表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/106

19.イメージと違うかな?

 シトネは唖然としたまま棒立ちしている。

 自己紹介でもしてもらうつもりだったが、どうやら難しそうだ。

 と思っていたら、師匠も同じことを思ったようだ。


「リンテンス。僕にも彼女を紹介してもらえるかな?」

「はい。彼女はシトネ、俺と同じ魔術学校入学希望者です。森で朝練してるときに会ったんですが、中々の実力を持ってますよ」

「ほうほう、森で会ったのか。なるほど」


 耳にとまったのはそっちですか。

 何がなるほど、なのか気になるけど、とりあえずニヤニヤしながら俺を見るのを止めてほしいな。

 すると、我に返ったシトネが、ピシッと気を付けをして師匠に言う。

 

「あ、あの! シトネです! 今日からお世話になります」

「ん? お世話?」

「あーえっと、実はですね――」


 俺は師匠にことの経緯を説明した。

 師匠は頷きながら聞いていて、最後まで説明すると、納得したように言う。


「そうかそうか、理解したよ」

「はい。そういうわけなので、合格発表まで泊めてあげたいんですが」

「もちろん僕は構わないよ。そもそもここの家主は君だし、僕だって居候みたいなものだからね」

「ありがとうございます!」

「お礼はリンテンスに言ってあげて」

「はい!」


 シトネは元気よく返事をした。

 話せるようにはなったけど、変わらずガチガチの態度だな。

 まぁ無理もない。

 俺だって、師匠と初めて会った時は驚いたし、あんな状況じゃなければシトネと同じ態度になっていただろう。


 聖域者アルフォース・ギフトレン。

 当代最高の魔術師と呼ばれ、魔術師であれば彼を知らぬ者はいない。

 師匠が残した数々の伝説に、多くの魔術師たちが憧れ、目標となっている。

 そんな伝説的な人物が……


「さぁさぁお食べ! 今日は僕のおごりだよ!」

「いや……作ったのは俺ですよ」


 こんなにもあっけらかんとした笑顔で前にいたら、調子も狂うというものだ。

 自己紹介を終えた後、俺は夕食の準備にとりかかった。

 今は食堂に三人で、テーブルを囲んでいる。


「これ全部リンテンス君が作ったの?」

「ああ」

「凄いね。料理も出来ちゃうんだ」

「まぁ五年も一人暮らしをしていたら、嫌でも身につくよ」


 今日は特別豪勢にしてみた。

 シトネもいるし、試験の後だったからな。

 疲れた身体と魔力を回復するのに、食事はとても重要だ。


「いただきまーす!」


 シトネが料理を口に運ぶ。

 師匠以外の人に料理を振舞うなんて初めてだから、妙に緊張してしまう。

 シトネはパクリと食べて、俺はその反応に注目する。


「美味しい!」


 と、ニコニコしながらシトネが言って、俺はほっとした気分になった。

 料理には多少の自信があったけど、美味しいと言ってもらえるのは嬉しいな。


「とっても美味しいよリンテンス君!」

「ありがとう。口に合ったみたいで良かったよ」

「中々に絶品だろう? この屋敷にいれば、毎日この料理が食べられるんだ」

「最高ですね」

「うん間違いない。そこいらの高級宿屋にも負けないさ」


 とか言いながら、シトネと師匠はパクパク料理を口に運ぶ。

 さっきまで畏縮していたシトネも、すっかり調子を取り戻したようだ。


「何だか意外です」

「ん? 何がだい?」

「その……アルフォース様って、もっと怖い人なのかと思ってました」

「はっはっはっ、よく言われるよ」


 そう言って笑う師匠。

 王国に仇名す族を一人で壊滅させたり、湖に住む精霊と対話と言う名の戦闘を繰り広げ勝利したり、十日以上続く豪雨に苛立って空を切ったり。

 師匠の伝説はすさまじいものばかりだ。

 そこから連想される人物像は、豪胆にして英知の結晶。

 神々しさすら感じられるようなイメージは、当の本人を見れば薄れるだろう。


「僕はみんなが想像するほど大した人間じゃないよ。ただ、他の人よりちょっとだけ魔術が得意なお兄さんだ」

「ちょっとで聖域者になれませんよ」

「はっはっはっ、なれてしまったのだから仕方がないさ」


 飄々としていて、雲のように掴みどころのない人。

 いや、舞い落ちる花弁のように、掴もうとしてもヒラリと躱される。

 師匠はそんな感じの人だ。


「羨ましいな~ リンテンス君はアルフォース様に魔術を教えてもらってたんだよね」

「まぁね」

「おや? もしかして僕との修行に興味があるのかい?」


 シトネの発言に師匠が食いついた。


「え、あ、はい!」

「だったら丁度良い。実は久々に、リンテンスに色々と指導しようと思っていたんだ。どうだい? せっかくだし君も混ざってみるかい?」

「本当ですか!? ぜひお願いします!」


 シトネは即答した。

 師匠はニコッと笑って言う。


「良い返事だ! じゃあさっそく明日から始めよう」

「お願いします!」

「本気か? シトネ」

「もちろんだよ! こんな機会滅多にないもん」

「まぁそうだけど……」


 何となく予想できるが、彼女がその気なら無粋なことは言うまい。

 

 翌日――


「じゃあ始めよう! まずは基礎のおさらいからだ」

「はい!」


 と元気いっぱいに始めたシトネだったが……

 その一時間後。


「はぁ……はぁ……うぅ、フラフラする」

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫……じゃないかも」


 思った通りこうなったか。

 普段から準備運動感覚でやっている魔力コントロールの練習。

 今となっては慣れたけど、当初は俺もシトネみたいに体力切れを起こしていたな。

 一旦休ませてあげたいけど……


「ほーら! いつまで休んでいるんだい? まだまだ序の口だよ」


 スパルタな師匠は許してくれない。

 俺はそれを知っているから、修行に混ざると言い出した時は反応に困った。


「さぁ張り切っていこうじゃないか!」

「ぅ……吐きそう」

「頑張れシトネ」


 彼女もこれで、師匠の怖さを思い知ったことだろう。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載開始!! URLをクリックすると見られます!

『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』

https://ncode.syosetu.com/n9843iq/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

7/25発売です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

7/25発売です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ