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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一部

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28.僕と勝負しないか?

 俺の怒りが爆発する寸前。

 グレンの言葉が引き留め、全員の視線が彼に集まる。


「根拠もなしに人を馬鹿にするなんて、良くないとは思わないのかな?」

「い、いやその……」

「ここは魔術学校だ。生まれも育ちも関係なく、魔術師としても力量が物差しになる。彼らは自らの力でその席を勝ち取り、ここにいる。そもそも、あの試験で不正が出来ると思っているのかな?」


 グレンの言葉に、全員が黙り込む。

 彼の言っていることは正しくて、何も言い返せない。

 加えて彼は主席であり、名門の生まれだ。

 社会的地位も高い。

 そんな彼が言うからこそ、皆も納得せざるを得ないだろう。

 俺が同じことを言っても、くだらないと一蹴されて終わるだろうな。

 お陰様で、俺も一先ず落ち着けた。

 シトネもホッとしたように胸をなでおろしているのがわかる。


「だが、まぁ……君たちの気持ちもわからなくはない」


 グレンには感謝しないとな。

 そう思ったが、話はそこで終わらなかった。

 彼は俺を睨むように見つめながら、続けて言う。


「彼が一属性しか使えない魔術師と言うのは事実なのだろうね。そんな彼が特待クラス……しかも次席だ。信じられないと目を疑う者もいて当然」

「そ、そうだ!」

「一属性だけで試験を通っただけでもおかしいだろ」


 水を得た魚のように、静かだった彼らは騒ぎ出す。


 どういうつもりだ?

 さっきまで俺たちのことを擁護していた癖に、手のひら返しで批判か。

 結局こいつも、他の奴らと同じなのか。


 ふと、握手を求められたときの彼が思い浮かぶ。

 あの表情、言葉に嘘はなかった。

 少なくとも俺はそう感じた。


「まぁ待ってくれ。リンテンス君、よければ僕と模擬戦闘をしてくれないかな?」

「は?」

「午後から自由だろう? 訓練室は学生なら自由に使って良いそうだし、僕と勝負してみないか? 親睦もかねてだ。みんなにも見てもらおう」


 グレンは平然とした顔で淡々と告げる。


 こいつ……本当に何を考えているんだ?

 クラスメイトの前で俺をぼこぼこにして、自分の地位を確かなものにでもしようって算段か?

 いや、それにしてはやり方が強引すぎるな。


「お断りだよ。何でお前と」

「そうかい?」

「逃げるなよ!」

「はっ、どうせ実力は大したことないんだろ? 次席になったのもまぐれだな」


 教室中にヤジが飛び交う。

 強い後ろ盾を得た途端にこれだ。

 虎の威を借りる狐という言葉を師匠から教えてもらったが、まさに今の光景だな。

 こっちの狐は可愛くて、素直で努力家なのに。


「ほら、みんなもこう言っているよ? いいのかい? このまま嘗められたままで」

「……何を考えている?」

「それは戦えばわかるよ」


 俺とグレンは睨み合う。

 今の所、こいつが何を考えているのかさっぱりだ。

 ただ……そうだな。

 嘗められっぱなし、馬鹿にされ続けるのも嫌なのは確かだ。


「いいだろう。受けて立つ」

「うん、決まりだね」


 グレンの意図は不明のまま、俺たちはゾロゾロと訓練室に足を運んだ。

 各クラスの教室は、二階が一年生、三階が二年生、四階が三年生と順に高くなっていく。

 訓練室は最上階の五階に設けられていた。

 専用の移動魔道設備を使えば、階段を昇らなくても五階にすぐ上がれる。

 最先端の魔道具技術が結集された校舎だ。

 できればもっとじっくり見て回りたかったな。


「ここが訓練場か」

「今は殺風景だが、設定をいじれば景色を変えられるよ」


 真四角の部屋だ。

 正方形の白いタイルが綺麗に並んだ壁と天井。

 魔力が流れていて、かなりの頑丈さを誇っていると聞く。

 また、仮に破壊されても自己修復するとか。


「城の壁に使われている技術と同じだ。ここならいくら暴れても問題ない」

「そうらしいな」


 俺とグレンは向かい合い、距離を取る。

 クラスメイトたちは離れた場所から俺たちを見ていて、グレンの横にはセリカが、俺の横にはシトネがいる。


「リンテンス君、良かったの?」

「ん? まぁ仕方ないだろ。あのまま無視してたら、後からずっとネチネチ言われ続けるし」

「でも……」

「俺だけじゃなくて、シトネのことも馬鹿にされたしな。普通に腹が立った」


 俺が素直にそう言うと、シトネはちょっぴり嬉しそうに頬が緩む。

 ただ、すぐに心配そうな表情に戻ってしまう。

 

「それともシトネは、俺が負けると思ってるのか?」

「ううん、思わない」

「ならしっかり見ていてくれ」

「うん!」


 シトネは尻尾をふり、クラスメイトたちとは反対側へ離れていく。

 セリカもシトネと同じ方へ歩いていき、二人が並んでこちらを向いた。


「準備は出来たようだね」

「ああ」


 俺とグレンは声が届く距離まで近づき、向かい合う。

 いつの間にか、彼は腰に剣を携えていた。


「では始めようか?」

「ああ……なぁグレン、この戦いに何の意味があるんだ?」

「さっきも言ったよ? 戦えばわかるってね」

「そうかい」


 答える気はないらしい。


「ただ、一つだけ教えておこう」

「何だ?」

「僕は君と本気で戦ってみたいと思っていたんだ」


 そう言って、グレンは右手を前にかざす。

 なるほど、それは本音っぽいな。

 ならば俺も、本音で答えよう。


「奇遇だな? 俺もだよ」


 俺も同じように右手を前にかざす。

 互いに笑みを浮かべた直後、戦いの火ぶたは落とされる。


「――赤雷」

真紅(しんく)!」


 赤い稲妻と紅蓮の炎。

 二つの赤がぶつかり合い、はじけ飛ぶ。

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