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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二部

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42.心の成長

 親善試合の翌日も、通常通り授業が行われる。

 一夜明けて魔力も回復した俺は、シトネと一緒に登校していた。


「次の日くらい休みにしてくれればいいのにな」

「あはははっ、そう思ってるのリンテンス君だけだと思うよ?」

「えっ」

「だって頑張ったのも疲れたのも、リンテンス君だけだもん」

「ああ……そういえばそうか」


 いや、兄さんも当てはまると思うけど。

 そういえばあれから、兄さんはどうなったのかな?

 父上は相変わらずだったし、屋敷で責められたりしたのだろうか。

 だとしたら申し訳ないし、父上には腹が立つ。


「また……ちゃんと話したいな」

「誰とだ?」


 後ろからポンと肩を叩かれ、振り向く。


「グレン」

「おはよう二人とも」

「おはよう! セリカちゃんも一緒だね」

「はい。おはようございます」


 グレンとセリカが合流して、一緒に学校へ向かうことに。

 道中、普段より視線を感じて、周囲が気になる。

 前のように嫌な視線ではないようだが……


「注目されているな」

「みたいだね。でも前からだし」

「いいや、今は良い意味で注目されているだろ?」

「良い意味って?」


 俺が聞き返すと、グレンは呆れ顔をする。

 気付いていないのかと言わんばかりにため息をついて、やれやれとジェスチャーした。


「何だよ」

「君はあれだけの戦いを見せたんだ。もう君のことを、落ちこぼれだと思う者は誰もいない。こうして注目を浴びているのも、君の強さを知ったからさ」

「俺の……強さ」


 なるほど、そういう良い意味か。

 ハッキリ言うと、本当に察していなかったよ。

 というより、どうでも良いと思っていた。

 変な話だな。

 最初は周りを見返したくて努力していたのに、いざ認められたと思うと、何だか素直に喜べない。


「あまり嬉しそうじゃない顔だね」

「ははっ、そうみたいだ」


 自分自身に呆れて笑う俺を、キョトンとした顔で見ている。

 グレンを見て、彼との戦いを思い出しながら、シトネとの出会いも振り返る。

 それよりもっと前の、師匠と過ごした厳しい日々。

 全部を通して、今の俺がいる。

 そうか……


「昔の俺だったら、素直に喜んだと思うよ。周りを見返したくて、修行も頑張ったからな~ でも今は、他にも理由があるから」


 師匠の期待に応えたい。

 師匠と同じ場所にたどり着いて、一緒に肩を並べて戦いたい。

 俺を鍛えてくれた恩を返したい。

 俺の中にある強さの理由は、あの時よりも増えている。


「俺はまだ何も成し遂げてない。全部これからだ」

「なるほど。さすが、先を見据えている」

「すぐ近くに目標がずっといたからね。まだまだ足りないってことも実感しているよ」


 修行して、鍛えられて、強くなっても届かない。

 師匠は俺なんかより遥か高みにいる。

 いつかそこへ行くために、今で満足していられない。

 そう思えるのも、心が成長してくれたお陰なのだろうか。


「それに、途中から態度を変えられたって、やっぱりスッキリしないな。これから何人理解者が増えようと、お前たちみたいに、最初から普通に接してくれた人のほうが大事だよ」

「リンテンス……」

「なんてなっ」


 言った後で恥ずかしくなって、誤魔化す様にわらってみた。

 我ながらキザなセリフを口にしたものだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 教室に入って、先生が来るのを待つ。

 時間になって鐘の音が鳴ると、ガラガラと扉を開けて先生がやってくる。

 連絡事項をさらっと流し、一枚の紙をヒラヒラを示しながら言う。


「えぇ~ 以前に伝えたが、明後日から学外研修だ。三日間あるから、各々準備しておくように」

「学外……研修?」

「リンテンス?」


 隣のグレンがちょっぴり怖い顔をしている。

 声に出さなくとも、また聞いてなかったのかという言葉が聞こえるようだ。

 我ながらこんなに聞き漏らすことがあるか?

 師匠との会話なら、しょうもないダジャレまで覚えているのに。

 とりあえず俺は素直に謝って、説明を求める。


「お願いします」

「はぁ……まぁ君は昨日のことで頭がいっぱいだったのだろう」

「そ、そうだな。うん、たぶんそうだと思う」

「……」


 じっと睨まれたので、そっと目を逸らす。

 その後、グレンはため息をこぼしつつ、簡単に説明してくれた。

 どうやら明後日、新入生全員で学校が管理する別の領地へ行き、三日間実技訓練を受けるらしい。

 目的の大部分は、生徒同士の交流を深め、互いの実力や能力を共有し、今後の授業や試験に活かすためだとか。

 ちなみに毎年恒例というわけでもなく、年度によってない時もあるそうだ。


「何で恒例じゃないんだ?」

「開催地となっている場所の気候だな。この時期は特に荒れやすくて、訓練どころじゃなくなるらしい。しかも一度崩れると長く続くらしいからな」

「なるほど。で、今年は大丈夫そうって話か?」

「ああ。それと実技訓練はチームで行われるからな」


 チームか。

 そういえば、グレンたちと一緒のチームを組んだんだっけ?

 何とかそこは覚えているようで、自分の記憶力にホッとしている。

 

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