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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一部

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25.弟子の弟子

 罪人となったルフスは、王国の役人に連行されていった。

 残された両親はその責任を取らせられることになる。

 彼の家も相当な名家だったようだが、これで家の名に大きな傷がついただろう。

 一時の感情に任せると、身を亡ぼすといういい例だ。


 その数時間ほど前に遡る。

 路地で倒れている暗殺者たちは、まだ死んではいない。

 気絶した彼らの額に触れ、情報を読み取る。

 干渉魔術と言って、極めて特殊な属性魔術の一つだ。


「うむ、わかったぞ」

「どうでしたか?」

「君が予想した通りじゃよ」

「そうですか」


 ここ最近の出来事を振り返っても、恨みをかうなら彼だからな。

 予想通りとは言え、何だか複雑な気分だ。


「この者たちはワシの部下に任せよう。リンテンス君はワシと一緒に、雇い主の元へ行くとしようかのう」

「え、はい。ありがとうございます」


 この人の名前はナベリウス・セロト。

 サルマーニュ魔術学校のトップにして、数々の聖域者を育てた師でもある。

 かくいう師匠も、この人から魔術を学んだとか。

 話には聞いていたけど、会うのがこれが初めてだ。

 ちょっと緊張するな。


「でも、学校長がどうしてこんな場所に?」

「なに、アルフォースからお願いされてのう。弟子に悪い虫がついておるから、何とかしてくれと」

「師匠が?」

「そうじゃ。自分が出て行くと余計ややこしくなるからと言ってな」


 そうだったのか。 

 師匠はこの件に関して……


「ボクは狙われてないし、君に任せるよ~」


 とか心無いことを言っていた癖に。

 何だかんだで、俺のことを心配してくれていたのか。

 よし、夕飯は肉も入れよう。


「さぁ行こうか」

「はい」


 そうしてルフスの家に向い、先に父親に話を通した。

 後はすでに見た通りの結末だ。

 それから俺は、校長先生に連れられ、校長室に案内された。

 歴代の校長の絵が飾られていて、奥には偉い人が座る椅子と机がある。

 俺は手前の向かいあったソファーに座り、校長先生が対面に座る。


「いや、すまんのう。大変な出来事があった後だというのに」

「そんな、大したことはなかったですから」

「ほっほっほっ! あの手練れを相手にその感想とは。さすがアルフォースが弟子にとっただけのことはあるのう」


 この言い方……もしかして途中から見ていたのか。

 俺の感知には引っかからなかったし、師匠みたいに千里眼でも持っているのかな。

 校長先生は紅茶をずずっとのみ、カップを置いて俺を見る。


「実はのう。君とは一度、こうして話してみたいと思っておったのじゃ」

「そうだったんですね。俺も、校長先生とは話してみたいなと思っていました」

「ほう、そうじゃったのか?」

「はい。師匠の師匠だった人ですから」


 彼は生涯に三人の聖域者を育てている。

 うち一人が俺の師匠アルフォース・ギフトレン。

 現代最高の魔術師を育てた人だ。

 どんな人なのかと、ずっと興味があった。


「ほっほっほっ! 何もワシが凄いわけではない。アルフォースを含め、彼らが努力した結果じゃ」


 などと謙遜しているが、彼の指導は大きい。

 偶然で三人も聖域者になることはあり得ないからな。

 魔術師を育てることに関しては、この人より優れた指導者はいないだろう。

 

「師匠も呼べばよかったですね」

「いや~ あやつは呼んでも来んじゃろう」

「えっ、どうしてです?」

「君も聞いておるじゃろ? あやつはワシのことを何と言っておった」


 そう尋ねられて、納得した。


「見た目は優しそうに見えるけど、中身は鬼か悪魔だ……と」

「ほっ! あやつめ変わらず悪態をつきおって。今回の連絡も顔を見せず、一方的な通信のみじゃったからのう」


 それはたぶん、顔を見合わせると説教が始まるからだと思います……

 師匠のスパルタは、この人譲りなのでは?

 とか思いながら、俺は乾いた笑いを見せる。

 すると、校長先生は不意に切なげな表情を見せ、改まって俺に尋ねてくる。


「アルフォースは元気かのう?」

「はい。元気だと思いますよ」

「そうか」


 何だか深みのある声色だった。

 しみじみと思い出にふけっているようにも見える。

 もしかすると、師匠とこの人の間では、他にも色々とあったのかもしれない。


「あーそうじゃった。リンテンス君、合格おめでとう」

「ありがとうございます」

「素晴らしい成績じゃったな。首席とも僅かな差であったが、今年の一年生は粒ぞろいじゃ。一緒に居った先祖返りの女の子ものう」

「シトネですか? ええ、独学であそこまで鍛え上げるなんてすごいですよ」

「ほう! 独学じゃったのか! なればこの先もっと伸びるのう」


 校長先生は楽しそうに語っていた。

 シトネのことも褒めているし、偏見とかはなさそうでホッとする。

 当たり前か。

 師匠の師匠なんだから。


「さて、君はこれから大変じゃな。他の者たちよりも、道は過酷じゃろう」

「はい。わかった上でここに来ましたから」

「弟子の弟子だからと言って、贔屓するつもりはないからのう?」

「わかっています。俺は自分の力で、聖域者まで上り詰めて見せますよ」

「ほっほっ! 期待しておるぞ」


 夜の対談はこうして終わる。

 ハプニングがきっかけで、思いがけず嬉しい時間が過ごせたな。

 まぁもっとも……屋敷でお腹を空かせている師匠のことは、途中まで忘れていたのだけど。

次回から新キャラ登場?

また流れが少し変わる予感です。

第一部も半分を超えましたよ!


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いのでどんどん評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


どうかよろしくお願いします。

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