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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
プロローグ

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10.弟子の門出

プロローグはこれにて完!

第一部は明日より投稿予定です。

この辺りでひとつ、評価なんてしてくれると……。

「本当に行くんですね」

「そう話しただろう?」

「はい……」


 ドラゴンを討伐した翌日。

 師匠は荷物をまとめて屋敷を出て行くところだ。

 寂しいけど、師匠には師匠の仕事がある。

 それに師匠は、俺のことを信じてくれている。


「師匠……俺、頑張りますから」

「うん。魔術学校の入学試験までにはもどるよ。その時が最終試験だと思って覚悟しておいてね」

「はい!」

「良い返事だ。これを渡しておこう」


 師匠は丸くて赤い宝石のついたイヤリングを一つ渡してきた。


「これは?」

「僕を呼び出す魔道具だよ。本当にピンチのときはこれを使いなさい」

「わかりました」


 イヤリングをぐっと握りしめ、俺は出来るだけ笑顔で堂々とした態度を見せる。


「では行くよ。また会おう」

「はい! 次は師匠を驚かせてみせます!」


 俺がそう言うと、師匠は清々しい笑顔で――


「期待しているよ」


 と言い、ふわっと風に舞う花弁のように消えていった。

 二、三年か。

 これから一人で過ごす時間は長いけど、孤独なんて思わない。

 師匠が帰って来た時、ガッカリさせないように頑張ろう。

 

 この時、俺は今さら気づく。

 いつしか聖域者を目指す動機の一つに、師匠の期待に応えたいという想いが加わっていたことを。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 王都郊外にある平たい木造建築。

 荒っぽい雰囲気の男たちが行き交う道と、看板に大きく書かれたギルド会館と言う文字。

 ここは冒険者たちが集う場所。

 依頼を受けたり、情報交換をするために用意された建物だ。

 

 カランカラン――


 扉を開けるとベルが鳴って、中の人たちの視線が向く。

 受付カウンターへ向かう途中にも、ジロジロみられていた。


「依頼完了しました」

「お疲れ様です! 確認いたしますので、そのままお待ちください」


 受付前で待つ間も、周囲ではヒソヒソ話が聞こえてくる。


「おい見ろよ」

「ん? あの仮面の奴がどうかしたか?」

「あいつだよ! ドラゴンの群れを一人で撃退したっていう冒険者」

「えっ、そうなの? じゃああれが噂の……【七色の雷術師】か」


 二人の男冒険者がごくりと息を飲む。

 他の冒険者たちも、こぞって同じ話題を繰り返していた。


「すげぇよな~ 一人でドラゴンだぜ?」

「ああ。体格じゃ強そうに見えないのにな」

「だよな。というか、あのへんな仮面は何なんだ?」

「さぁ? 男なのにリンリンって名前も変だし、二つ名と全然合ってないし」


 全員が口を揃えて言う。


「「「色々と変だな」」」


 ほら、思った通りじゃないですか師匠!

 貴方が変な偽名と格好にするから、周りからずっと変な目で見られてるんですよ?

 俺は羞恥に耐えられず、依頼の報酬だけ受け取ったら、そそくさとギルド会館を後にした。

 バレないようにひっそり路地に隠れて、仮面とローブを脱ぎ捨てる。


「ふぅ……辛い」


 師匠が去って三年と半年。

 俺も今年で十五になり、世の中で言う成人を迎えた。

 日々の修行も習慣化していて、実践訓練のために冒険者としての活動も続けている。

 それにしても、あれ以来師匠からの連絡は一切ない。

 どこで何をしているのかもわからない。

 もうそろそろ入学試験だというのに、帰ってくる気配もないんだが……


「まさか忘れてないよな」


 屋敷に戻ってから荷物を下ろしてベッドに寝転がる。

 音沙汰なしと言えば、俺の両親もここ数年の間、一度も会いにこなかった。

 俺から会いに行くこともないし、四年以上あっていないな。

 それで寂しいとかは感じない。

 むしろバネにして、この野郎という気持ちで頑張れた。

 師匠ならきっと、不誠実とは言わないはずだ。


「師匠……どっかでサボってたりして」

「失敬だな~ 君は師匠を何だと思っているんだい?」


 不意に声が聞こえた。

 心臓の鼓動が高鳴り、勢いよく振り向く。

 部屋の窓を見ると、そこに彼はいた。

 ずっと会いたいと思っていた人が、ようやく戻ってきてくれた。


「久しぶりだね、リンテンス。背も大きくなって、見違えたんじゃないか?」

「お帰りなさい……師匠!」


 師匠の見た目は変わらない。

 たった三年半じゃ、変化には感じられないのか。

 懐かしさで涙がこみ上げてきそうになる。


「さっそくだけど、君がどれだけ成長したか見せてもらえるかな?」

「いきなりですね」

「はははっ、最初からそのつもりだったからね」


 パチンと師匠は指を鳴らす。

 懐かしき天空の世界へ降り立ち、俺たちは向かい合う。


「最初は三秒だったね」

「はい」

「じゃあ今度は十分くらいもつかな?」

「余裕ですよ」

「言うようになったね~ じゃあ見せてもらおうかな? 成長したのは見た目だけじゃないってこと」


 師匠が杖を、俺は拳を構える。

 そういえばあの時、師匠は杖すら持っていなかったな。

 たぶん四年半前より強いはずだ。

 でも、俺だって以前とは違うぞ。


「行きますよ――師匠!」

「ああ、来なさい」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 激化する戦い。

 崩れ落ち、震えあがり、嘆き憂う。

 いくつもあった浮遊島が綺麗に消え、残された一つに横たわる。


「はぁ……どうですか?」

「うん、いいね」


 寝ているのは俺だが、その隣に師匠もいる。

 お互いボロボロになって、笑いながら師匠が言う。


「今の君なら、僕以外に負けることはありえないかな?」

「当然……ですよ。何たって師匠の弟子なんですから」

「そうか。文句なしの合格だ!」


 苦節四年半。

 師匠の元で修行し、一人になって続けた末。

 俺はようやく、師匠に認められるくらい強くなれたみたいだ。

 涙が出そうになるけど、俺はそれを我慢する。

 だってこれは、ただのスタートラインでしかないのだから。


「一週間後に入学試験だったかな?」

「はい!」

「今の君なら、頑張れという言葉も不要な気もするが……敢えて言わせてもらおう」

 

 師匠が先に起き上がり、俺と向かい合うように立つ。

 伸ばされた手を掴み、俺も立ち上がってから――


「頑張れ!」

「頑張ります!」


 いわゆるプロローグだ。

 ここから始まる物語で、俺は聖域者への階段を駆け上がる。

 全てを失った所から、今度は全てを手に入れるんだ。

【作者からのお願い】

新作投稿しました!


タイトルは――


『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』


ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!

リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n9843iq/

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新連載開始!! URLをクリックすると見られます!

『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』

https://ncode.syosetu.com/n9843iq/

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7/25発売です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

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― 新着の感想 ―
[一言] 》 ここから始まる本編で、俺は聖域者への階段を駆け上がる。 主人公の今後に向けての意気込みの内心吐露に、「本編」と物語外の視点(読者視点)が混じっている。
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