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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二部

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56.君しかいない

「聖域者を倒した悪魔が、この学校に攻め込んでくるんですね?」

「うん。彼ら自身がそう言っていたらしいよ」


 悪魔と戦ったアベル様が、会話の中でその情報を引き出した。

 

 いずれお前たちの城を落としに行く。 

 残りの楔共も集めておけ。

 そして精々足掻いてみせろ。


 去り際、悪魔はそう言い残したそうだ。

 城と言えば王城だが、師匠の話を聞いた後では受け取り方も変わる。

 残りの楔というのも、聖域者のことだろう。

 彼らの目的は、師匠が教えてくれたことで間違いなさそうだ。

 問題は……


「いつですか?」

「僕の予想だと、一週間以内かな。どれだけの傷を負ったのかにもよるし、最悪もっと早い」


 現在、王城では急いで戦力を集めているそうだ。

 とは言え、聖域者で叶わなかった相手に、魔術師や騎士を何人集めたところで意味がない。

 死体の山を築くだけになってしまうだろう。


「じゃあ……師匠が戦うんですね」

「もちろんさ。そもそも僕以外では止められない相手だ。国王や重鎮たちもそれをわかっているから、もの凄く丁寧にお願いされたよ」


 師匠は笑いながら語る。

 笑い事ではないのだが、師匠らしくて安心する。


「師匠なら負けませんもんね」

「おうとも! と、言いたいところなのだがねぇ~」


 笑顔からの落差。

 急に深刻そうな表情を見せ、自分の頭をポンポンと叩きながら言う。


「正直に言うと、ちょっと厳しいかな」

「厳しいって」

「君も知っての通り、僕はこう見えて強い」


 知っている。

 この世界で最高の魔術師なのだから。


「悪魔が相手でも戦える。ただ相手は聖域者を倒したほどの手練れ……それも二人で攻めてくる可能性が高い。加えて学校を守りながらの戦いだ。一人なら何とかなるけど、二人はちょっとしんどい」

「師匠でも……ですか?」

「うん。だから――」


 師匠が俺の眼を真っすぐ見つめる。

 俺に何かを伝えようとしている眼だ。

 この時点で俺は、師匠がこれから何を言うのか、何となく察した。


「一緒に戦ってくれる仲間がほしくて、ここへ立ち寄ったのさ」


 言葉より先に、視線が雄弁に語る。

 それは……お前だと。


「リンテンス、僕と一緒に悪魔と戦ってほしい」

「――!」


 全身に稲妻が走ったような感覚に襲われる。

 身が震えた。

 恐怖ではなく、武者震いというやつだ。


「わか――」

「待ってください! アルフォート様!」


 返事をしようとした俺の声を、グレンの声が遮る。

 大きな声で怒鳴るように口を挟んだ彼に、全員の視線が向けられる。


「なぜ彼なんですか? 相手は聖域者すら倒すほどの強さなのでしょう? いくら何でも危険すぎます」

「グレン……」


 グレンは俺のことを心配して言ってくれている。

 口にした内容も正しい。

 彼はさらに続けて進言する。


「協力を仰ぐのであれば、残る二名の聖域者に求めるべきではありませんか?」

「残念ながらそれは無理だよ」

「なぜです?」

「う~ん、ほとんど説明しなくてもわかると思うけどな~ ボルフステン家の人間なら、聖域者の事情にも詳しいはずだろう?」


 師匠がそう言うと、グレンは黙り込んでしまう。

 図星だったのだろう。

 それでも、わかった上で聞くしかなかったのだと思う。

納得できないという表情は変わらない。

 そんなグレンに、師匠はあえて説明する。


「僕以外の聖域者は二人。うち一人は数年前から行方不明。さすがに生きているとは思うけど、どこで何をしているかわからない。もう一人、彼女に協力を求めた所で、確実に拒否されるよ」

「どうしてですか?」


 と聞いたのはシトネだった。

 師匠は優しく答える。


「彼女は聖域者だけど、あまり戦闘が得意じゃないんだ。得ている加護も戦いに向いていない。彼女自身がそれを一番理解している」

「そう……なんですね」

「うん。もちろん聖域者だから、その辺の魔術師とは比較にならない強さだよ? それでも悪魔には及ばない。だから勝てない戦いには出てこない。そもそも彼女は隠れるのが得意でね。探すのがまず一苦労なんだよ」


 聖域者にもそれぞれ事情があるようだ。

 要するに、現状で戦える聖域者は、師匠ただ一人。


「聖域者に協力は頼めない。残された魔術師の中で、僕が知る限り一番可能性を持っているのはリンテンスなんだよ」


 グレンたちの視線が俺に向く。

 心配そうに見つめる彼らを見てから、俺は師匠に視線を戻して尋ねる。


「俺なら……悪魔に勝てるんですか?」

「僕はそう思っているよ」


 師匠の答えを聞いて、心の中で決心がつく。

 いや、決心なら最初からついていた。

 師匠に頼られた時点で、回答なんて一つしか思いつかない。


「わかりました」


 俺はまっすぐに師匠の眼を見つめながらそう答えた。

 すると、師匠は嬉しそう微笑む。


「ありがとう。君ならそう言ってくれると思ったよ」

「師匠の頼みですからね。弟子として、断るわけにはいきませんよ」

「はっはっはっ、さすが僕の弟子だ」


 師匠は笑っている。

 俺の隣では、対照的に不安そうな顔をするグレンとシトネ。


「ありがとう、グレン」

「……本当にいいんだな?」

「ああ」

「そうか……」


 グレンは言葉を呑み込んで、拳を俺の胸に当てる。


「死んだら絶交だ」

「おう」


 男の約束を交わす。

 せっかくできた友達と絶交なんて嫌だな。

 これは意地でも勝つしかない。

 それに……


「シトネもごめん。心配しなくて良い……って言っても無理だよな?」

「うん。心配するよ」

「……ごめん」

「ううん。信じてるよ」

「ああ」


 心配してくれる人がいる。

 一人ぼっちじゃないと教えてくれた人たちがいる。

 だから俺は、負けるわけにはいかない。

本日ラストの更新でした。

平日はさすがに二話更新とかになりますが、許してください。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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