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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一部

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30.負ける気はないよ

 リンテンスとグレンの戦いは激しさを増していた。

 そんな二人を見つめる二人。

 特にシトネは、心配そうに見つめている。


「リンテンス君……」


 彼が負けるわけない。

 そう思うことと、心配しないのは別だ。

 加えて相手は強者だとわかる。

 不安が彼女の表情からにじみ出ている。


「心配いりません」

「え?」


 そんな彼女に語りかけるセリカ。

 まっすぐグレンを見つめ、彼女はシトネに言う。


「グレン様は、お優しい方ですから」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「いくよ!」

  

 真紅の炎を剣に纏わせ振るい、渦のように巻いて放つ。

 俺は斜め上に跳んで躱し、思考を回らす。


 さて、ここからどうするか。

 速度はこちらが上。

 隙をつく程度なら容易だが、あの炎の衣を突破できないと意味がない。

 藍雷単体では難しいとなれば、赤雷の最大出力でも通らないだろう。

 緑雷はこの地形じゃ使えないし、そもそも炎相手は相性が悪すぎるしな。

 奥の手もここでは使えない。

 残された手段で、あいつの守りを崩す方法は……ある。

 あとは、どうやって当てるか。


「仕方ない。地道にいくか」


 作戦を頭の中で構築した俺は、グレンの懐へもぐりこむ。

 やはり速度はこちらが勝っている。

 グレンは反応こそできるが、ワンテンポ遅い。

 

「無駄だよ!」


 剣で弾き、炎を放つ。

 俺は余裕をもって躱し、続けて連続で斬りかかる。


「すさまじい剣技だな。受けるのでやっとだよ。でも――」


 連続攻撃の一部は、衣でガードしている。

 残る斬撃は剣で受け、次第にその比率は変化する。


「じき慣れるよ」

「かもな」


 恐るべき対応の速さだ。

 嘘やハッタリではなく、本当に慣れてきている。

 

 ガンッと剣同士がぶつかり合う音がして、鍔迫り合いになる。

 互いの顔がよく見える距離で、俺は彼に問う。


「あのさ。戦えばわかるって言ってたよな?」

「ん? そうだけど?」

「悪いけど全然わからないんだが」

「あれ? そうなの?」

「ああ」

「そうか……ひょっとして君、他人にあんまり興味ないでしょ?」


 ギクッとする。

 図星だったから、反論も出来ない。


「相手によるかな」

「そう。じゃあ、戦いの途中だけど、少しだけ周りに耳を傾けてごらん」

「周り?」

「うん」


 グレンの目配せは、クラスメイト達を示していた。

 鍔迫り合いの最中だが、俺は彼らの声に意識を向ける。

 すると――


「おい……やばいなあいつ。真紅と互角に張り合ってるぞ」

「あ、ああ……あんな熱量前にしたら、普通近寄ることも難しいのに」

「まぐれじゃ……なかったのかも」

「だ、だな」


 てっきり、悪態や罵声が続いていると思っていた。

 予想外の反応を聞いて、少し力が抜けてしまう。


「ほら、聞こえるだろ? 彼らも君を認めつつあるんだよ」

「……なるほど、そういう腹か」


 グレンは微笑む。

 彼は最初から、俺の実力を見せつけようとしていた。

 まぐれではないのだと。

 本物の魔術師であると証明して、彼らの評価を改めさせる。

 そのためだけに挑発して、この戦いを始めたのか。

 

 なんだよそれ。

 

 思わず俺も笑ってしまう。


「お人よしだな」

「ははっ、よく言われるよ」


 やっぱり、あの時の感覚は間違っていなかった。

 こいつは俺たちを見下していない。

 ちゃんと、一人の人として、魔術師として見ている。


「でも勘違いしないでほしい。立役者にはなっても、負け役になるつもりはないから」


 グレンが火力をあげる。

 さっきまでは手加減していたのか。


「全力でいくよ! そして僕が勝つ!」


 爆速で向かってくるグレン。

 最初より速度も上がっている。

 ただし、まだ俺の蒼雷の速度のほうが上だ。

 対応は容易に出来る。

 

「逃がさないよ」


 が、それはあちらも同じこと。

 慣れ始めている。

 俺の速さに、動きに。

 

 俺は地面を蹴り上げ、空高く跳びあがる。

 左手を前に、右手を後ろ。

 それぞれの藍雷を変形させ、左手は弓に、右手は四本の矢に変える。

  

「藍雷――(きゅう)


 四連射。

 矢がグレンに降り注ぐが、これを炎を纏った剣で弾き、炎を消して言う。


「弓も作れるのか! 驚いたけど、子供だましだよ!」


 再び炎を纏わせ、追撃の火炎を放つ。

 俺はぐるっと身をひねって躱し、二刀を生み出して応戦する。

 彼の言う通り、驚きはあっても不意はつけない。

 徐々に……しかし確実に、彼は俺の動きを捉えている。


 そして遂に――


「捉えたよ!」


 彼の反応が俺の動きを捉える。

 はずだった。


「なっ……」


 少なくとも彼の中では、間違いなく捉えていたのだろう。

 しかし、身体はそれに応えない。

 自分の思った通りに身体が動かなくて、魔力のコントロールも乱れている。

 という状態に、彼は陥っていて、自らの身体を見る。


「紫の……雷?」

「色源雷術、紫雷(しらい)


 俺は二刀を下ろし、彼に教える。


「その紫の雷は、対象の魔力の流れを著しく乱す。生物に当てれば肉体の動きを抑制し、魔力コントロールを狂わせる。結界とか術式に流れれば、発動や効果を妨害する」

「いつの間に……どうやって炎の衣を?」


 俺は答えを見せる。

 両手に持った二刀が、僅かに紫雷を帯びていた。


「紫雷は効果こそ優秀だけど、射程が短くて威力も弱い。だからこうして、他の雷撃に混ぜ込んで当てるのさ」


 さらに俺は指をさして言う。


「その剣、耐熱性に優れているみたいだけど、完全じゃないんだろ? だからお前は、定期的に炎を消して熱を冷ましていた。違うか?」

「そうか。剣から流していたんだね?」

「正解だ」

 

 衣に直接流し込む手もあったが、相手は相当な鍛錬を積んだ強者。

 途中で狙いがバレると思って、地道に流し込む方向でいった。

 しゃべっている鍔迫り合いの最中でも、こっそり流していたのに、あいつは気付かなかったな。


「やられたね……魔力の流れが乱れて、維持するのがやっとだ」

「むしろ維持できている時点で凄いんだけどな。まぁでも、その状態なら今度こそ貫けるかな?」


 藍雷を解除し、右手を前に突き出す。

 色源雷術最大出力。


「――赤雷」


 赤い稲妻が、紅蓮の炎を貫く。

本日最後の更新です。

一気に30話までの更新頑張りました。

さすがに明日からはこんなに出来ないと思いますが……

モチベにもよりますが、最後まで更新頑張ります。

【面白い】、【続きが気になる】、【はよ書け】と思ったなら☆☆☆☆☆→★★★★★してくれると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?炎しか使ってない?
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