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駅での怖い話

作者: カズキ

 えー、いきなり来たかと思えば怖い話をしろ?

 投稿サイトでそういう作品を募集してるから、参考にする?


 そう言ってもなぁ。

 たしかに自分は視える人間だけど。

 俺の怖いと、世間一般の怖いは違うと思うし。

 はい?

 駅??

 それがテーマ??

 

 まぁ、たしかに学生時代に利用してたよ。

 でも、そんな怖い体験はしてないぞ。

 そうだなぁ、頭のない背広姿の幽霊がうろうろしてたり。

 あとは、そうそうボールみたいに跳ねてた生首は視たかな。

 でも、ほとんどの人は見えてないわけさ。

 だから体当たりかましてんの。

 つーても体が無いわけだからぶつかる、なんてことはないんだけど。


 それはどれも駅の外、バスとかタクシーとかが止まってる駐車場での出来事で……。


 あ、でもこの前、仕事で久々にその駅で電車に乗ることがあったっけ。

 あれも確かに怖い話というか、人によっては体験になるかな。

 ん、どんな幽霊に遭遇したか?


 ありきたりだよ。

 ものすっごくありきたりな、ともすれば創作物でよくある話だよ。


 わかったわかった。

 話すよ。

 その時、俺はホームで電車を待ってたんだ。

 周囲には他にも人がいた。

 みんなそれぞれ、携帯をいじったり、時計を確認したりして時間を潰していた。

 なにしろ町の駅とはいえ、田舎の駅だからねぇ。

 つい先日電子マネー決済ができるようになったばかりだ。

 

 そうそう、うるさいくらい蝉が鳴いていたっけ。

 たしかヒグラシと、アブラゼミだった気がする。

 でもね、ある瞬間にピタっとその鳴き声がやんだんだ。

 しん、と静まり返っていた。

 静かすぎて逆に耳が痛くなるくらいだった。


 変だな、と思って俺は顔を上げた。


 数メートル先には線路がある。

 まだ電車は来ていない。

 だからそこから見えるのは、線路、というよりも地面だけだった。

 地面だけのはずだった。


 でも、一つ、異様なものが視えたんだ。

 

 それは、指だった。

 いや、手だった。

 まずとても細いすらりとした、真っ赤なマニキュアが印象的な指が視えた。

 それが、親指からすらすらって、ホームの淵に並んだんだ。


 そして、今度はゆっくりゆっくり黒い髪の毛、いや、頭が視えた。

 線路に落ちた人が這いだして、ホームに上ってくる。

 そう、そんな場面だ。

 

 まぁ、俺はいろいろ今まで見てきたからさ、視えないふりをしたわけだ。


 こういうのは目があっちゃいけないから。

 でも、運が悪いことにタイミングがずれちゃって。

 合ったんだよ、目が。


 そしたら、それはニタニタ笑った。

 笑いながら、さらに体をホームへと乗り出してきた。

 セーラー服を着てた。

 学生さんだった。


 あー、まずったなぁとか思ってたら、また蝉の声が戻ってきた。

 で、気づくともうそのセーラー服の子は消えてた。


 そんだけって、そう、そんだけだよ。

 な、よくある話だろ?


 後になって知ったんだけど、その子な自殺した子らしい。


 え?

 なんでお前にむかって指をさしてるのかって?

 違う違う。

 話題にしたからかなぁ、来ちゃったんだよ。

 

 うん、お前のすぐ後ろにいるんだ。

 冗談?

 冗談じゃないよ。


 そもそもあのマニキュアは印象が強すぎて、頭に残ってる。

 見間違えじゃないよ。

 だから、その子はいまお前の背後にいるよ。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幽霊でもグチャグチャじゃなくて実害ないならうちにきてくれんかなぁ…
[一言] 非常に残念ながら俺の背後は布団でした
[気になる点] んー、とりあえず、生家まで連れて行ってからご供養か、生前の形態を思い出させる事から始めましょうか
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