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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一部

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35.親善試合

 授業が始まる前、担任の先生が教壇に立った。


「来週の今日、親善試合が行われる。立候補者はいるか?」

「親善試合?」

「おい、まさかこれも聞いていなかったのかい?」

「え……ああ、うん」


 返す言葉もない。

 グレンは呆れながら、俺に説明してくれる。


「毎年入学してすぐ、一年生と三年生の代表が交流をかねて模擬戦をするんだよ」

「へぇ~」


 意味合い的には、交流というより世の中の厳しさを教える……みたいな感じらしい。

 自信満々の新入生が行き過ぎないよう、在校生が力を見せつける。

 

「外部の観客も入れるから、僕たちにとっては最初のアピールの場にもなるけどね」

「なるほど」

「ちなみに、三年の代表は大抵首席だ」


 主席と言う単語を聞いて、思わずびくっと反応した。

 

 兄さんが出てくるのか。

 

「立候補者はいないか? いないのであれば、首席のグレンにお願いするつもりだが」

「先生!」


 と手をあげたのはグレンだった。


「何だ? グレン」

「立候補ではなく、推薦してもよろしいでしょうか?」

「ん? まぁ、いいぞ」

「ありがとうございます。僕は彼を、リンテンスを代表に推薦します」


 グレンは俺を指示し、堂々と名前を強調してそう言った。

 ざわつく教室と、驚くシトネ。

 当のグレンはニヤっと笑い、俺は眉を顰める。


「グレン?」

「このクラスで一番強いのは君だ。代表と言うなら君こそふさわしい」

「いや、首席はお前だろ?」

「ああ、だが僕は君に負けたばかりだ。自分の実力不足を痛感させられている。それに……」


 グレンは表情を変える。

 ニヤついていた顔が一変して、真剣な眼差しを向ける。


「相手は君の兄だろう。ならば実力の話を抜いても、君が一番戦いたいと思っているんじゃないかい?」

「……」


 正直、図星だった。

 兄さんが相手と聞いて、戦うなら自分が良いと思ったよ。

 ただ、周囲の目もあるだろうから、今回は控えようかと思っていたのに。


「もちろん嫌と言うなら僕が出るよ。もしかすると、勝ってしまうかもしれないけどいいかな?」

「ふっ、わかりやすい煽りだな。わかったのってやる」

「決まりだね」


 俺は右手を挙げて先生に言う。


「先生、俺が出ます」

「うむ。皆もそれで構わないか?」


 反対なし。

 入学直後の俺だったら、きっと全員が反対していただろう。

 ここまで全てグレンの思惑通りだとしたら……相当な策士だ。

 

「ありがとな、グレン」

「僕は何もしていないさ。頑張ってよ、リンテンス」

「ああ」


 やるからには勝つ。

 兄さんが出るなら、両親も観戦に来るかもしれない。

 丁度良い機会だ。

 あの人たちに見せつけてやるとしよう。

 落ちこぼれと吐き捨てた男が、頂に届きうる存在になったことを。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なるほどなるほど、親善試合で兄と戦うことになったか」

「はい。それで相談なんですが、師匠に模擬戦の相手をして頂きたくて」


 親善試合の話を聞いた日の夜。

 夕食を囲みながら、俺は師匠にお願いをした。


「ほう、そこまで必要かい?」

「必要だと思います」

「今の君なら負けることはないと思うけどな~」

「だとしても、完璧な状態に仕上げておきたいんです。今回は……相手が相手ですから」


 俺がそう言うと、師匠は小さく頷く。

 表情と言葉から、俺の気持ちを察してくれたようだ。


「わかった。が、残念ながら出来ないね」

「なぜです?」

「実は王国から僕に依頼があったんだよ。明日には王都を出ないといけないんだ」

「急ですね。内容は?」


 師匠は首を横に振る。

 どうやら極秘の任務のようだ。


「そうですか……」

「すまない。弟子の頼みを無下にはしたくなかったのだが、これもお仕事だからね」

「いえ、師匠は本来こんなところで遊んでいて良い人ではありませんから」

「はっはっはっ、別に遊んではいないのだが……」


 さて、となると誰に相手を頼むか。


「リンテンス、ここは友人に頼ったらどうだい?」

「グレンたちですか?」

「うん、彼らの実力であれば、君の相手も務まるだろう」

「そうですね。頼んでみます」


 師匠以外で誰に、と考えた時。

 まっさきに浮かんだのはグレンだった。

 

 翌日、俺はグレンにそのことを頼むと、二つ返事でオーケーを貰った。


「君との訓練なら望むところさ」

「ありがたい。じゃあ頼む」


 親善試合まで約一週間。

 出来る限り追い込んで、戦闘の感覚を研ぎ澄ます。

 今の俺にも、期待してくれる人がいる。

 期待してない奴らも、大勢見に来るだろう。

 そいつら全員を沸かせられるような戦いを見せてやる。


 そして何より、兄さんに認めてもらうため。


 一週間はあっという間に過ぎて――

本日ラストの更新です。

ランキング見ちゃって、何とか5話更新しましたが、果たしてこれ以上先へ行けるのだろうか……

明日も更新頑張ります!

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら☆☆☆☆☆⇒★★★★★してくれると嬉しいです。

よろしくお願いします。


ちなみに残り5話で第一部は終わります。

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