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45.鬼ごっこ

 水面を駆け抜け、反対岸へ回る。

 再び森へ入り、すぐそこは崖になっていた。


「うおっと!」

 

 ギリギリで気付いていなかったら、そのまま落下するところだった。

 底は深すぎて見えない。

 このまま落下していたら、さすがの俺でも骨を折っていただろう。

 蒼雷を使って良いのなら話は別だけど。


「さて、ここを降りるんだったな」


 渓谷の反対側へ渡る際、一度降りてから昇れという指示があった。

 湖とは違って、反対側は目視できる距離だ。

 思いっきりジャンプすれば俺なら届きそうだけど、ルール違反になるから出来ない。

 仕方ないので、壁ギリギリを下ることにした。

 両脚を集中的に強化して、壁をガリガリ削りながら落ちていく。

 速度さえある程度殺してしまえば、落下の衝撃は防げる。

 これが出来ないなら、正直に壁を掴んで降りていくしかないだろう。


「強化魔術だけって言われると、選択肢が狭まるな~ まっ、俺は元々選択できるほど手数はないけどさ」


 誰もいないから暇になりつつあって、独り言を口にする。

 そのまま落下して、渓谷の底にたどり着いた。

 何だか異様な雰囲気だ。

 暗くてよく見えないが、ごつごつとした岩が並んでいて、風が吹き抜けている。

 それもちょっと臭い。

 嗅いだことのある匂いではあったけど、すぐ何かはわからなかった。

 ただ――


「これ……」


 あるものを見つけて、期待が過る。

 いや、この場合は不安と言ったほうが適切なのだろう。

 やれやれ。

 この研修中に、一波乱がありそうな予感だ。


 その後は普通に崖を垂直に登って、渓谷の反対側へ到達。

 岩山を登ったら、後は降りて走るだけ。

 一周を終えて、先生のいるスタート地点へ戻ってくる。

 

「速いなリンテンス! もう戻ってきたのか?」

「ええ。ちなみに何分でしたか?」

「二十九分だ。凄いぞ! 歴代二位の記録だな」

「二位?」

 

 あれ?

 てっきり一位とか思っていたんだが……

 いや、もしかして――


「ちなみに一位は、アルフォース様だ」

「……やっぱり」


 ここでも師匠に負けたのか。

 中々勝たせてくれない人だな、まったく。


 俺から十五分遅れて、二番手にグレンが到着する。

 続けてシトネが二分遅れでゴール。

 二人とも息を切らしてヘトヘトのご様子。


「リンテンス君、速すぎだよぉ」

「そうか? でも残念ながら師匠はもっと速いらしいぞ」

「えぇ……」


 疲れと呆れが同時に出たような顔をするシトネ。

 その横で息を切らしながら悔しそうにグレンが言う。


「まだまだ修行が足りなかったか……だが次こそ勝ってみせるよ」

「はははっ、負けず嫌いだな」

「君と同じさ」

「確かに。お互い負けてられないよな」


 もしも次やるなら、師匠の記録を超えて見せる。

 そう思った俺だったが、結局これに挑んだのは一回きりだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 スタートから二時間後。


「よーし、時間内にゴールできた者はそのまま次の訓練に移るぞ! 皆、ゴールした時にベルトは貰っているな?」


 ゴールした際、黒いベルトを配られている。

 先生から腰に巻くよう指示され、言われた通りにする。

 すると、ベルトの背中側から半透明なヒラヒラの布が出現し、胸の所には数字が現れた。


「一?」

「私は三だよ」

「ボクは二だな」

「私は七です。おそらく先ほどの順位ではないでしょうか?」


 セリカがそう言って、納得する。

 胸に表示されているのは、準備運動のレースでついた順位と一緒だ。

 続けて先生が説明を始める。


「今から行う訓練は先ほどと同じ個人戦だ! 背から出ている尾、それを奪い合ってもらう」


 先生が説明したルール。

 尾を奪うと、相手の順位と入れ替わる。

 胸の数字を目印に、自分より高い順位の尾を奪って最終的に上位を目指せ。

 さっきと同じで、強化魔術以外は使用禁止。

 簡単に言うとそんな感じだった。

 

「順位に応じてポイントも付与する! 皆、頑張ってくれ」


 ポイントって?

 とはさすがにならなかった。

 魔術学校での成績は、定期試験の結果と、こういう訓練や競技などで配られるポイントで決まる。

 このポイントが少なかったり、定期試験で悪い結果を出すと、特待クラスから落とされることもあるから注意しよう。


「要するに鬼ごっこだね!」

「いや、だとしたら理不尽すぎるだろ」

 

 一位の俺は全員から狙われる。

 自分以外の百人以上が鬼って……どんな鬼ごっこだ。


「鬼ごっことは何だ?」

「あれ? グレン君やったことないの?」

「王都じゃあんまりやらないからな」

「そうなんだ。じゃあ何でリンテンス君は知ってるの?」

「師匠に教えてもらった」

「あぁ~ なるほど」


 鬼ごっこだ~

 とか言って、一日中追い掛け回された過去がある。

 修行の一環とはいえ、本気で怖かったよ。


「制限時間は一時間! スタート地点はこちらで指定する。各々最善を尽くす様に」

「一時間か」

「リンテンス、今度は君を捕まえるよ」

「いいや、今回も逃げ切ってみせる」

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― 新着の感想 ―
[一言] 時事ネタはすぐ風化するぞ ってパトレイバーの作者が昔書いた漫画で言ってた
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