師では戦えない。だから修行して強くなってもらう。これから、最短時間で」


 悪魔の襲撃まで最大でも一週間。

 これもただの予想でしかなく、もしかすると明日や明後日という可能性もゼロではない。

 それほど短い時間で、俺に聖域者以上に強くなれと言っている。


「そんなことが出来るんですか?」

「出来るさ。僕にはそのための秘策がある」


 師匠は胸にトンと手を当ててそう言った。

 これまで師匠から色々と教わっているけど、その秘策とやらに心当たりはない。

 考えらるとすれば、師匠の持つ権能だが……


「リンテンスは僕についてきて。他のみんなはすまないけど、ここに残ってもらえるかな?」

「わかりました」

「うん。なら行こうか」


 師匠につれられ屋敷を出る。

 向かった先は、魔術学校の闘技場だった。

 すでに鍵を借りていたらしく、中へ入って明かりをつける。

 当然のことながら、他には誰もいない。

 二人きりの貸し切り状態なんて、中々味わえないことだが、今は素直に喜べなくて残念だ。


「さてさて、説明を先にしておこうか」


 師匠はクルリとこちらを向き、改まって話し出す。


「さっきも言った通り、今の君では悪魔には勝てない。単純な戦闘能力だけなら、君より強い人は何人か知っているしね。それでも君を選んだのは、君の中に可能性が眠っているからだ」

「可能性……何度もそう言いますけど、可能性って何なんですか?」

「うーん、言い換えるなら潜在能力? いや、魔術師としての到達点か。改めて説明しようと思うと難しいね。結論だけ言ってしまうと、未来の君なら悪魔にも勝てる力をもっているんだよ」

「未来?」


 唐突に、思いもよらない単語が跳び出して、思わず声に出てしまった。


「未来、あるいは将来、君は魔術師としての極致にたどり着く。僕の眼は特別製でね? 色々なものが見える。君の中にある本当の力は、君が思っている以上に凄いんだよ」


 そう言って、師匠は俺の起源を指さす。

 師匠の眼には、人の起源が見える。

 本来見えないものが見える眼。

 神の権能の一つとして与えられたものだと聞いた。

 師匠の眼は、未来すら見えているのだろうか?


「厳密に未来を見ているわけじゃないさ。ただわかるんだ。そうなるってことがハッキリわかる」


 師匠は話しながら、左腕に魔力を集める。

 すると、白い花びら生成され、一本の杖を生み出した。

 師匠が普段、武器として使っている魔術の杖だ。

 見た目は派手な装飾の施されたタダの杖だけど、なぜか剣より斬れたり、硬い岩を粉砕できたりする。

 師匠曰く、師匠のイメージによって強化されているらしい。

 その杖を持ち出し、コンと地面をたたく。


「今から君には【夢幻結界】という場所に入ってもらう。そこは僕の権能で生み出した全く別の空間だ」

「何度か修行で使っている空間とは違うんですか?」

「違うよ。系統は同じだけど、こっちは色々とアレンジしてあるから」

「そうなんですね。それで俺は、その空間で何をすればいいんですか?」

「戦うんだよ。未来の自分とね」

「えっ……」


 師匠の言葉に驚き口を開ける。

 まったく今日は驚かされてばかりだな。


「正確には、君の起源から読み取った情報を基に作られた幻影だ。君が将来たどり着く姿を具現化し、投影する」

「それと戦って、勝てばいいんですか?」

「そうだとも。勝利すれば、君は未来の自分の力を手に入れられる。その力をもって、僕と一緒に戦ってほしい」

「わかりました」

 

 即答した俺に、師匠は呆れたように微笑む。

 そうして続けてこう尋ねる。


「最後に一つ確認するよ。この修行は一度始めれば止められない。幻影か君、どちらも残っている限り、空間からの脱出もできない。次にこっちへ戻ってくるときは、勝ったときだけだ。負ければ当然死ぬ」


 俺はごくりと頷く。


「相手は未来の君だ。確実に強い……負ける可能性のほうが高い。それでもやるかい?」

「今さらですね。師匠はそれでもやれって言うんでしょう?」

「よくわかってるじゃないか。どの道、悪魔に負ければ終わりだ。命をかけるのが今か、この後かの違いだよ。それに僕は信じている。僕の弟子なら、この程度の試練は簡単に超えてみせると」

「そうですか……なら、弟子として師匠の期待に応えてみせます!」


 師匠が出来ると言ったんだ。

 それなら間違いなんてない。

 今までも、そうして強くなってきたのだから。


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