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46.リンテンスを捕まえろ!

 続いての訓練内容は鬼ごっこ。

 より上位の順位を捕まえて、自分の順位を上げていく。

 ただし、一人だけ全く状況が異なっていた。

 

「では各自指定されたポイントに向ってくれ!」

「すぐに見つけるぞ、リンテンス」

「ああ、待ってる」

「ふっ、その余裕もいつまでもつかな?」


 グレンは俺にそう言って、反対方向へと歩いて行った。

 シトネとセリカも同様に異なる位置へ向かう。

 どこへ向かったのはは、配布された個人にしかわからない。

 ちなみに俺は、このスタート地点だったりする。


「ふぅ、一時間逃げ切れば勝ち……か」


 今回のルール上、参加者は二つに分かれるだろう。

 一つは自分の順位を守りながら、より上位の参加者を追う者。

 そして、順位が最初から低い者は、逃げることは考えず上位陣を探し、追い回すことに徹する。

 対して俺の場合は、この二つには当てはならない。

 なぜなら、俺より上はいないから。

 一位である俺は、一時間残りの約一五〇人から逃げ続けなければならない。


 正直、ちょっとしんどいと予想している。

 強化魔術以外は使えず、相手を必要以上に攻撃することも禁止されているから、俺は逃げるしか出来ない。

 せめて攻撃が許可されていれば、追ってきた人たちを返り討ちに出来るのに……


 とか物騒なことを考えている内に、全員が所定のポイントへたどり着いたようだ。

 合図は先生がもっている大筒の魔道具。

 とても大きな音がなるから、森全域に聞こえるそうだ。


「リンテンス、君も準備はいいか?」

「はい」

「よし、では始める。両耳を塞いでくれ」


 先生の指示に従い、両耳を手で覆う。

 大筒を構え、発射ボタンを押せば――


 ドンッ!


 空気の振動で身体がゆれるほどの爆発音が響き渡った。


 うるさっ!


 心の中でそうツッコンで、俺も森の中へと駆けていく。

 さて、早々に何人かの気配があるな。


「いたぞ!」

「ラッキーだぜ」


 さっそく二人。

 開始から十秒足らずで接敵した。

 スタート地点が近かった者だろう。

 一人は幸運を喜んでいるようだが、果たしてそれはどうかな?


「捕まえてみろよ」

「なっ――」

「速すぎんだろ……」


 一瞬で目の前から消えた俺に、唖然とする二人。

 直接声が聞こえなかったが、嘘だろとか言ってたと思う。

 数人ならこの通り、簡単に引き離せるが……


「エメロードだ!」

「おい待て!」

「はっはは! 次から次へと」


 止まらない。

 どこへ逃げようとも、俺以外の百四十九人が襲ってくる。

 見つかれば追われ、隠れていてもこの人数ならすぐにバレる。

 ならば走り回るしかない。

 休んでいる暇など、今の俺にはないようだ。


「リンテンス!」

「グレンか」


 開始十五分。

 早々に大本命の鬼と出くわしたな。


「今度こそ捕まえるぞ!」

「次も逃げきってやる!」


 追うグレン、逃げる俺。

 木々の間をすり抜け、他のクラスメイトたちも避けていく。

 最短ルートかつ人が少ない場所を選びながら進む。

 少しでも判断を誤れば、後ろから迫る鬼に丸のみにされるぞ。


「みーつけた!」


 今度はシトネか。

 グレンに追われる途中で、木の枝を掴んでシトネが現れる。

 

「ほい! あー惜しい」

「危ないな~」


 シトネは枝から枝へ飛び移り、上から落ちるようにして俺を捕まえようとした。

 サイドステップで躱したけど、思ったよりスレスレだったな。

 地上を走る他のクラスメイトと違って、シトネは周囲の地形を巧みに使ってくる。

 立体的な攻め方をされると、単純に速い相手より厄介だな。


「やるな! シトネさん」

「えっへへ~ リンテンス君はグレン君には渡さないよ」

「いいや、彼は僕が貰うよ」


 何だか別の意味に聞こえてくるな。

 複数人から詰め寄られているのも、何だか新鮮味を感じる。

 そんなことをシミジミと感じていた俺の背後に、新しい気配が出現。


「油断しましたね」

「セリカ!?」


 背後にいたのはセリカだった。

 恐ろしいことに、接近されるまで気配がまったく感じられなかったんだ。

 すでに彼女の手は、俺の腰から伸びるそれに触れている。


 とられる――


 瞬時の状況判断。

 俺の身体は、その直感に反応して動く。

 両脚で急ブレーキをかけ、そのまま後ろへ一回転。

 セリカの背後へ回る。


「――! これを躱すのですね」

「ギリッギリだよ」


 まったく油断できない。

 グレンとシトネ以上に注意が必要だな。


「しかし、よろしいのですか?」


 ふと、後になってから気付く。

 俺はずっと追われていた。

 そこへセリカの奇襲。

 宙返りで躱した先は、当然グレンとシトネがいる。


「そちらは死地ですよ」


 そうだった。

 改めて、自分以外は全て敵だと思い知る。

 前方にはグレンとシトネ、後ろにはセリカ。

 左右の木々の間からも、他のクラスメイトが迫っている。

 示し合わせたわけではないだろう。

 ただ、俺を捕まえるという彼らの目的は一致していた。

 故に偶然が重なって、共闘したようになっている。


 平面上に逃げ場はない。

 ならばどうするか?

 当然上に逃げるしかない。

 俺は大ジャンプで空中へ回避する。

 しかし、そうなると当然グレンたちも追ってくるだろう。

 最初に反応したのはやはりグレンだった。


「空中では避けられないだろ?」


 後から跳んだグレンは、俺に目掛けて突っ込んでくる。

 確かに、強化魔術しか使えないルール上、空中へ逃げることは自殺行為だろう。

 でもそれは――


「そっちも同じだろ」


 俺は身を捻ってグレンを躱す。

 そのまま脚を掴んで、背を踏み台にする。


「じゃあな」


 思いっきり踏んで、俺は斜め前へ跳び出す。

 攻撃は禁止のルールだけど、相手に触ることは禁止されていない。


「くっ……やられたな」


 現在十五分。

 残り時間……四十五分。

ようやく落ち着いたので、続きが執筆できます。

というわけで、書きたてホヤホヤの投稿です。

日刊4位もありがとうございます!

明日からも頑張って更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。

【面白い】、【続きが気になる】、【早く続き書け】と思ったなら!

ぜひぜひ☆☆☆☆☆⇒★★★★★にしてくれると嬉しいです。


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