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21.初デート?

今日も張り切って更新していきます!

 翌日の朝。

 俺は普段よりちょっと早めに起きた。

 いや、今日のことを考えるとソワソワしてしまって、あまり眠れなかったというのが正しい。


「師匠がデートとか言うからだぞ……」


 女の子と二人で街を回る。

 確かに、それだけ聞けばデートを言われても不思議じゃない。

 意識していなければ普段通り過ごせたと思うけど、一度考えてしまったら手遅れだ。

 とりあえず朝食を作り、仕方がないので昼食も準備しておく。

 師匠がお腹を空かせると、わざわざ俺たちの所まで乱入してきそうだからな。


 そうして時間は過ぎ――


「じゃあ行ってきますね、師匠」

「うむ。今日は楽しんできたまえ! 初デートは思い出に残るからね~」

「っ……まだ言いますか」


 くそっ、料理に薬でも盛っておけばよかったな……

 まぁ師匠には毒物が効かないけど。


「変なちょっかいは出さないでくださいよ」

「もちろんだとも!」

「もし出したら本当に夕飯抜きにしますからね」

「も、もちろんだとも」


 この反応は図星だったかな。


「行こうか、シトネ」

「うん!」


 俺とシトネは屋敷に背を向ける。

 師匠は大きく手を振りながら、いってらっしゃーいと俺たちが見えなくなるまで言っていた。

 やれやれ、相変わらずからかっている時が一番活き活きとしているな師匠は。


「シトネは行きたい所とかあるか?」

「う~ん、お任せで!」

「了解。じゃあ適当にブラブラしようか」

「うん!」


 俺はシトネに王都の街を案内する。

 彼女は王都に来るのはこれが初めてだと言っていた。

 以前、入学試験の日は、急いでいてロクに景色を眺めることも出来なかったからな。

 今日は存分にいろんな場所を見て回ろう。


 最初に向ったのは商店街エリア。

 道具屋、服屋、雑貨屋、飲食店などなど。

 様々なお店の建物が並んでいたり、広場や大通りには露店もある。

 

「うわ~ すっごい賑わいだね」

「ここは観光客も多く来るから、大体いつもこんな感じだよ」

「目が回っちゃいそうだよ~」

「はっははは、そのうち慣れるさ」


 前も後ろも左右も人だらけ。

 俺も小さい頃は、人混みに酔ってしまいそうだったな。

 行きかう人々も個性豊かだ。

 観光客も多い所為か、服装に統一性はない。

 時折通りかかる貴族らしき人もいれば、庶民らしいラフな格好の人もいて、人間観察が趣味の人には美味しいスポットかもしれないな。

 服装と言えば……


「シトネは完全防備だな」

「えっ? あ、うん、こっちのほうが歩きやすいからね」


 出会った時と同じ服装。

 フードで耳を隠し、長いマントで尻尾を隠している。

 端から見れば不審者だが、目立つ耳と尻尾を隠していたほうが、彼女にとっては過ごしやすい。


「ごめんな、シトネ」

「何でリンテンス君が謝るの! 悪いのは私が変な見た目だから……」

「変じゃないよ。少なくとも俺は、その耳も尻尾も可愛らしいと思ってるから」

「へっ……」

 

 は、恥ずかしいな。

 シトネを元気づけようと思って言ったんだが……

 

 チラッと彼女を見る。

 すると、嬉しそうにほほ笑んでこう答えた。


「ありがとう」


 その後はぐるっと商店街を一周して、学校までの道順を教えたり、生活の中で使いそうな場所を巡ったりした。

 歩き通しで疲れてきたから、適当に見つけた喫茶店に入ることに。


「どうだった? 王都の街は」

「ぜーんぶ大きい!」


 シトネは両腕をいっぱいに広げてそう言った。

 ちゃんと楽しんで貰えたようで何よりだ。

 まぁ、周囲からの視線は気になったりもしたし、良くない視線もあったけど。

 この様子じゃ、シトネは気付いていないのかな。


「なぁ、シトネ」

「ん?」

「シトネはさ。何で魔術学校に入ろうと思ったんだ?」


 俺は密かに気になっていたことを質問した。

 魔術学校に入れば、良くも悪くも目立つ。

 彼女の容姿、事情を考えれば、大変な道のりであることは言うまでもない。 

 周囲からの視線はもちろん、良くない迫害や偏見は多いだろう。

 それをわかった上で、彼女は試験を受けに来た。


「もちろん! 聖域者になりたいからだよ! そうすれば、ちょっとは変わるかなーって思ったの」

「変わる?」

「みんなが私を……先祖返りを見る目だよ。今みたいに嫌ーな目じゃなくて、人として認めてもらえるかなって」


 そうして、彼女は語り出す。

 自分の過去を……決意を。


「私が先祖返りだってわかったのは五歳になった頃なの。それまでは耳も尻尾もなくて、突然出てきたんだ」


 当時、彼女の両親は驚愕した。

 驚愕して、彼女を恐れた。

 小さな村ですら、先祖返りに対する偏見は大きかったのだ。

 そして、彼女は両親に見捨てられ、偶然拾ってくれた老夫婦の所で暮らすことになったらしい。

 幸いにも老夫婦は優しく、彼女を大事に育ててくれたという。


「お爺ちゃんとお祖母ちゃんはとっても優しくて……でも、お父さんとお母さんのことも大好きだったから、何ていうか割りきれなくて」


 さらに悲しいことが起こる。

 老夫婦が病に倒れてしまった。

 彼女がまだ十歳のときだ。

 一人になった彼女は、生きるために働いた。

 石を投げられ罵倒され、迫害を受けながらも、生きるために必死だった。

 そんな生活を続ける中で、彼女は思った。


「聖域者はとっても偉い人だから。私がなれたら、もう私みたいな思いをする人はいなくなるかもしれないって」


 それは彼女にとって唯一の希望だった。

 

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