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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二部

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52.梔子一射

ようやくリアルのドタバタがひと段落。

全身痛い……

日曜だし更新頑張ります!

 バリバリと雷が走る音が鳴り響く。

 そして――


「行け」


 黄雷で生み出した神竜が、黒き邪竜へ突っ込む。

 弧を描くような軌道で、ドラゴンへと迫る。

 ドラゴンは躱そうと翼を羽ばたかせるが、神竜のほうが速い。

 一瞬で間合いを詰め、ぐるりとドラゴンに巻き付いた。

 雷が走り、苦しそうにしているが、それでも致命傷には遠いだろう。

 

「さて、ここからだな」


 俺は左腕を前に突き出す。


「藍雷――大弓」


 藍雷によって弓を生成。

 大きさはこれまでの比ではなく、ドラゴンと同規模のサイズで展開する。

 藍雷の弓は、光魔術の弓とほぼ同じだ。

 威力をあげたいなら、弓そのものを大きくすればいい。

 光魔術の弓の場合は、大きくするほど精度が落ちてしまうが、藍雷はそのデメリットがない。

 しいて言えば、莫大な魔力を消費するだけだ。


 ふと、懐かしい記憶が脳裏によぎる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「リンテンスはさ。モンスターと戦うより、人と戦う方が弱くなるね」

「は?」


 修行中のことだ。

 何の脈絡もなく、師匠からそんな指摘を受けた。

 突然だったからか、反応も荒っぽくなる。


「おいおい、そう怒らないでおくれよ」

「あ、いやすみません。どういう意味でしょう?」

「言ったまんまだよ。君は人を相手にする方が弱くなる」


 二度同じことを言われたが、俺は意味がわからなくて首を傾げた。

 モンスターのほうが戦いやすいかと言われると、別段そうでもない。

 そんな俺を見て、師匠はやれやれとジェスチャーをする。


「なるほど、自覚なしか」

「……」

「仕方ない、教えてあげよう。リンテンス、君は人が相手だと無意識に手加減しているんだよ」

「手加減……本気でやってないってことですか?」

「うん」


 即答する師匠。

 そんな自覚はない。

 誰が相手だろうと、全力で戦っているつもりだった。

 でも、師匠の目にそう見えているのなら、正しいのだろうとも思う。

 師匠は続けて理由についても話す。


「原因は君の優しさだ。君はとても優しい。裏切られても、蔑まれても、根っこの部分の優しさは消えない。人を相手にすると、その優しさが滲みでてしまう。冒険者の依頼で盗賊退治をやっただろう?あの時も君は、殺さないように力をセーブしていたよ」

「そう……だったんですね」

「落ち込む必要はないさ。別に悪いことじゃないからね。人は殺したら死んでしまう生き物だ。強くなると忘れてしまいがちなことを、君はちゃんと理解しているだけだよ」


 師匠は微笑みながらそう言ってくれた。

 だけど……


「ただ、それは甘さとも言い換えられる。聖域者になるなら、その甘さを制御できるようにならないとね」

「制御ですか?」


 てっきり捨てろと言われるものだと思った。

 師匠はこくりと頷いて言う。


「そう、制御だ。手を下すべきとき、情けをかけるとき。それらを感情ではなく、思考で選択できるようになりなさい」

「悪には容赦するな、という意味ですか?」

「まぁ大体そんな感じかな。匙加減は君次第だけど、ようするにちゃんと考えられるようになれってことだよ」

「考える……難しそうですね」

「うん。捨ててしまうほうが楽かもしれない。でも、その優しさは君らしさでもある。捨ててしまうのは勿体ないし、何よりそれをなくせば、ただの人でなしになる」


 そうして、師匠は最後にこう言った。


「だからリンテンス、君は優しいまま強くなりなさい」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 師匠に言われたことを思い出して、ふいにため息がもれる。

 そういえば、同じことを最近グレンにも言われたっけ。


 すみません師匠。

 俺はまだまだ、自分の感情を制御できていないみたいです。

 

 だから今は、ほっとしている。


「人じゃなくて安心したよ」


 ドラゴンは神竜に巻き付かれ身動きがとれない。

 この隙に、あれを倒せる一撃を構えよう。

 藍雷で生成された巨大弓の威力は、一撃で山を穿つほどに達している。

 ただ、おそらくこれでも足りないだろう。

 ブラックドラゴンの鱗は、赤雷の最大出力でも容易には貫けない硬さだ。

 威力を底上げしても、ダメージ止まりになる。

 もっと貫通力が必要だ。

 ならば――


「赤雷」


 藍雷の矢に赤雷を纏わせる。

 色源雷術最大の貫通力を誇る赤雷。

 単体で倒せないなら、こうして混ぜ合わせれば良い。

 これこそ、術式の応用。


 対する標的は、未だ神竜に阻まれ動けない。

 狙いはまっすぐ。

 矢の先端を、ドラゴンの心臓部に向ける。

 

 色源雷術――(こん)


梔子一射(くちなしいっしゃ)


 赤黄色の一撃が放たれる。

 稲妻は流星のごとく軌道を残し、ドラゴンの心臓を貫いた。

 悲鳴をあげ、黄雷が拡散する。

 ぽっかりと開いた穴から全身へ、雷撃が走った。


「ふぅ」


 ほっと息をはく。

 力尽きたドラゴンは、ゆっくりと地面に落下していった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的にも大変面白い物語だと思います。 この部分にもある情報の挿入や最後の方の情報の添加により、一層物語に惹きつけられ、日々の更新が楽しみで、待ち遠しいです。 [気になる点] 藍雷の矢に赤…
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